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もしもエヴァ初号機がレイもしくはアスカだったら

1 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:03/01/21 00:10 ID:mgt/0BFf
やっぱり口から搭乗するのでしょうか

2 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:03/01/21 00:11 ID:???
煽ってほしがってるのね

3 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:03/01/21 00:14 ID:???
いや実際これはだういう意味なんだらう?

4 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:03/01/21 00:22 ID:mgt/0BFf
言葉どうりですが。
具体的に言うとこんな感じ
ttp://firedragon.homelinux.com/moelabo/img-box/img20030121001912.jpg
http://www24.big.or.jp/~ker/poo/76.jpg

5 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:03/01/21 00:33 ID:???
だからそうだったとしたら何故「口から搭乗する」などと思うのかと小一時間(略

6 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:03/01/21 00:44 ID:???
放置か便乗か?


どうして口から搭乗すると思うんですかぁ?

7 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:03/01/21 00:45 ID:6LjLffnN
エントリープラグ入れる場所が他に無いし

8 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:03/01/21 00:48 ID:???
アナは他にもいろいろあるだろうに。


>>1の狙いはこれかッッッ!

9 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:03/01/21 00:53 ID:???
俺も他のアナがいいな

ところでアスカだったら終始暴走状態というか
パイロットの言うこと全く聞いてくれなさそうなんですが

10 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:03/01/21 01:06 ID:???
「どうしてエントリープラグをこんなところから挿入るのよッ!」
「映像モニターは切ってあるわ」
「そーいう問題じゃないでしょ!」
「スムースイン・タイプにする?それともボラギノール・タイプ?」
「こんな格好、加持さんに見せられない…」
「アスカ、ローション用意しようか?だって、ほら、アスカって…」
「ああああんた、バカァ!?」

11 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:03/01/21 01:18 ID:6LjLffnN
>>10
萌え(;´Д`)ハァハァ

12 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:03/01/21 01:22 ID:???
∀の男根主義に対抗するつもりですか!?

13 :10:03/01/21 01:57 ID:???
人類の希望なのよ…

つーか、続けていいんですか?
イロイロな意味で責任取れないと思うんですが(w




14 :10:03/01/21 03:56 ID:???
「予備が使えなくなった。レイ、出撃だ」
「はい」
「恐れることは無い。新しい世界を知る、ただそれだけだ」
「…はい」
「エントリープラグ接続急いで!」
「準備完了。いつでもどうぞ」
「エントリープラグ、挿入!」
「う…」
「レイ!」
「だいじょ…ああッ!」
「いかん!プラグを抜けッ!」
「あぅ…」
「レイ、安定しました」
「よし、再挿入」
「あ、あッ…あぅ」
「抜け!」
「あはァ…あぁぁ」
「挿入しろ」
「あッあッ痛…うゥうッ」
「碇、真面目にやっているか?」
「…ああ」



15 :10:03/01/21 03:58 ID:???
「第一次接続開始」
「LCL注入」
「うッ、気持ち悪い…」
「それはLOVE CONNECTED LIQUIDよ。レイとあなたの結合を
スムーズにしてくれるわ」
「あの味がわからないとは、子供ですね、やっぱり」
「あらーん、言うじゃない、日向クン?」
「不潔…」
「第二次コンタクト準備よし」
「レイの反応はどう?」
「心拍数・呼吸数とも上昇。アドレナリン分泌しています」
「昇天神経接続、異常なし」
「思考形態は日本語を基礎原則として、ファック」
「初期コンタクト、全て問題なし」
「双方向回線、開きます」
「うわッ、なんだコレ。チソチソがむずむずする…」
「すごい…」
「レイも反応しているわ」
「驚きの連続だわ…イケるかもしれない」
「いッ、ああッうふぅ…はぁはぁ…あッ」
「イケる…」
「プラグ深度、下げますか?」
「かまいませんね」
「もろチンだ。使徒を倒さぬ限り我々に未来は無い」
「本当にこれで、いいんだな」
「悔しいが、な」


16 :10:03/01/21 04:03 ID:???
「シンジ君、まだイっちゃだめよ!」
「イっちゃだめだ!イっちゃだめだ!イっちゃだめだ!」
「大変です!レイの腰が抜けましたッ!」
「67番ルートから射出してしまえ!」
「うわっ、わっ、くっ」
「ふわふわ、してる…落ちる…」
「地上に出ました!…目前に使徒ッ!」
「レイ!戦闘準備!」
「…あと、一分…ダメ…早く、来て…」
「レイ、戦闘不能です!」
「意外な弱点だな。」
「…ああ」
「ゼーレにはどう報告するね?」
「老人達には毒だろう」
「情報操作、か」





17 :10:03/01/21 04:04 ID:???
「綾波ッ!綾波ッ!綾波―ッ!僕を助けてよッ!…うっ」
「これでシンジ君が死亡したら『腹上死』ですかぁ?」
「余裕ね、青葉君」
「不潔…」
「しかし一方的にやられていますね」
「…もう少しでイケそうだったのに…」
「碇、見ろ」
「初めてだったのに…初めてだったのに…初めてだったのにぃ」
「あらー、ちょっちヤバいかなー?」
「まさか、暴走?」
「制御信号、受け付けません!」
「彼女が、性に目覚めたと言うの?」
「なんて事…」
「もうレイを止められないわ」
「怖いな、碇」
「…ああ」

ヴあ゛お゛お゛お゛お゛お゛―――!!!!


18 :10:03/01/21 04:10 ID:???
はぁはぁ…。
やはりセリフだけでは限界があるな。
次の機会にはもう少しなんとかしよう。


19 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:03/01/21 07:04 ID:OyLBHuW6
>>18
俺としては非常に(・∀・) イイ!よ
次の機会も待ってます

20 :阿修羅:03/01/21 07:23 ID:2kgUrPPm
アスカ〜萌え

21 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:03/01/21 12:43 ID:???
パターンとしてはあろひろしの「もるも1/10」みたいな感じか?

22 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:03/01/21 12:59 ID:???
じーさんは用済み>21

23 :○Σ(□`;;|||||。)``:03/01/21 14:18 ID:xDiRKXMS
俺がショゴウキつぶしてみせる

24 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:03/01/21 14:42 ID:???
>>15
たまらん

25 :10:03/01/21 20:19 ID:???
>>11>>20
やはりアスカ好きの方が多いのでしょうか?第8話までお待ちください(予定)
>>19
ありがとうございます。二月半ばまで仕事が忙しいので、しばらくはちまちまとやります。
>>21
はい、そんな感じです。しかし指摘されたので、さらに二つほど隠し味を追加します。
>>24
ありがとうございます。できれば「萌え」「ハァハァ」「ワラタ」など具体的な感想が
いただければありがたいのですが…。
>お怒りの皆様
どーもすみません。

というわけで、即興で書いたものが、意外にもレスを頂きました。
このブタは木に登っちゃいます!ええ、登りますとも。
でも仕事の都合でしばらくは、毎日書き込みとはいきません。
散発的にいきます。







26 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:03/01/21 20:24 ID:???
>>14 の悪乗りゲンドウ最高
TAGRO に似たのがありましたな。

27 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:03/01/21 20:30 ID:???
こんなえろ同人を読んだことがある。

28 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:03/01/22 05:56 ID:???
俺的に良スレに認定

29 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:03/01/22 10:19 ID:???
では10氏が次に来るまでなんか妄想でもしながら保守ですな

30 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:03/01/22 19:06 ID:???
age


31 :山崎渉:03/01/23 04:44 ID:???
(^^)

32 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:03/01/24 00:22 ID:???
ほし

33 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:03/01/25 02:35 ID:???
保守

34 :10:03/01/26 03:35 ID:???
NEON GENESIS ERONGELION (仮題)
第壱話「終末の始まり」
  
西暦2000年9月15日、世界を大天変地異が襲った。
世に言う「セカンドインパクト」である。公式発表によれば「大質量の隕石が南極に
落下したため」地軸が捻じ曲がり、南極大陸の氷塊が溶けて海面の水位が上昇し、
津波や地震異常気象など諸々の災害が発生した。そして社会の混乱が戦火を生み出した。
セカンド・インパクト後の世界情勢は混乱を極め、結果、戦闘行為が行われなかった国
など無かった、とさえ言われた。事実「バレンタイン臨時休戦条約」が締結される
までの期間、交戦状態にあった国家は二十八カ国に及び、内乱・革命・テロ・暴動など
の国家レベルでの治安悪化は日常茶飯事であった。
新秩序を模索する国連の決定は、国家の政治的・外交的手段としての軍事行動を認めな
かった。条約締結後の加盟国の軍事組織は「一定期間、例外なく全て」国連軍所属と
された。夢物語とも思えるこの決定は意外にも受け入れられた。未曾有の大災害に、
人類の種としての生存本能が働いたのかも知れない。
あるいはもっと深刻な理由があったのかも知れないが、とりあえずは復興のために世界
が手を結んだのである。…表面的にはにこやかに。
こうして大規模な戦火の不安が無くなると、生き残った者達は明日を考えるようになる。
各地の被害状況が調査され、国連主導の下、綿密な復興計画が立案・実行された。資金
はもとより、あらゆる物資が集積・分配され、世界規模の計画的な復興に充てられた。
この国連の指導力や処理能力に疑問を感じ、陰謀説や謎の組織の暗躍を噂する声はあった。
しかし、ほとんどの人々はその荒唐無稽さに呆れ(いつの時代もそうだが)笑った。
なにより、生活を安定させる復興計画がありがたかった…。
だが、それは単なる復興計画では無かったし、謎の組織も実在した。


35 :10:03/01/26 03:36 ID:???
日本近海を何かが泳いでいる。
ごく自然に、まっすぐに、引き寄せられるかの様に、日本へ…。

伊豆半島、某海岸線。
海岸沿いの道路を戦車が埋め尽くしている。四菱重工業が誇る国産主力戦車10式重戦車
である。ボディには白い「UN」の文字が見える。これは、国連の決議により、日本の
戦略自衛隊が、日本政府の指揮のもとに、国連軍として行う軍事行動なのである。
「哨戒機より入電。目標は進路変更無く20分後には上陸予想地点に現れる模様!」
着弾観測所となる指揮車の中に緊張が走る
「よし!貴様等、聞いた通りだ!予定通り花火でお迎えだ!」
野太い声の、しかも無骨な命令が、無線を通じて部隊に伝えられる。
「中隊長、これは少し芝居臭いのではありませんか?」
ヘッドフォンを付けた若い通信兵が尋ねる。
「いいんだよ。ここに居る奴の半分以上は戦闘経験が無いんだ。」
「そうだ。十年前なら、国連軍の一員として軍事作戦にも参加したが…」
副官らしき男が言葉を引き継ぐ。
「情勢も安定し始めた昨今では、ハデなドンパチも無い」
「かくて実戦経験者は戦死するか退官。もしくは後方でふんぞり返ってる」
「そこで現場の古参兵が、臭い芝居で新兵をリラックスさせているんだよ」
そんなモンですかね、とつぶやきながら通信兵は疑問を口にした。
「実戦、ですよね?相手は何なのでしょうか?」
「新しい、人類の敵、だとさ」
「怪獣でも来るのですか?大袈裟過ぎる様に思えますが」
「まったくだ。陸海空軍の三分の一を動員とはな!」
「噂では、新型兵器の実戦テストも兼ねるらしい」
「新型兵器とはなんですか?」
「…極秘だ」


36 :10:03/01/26 03:39 ID:???
「本日12時30分、東海地方を中心とした関東・中部全域に特別非常事態宣言が発令
されました。住民の方々は速やかに指定のシェルターへ避難してください。繰り返し…」
人の姿が消えた駅前。少年が公衆電話の前に立っている。
「迎えの人は来ない。連絡も取れない。来るんじゃなかった」
少年はため息をついてバッグから手紙を取り出した。
「来い シンジ」久しぶりの父からの手紙。
「ちわ〜。NERVっス。新しい出会いと素敵な体験が欲しくない?迎えに行くから
待っててネ。チュ」セクシーお姉さんの写真とキスマーク付きの手紙。
自嘲気味に笑うと少年・シンジは手紙をバッグに仕舞った
ふと、何かの気配を感じて顔を上げる。少し離れた坂の上に、人影が見える。
突然、鳥の羽音がした。無意識に視線を動かす。電線で羽を休めていた鳥達が
飛び立ったのだ。シンジは坂の上に視線を戻した。が、そこには誰もいなかった。
「女の子が居た、よな…?」
ズドオオオオオォオオオォン!!!
地面を、大気を振るわせる衝撃音が響く。思わず自販機にしがみ付く。
電線が撓みびゅんびゅんと鳴き、ガラスがビリビリと震える。シャッターがめくれ上がる
少年は音のした方向を振り返って見る。
フイイィィィイィィイン!!
重戦闘機群がホバリングしつつ後退している。何かに攻撃を仕掛けながら。
「ソレ」は山陰から姿を現した。
競泳選手の様な引き締まった身体。ぶっとい太腿、細い胴。逆三角形の上半身。
…頭部が無い!胸部に赤い球があり、その上部に仮面が付いている!二つの窪みと
垂れ下がった嘴…。人型の、ヒトでは無いモノ…。
重戦闘機が次々とミサイルを発射する、が「ソレ」に叩き落とされ、引き裂かれる。
否、被弾しても、何ら損傷を与えてはいないようである…。
「ソレ」の反撃が始まる。掌を戦闘機に向けたかと思うと、肩が盛り上がり、その掌から
桃色の光が槍の様に出て、戦闘機を貫いた。あるいは、跳躍し戦闘機を蹴り飛ばす…。
呆けていたシンジだが、戦闘機が燃えながら落ちて来るのに気が付くと思わず駆け出して
いた。


37 :10:03/01/26 03:40 ID:???
「何だよこれ。何だよこれ!判んないよ!」
シェルターの場所は知らないが、とにかくここから逃げ出したかった。地面が揺れる!
転んでしまったシンジは思わず手で頭を覆い、爆風に備えた。
ギャギャギャ!キキィ!カン高い、何かが軋む音、それをかき消す爆発音。
ズ…ン!ズドオオォォォオオォ……ン!
予期した爆風が来ないのを不思議に思ったシンジは、恐る恐る顔を挙げ、振り向いた。
「君、大丈夫?早くシェルターに避難しなさいよ!」
青い車の窓からサングラスの女性が怒鳴る。コゲ臭い匂いとタイヤの痕。
この女性が車を盾に使ってシンジを爆風から守ってくれたのだろう。
「あの、ありがとう、ございます。助かりました」
立ち上がりながら、おずおずとお礼を言うシンジ。そんなシンジをジッと見つめる女性。
「シンジ君。碇シンジ君?」
「は、はい。あ、あのぉどうして、僕の名前を?」
「手紙を送った葛城ミサトよ。よろしくねン♪」
サングラスを取ってにっこりVサインするミサト。
「あ…」
そこには、あの写真の女性がいた。


38 :10:03/01/26 03:42 ID:???
NERV本部、第一発令所。
「正体不明の移動物体は、依然本所に対し進行中」
「目標を映像で確認。主モニターに回します。」
オペレーターが、やや緊張した声で次々と状況を報告している。
「…十五年振りだね」
発令所の最上部。立ち姿の初老の男性が、モニターを見ながら感慨深げに話す。
「ああ、間違いない。…使徒だ」
指揮卓に座った男性が答える。こちらは、組んだ指が口元を隠すので表情が読めない。
「航空隊の戦力では足止めできません!」
「総力戦だ!厚木と入間も上げろッ!」
「だしおしみは無しだ!何としても目標を潰せ!」
後方で戦況を見つめていた男達―戦略自衛隊の指揮官たちが次々に指示を出す。
しかしモニターからは、怪物…使徒と呼ばれたモノの圧倒的な強さしか伝わらない。
「やはりATフィールドか」
「ああ。使徒に対し、通常兵器では役に立たんよ」
戦略自衛隊の男達とは違い、この二人は冷静である。しかも、「使徒」に対してある程度
の知識を持っているようだ。
トゥルルルルル!
電話が鳴り、戦自の指揮官がIDカードを使って電話を受ける。
「…わかりました。予定通り発動致します」
電話を切ると新たな指示を出した。
「航空部隊を下げろ。NN地雷を使用する!」


39 :10:03/01/26 03:45 ID:???
ミサトの運転する車が、使徒と戦自の戦闘を横目に走っている。
「遅れてごめんねー。交通規制に引っかかったの」
「いえ、いいんです。僕も待ち合わせ場所に行けなかったんですから」
「検問のあの戦自のヤツら!ネルフの葛城一尉だ、つーてもなかなか通行許可を出さない
んだからッ!」
「一尉…。葛城さんって偉い人なんですね…」
「ミサト、で良いわよ、シンジ君」
「え…あ、はい、ミサト、さん」
少しモジモジするシンジ。
「ああの、さっきは本当にありがとうございました」
「お礼は一回でいいわよォ♪」
「でも、車にキズがいっぱい出来ちゃったし、あの、コレすごく高そうだし…」
「ルノー・アルピーヌA310。ふふふ苦労してレストアしてもらい、ローンが後33回…」
ミサトの顔が、だんだんナサケナクなっていく。
「でーもシンちゃんは気にしなくても良いからねー♪」
パッと表情を変えてミサトが笑う。
「…ミサトさんって、いい人ですね」
恥ずかしそうにうつむいて、シンジが言うと
「生ッ意気ィ〜♪」
ミサトは左手でシンジの頬をツネった。



40 :10:03/01/26 03:46 ID:???
何かに気付いたらしく、ミサトが車を急停止させた。ダッシュボードから双眼鏡を取り
出すと戦闘区域を見ている。使徒の周りから急速離脱して行く航空機群。
「ちょっとまさか…NN地雷を使うワケぇ!?」
ボケっとしているシンジ。
「伏せてッ!!」
ミサトがシンジに覆い被さる。足を踏ん張り、シートごとシンジを抱きしめる。自分の
体でシンジを庇うつもりだ。
「しっかりつかまってて!」
言われるままミサトの身体に手を回し、力を込める。ミサトの胸に顔が押し付けられ、
息が苦しい格好だが仕方がない。
強烈な閃光が広がり、次いで爆発音。
ズゴゴゴゴゴォオオオォォォン!!!
バン!!
衝撃波が走っていく。ミサトたちの車も吹き飛ばされ、二転三転している。
ズドドドドドオオォォォォォォォ…
爆発の火球が上空に昇っていく。


41 :10:03/01/26 03:48 ID:???
「やった!!」
戦自指揮官達が立ち上がっている。その表情には、勝利の確信しかない。
「残念ながら、君達の出番は無かったようだな」
一人の指揮官が皮肉たっぷりに言う。が、二人の男は不適な笑みを浮かべている。
「その後の目標は?」
「電波障害のため、確認できません。」
「あの爆発だ、ケリはついている!」
指揮官の一人がいらいらして怒鳴る。
「センサー回復します。…爆心地にエネルギー反応!」
「何ッ!?」
ノイズだらけだった主モニターに、炎の中に立つ使徒の姿が現れる。脇腹の辺りにある
エラのようなものが上下している。間違い無く、生きている…。
「おおお…」
戦自指揮官達は、或る者は落胆して座り込み、或る者は怒りに振るえながら机を叩いた。
主モニターに移る使徒は停止したままである。しかし、身体のあちこちにある損傷が次第
に修復されている。
「予想通り、自己修復機能があるな」
初老の男が感心する。
「そうでなければ、単独兵器として役に立たんよ」
机に座った男が面白くも無い、という風に素っ気無く答える。
突然、使徒がモニターに向かって光を放った。偵察ヘリの存在と意味を察知したのだ!
「ほぅ、たいしたものだ。機能増幅まで可能なのか…」
初老の男の目が、研究者のそれに変わった。探究心を強く刺激されたようだ。
「おまけに知恵もついたようだ」
「再度侵攻は時間の問題だな…」
初老の男はそう言うと、ちら、と戦自の指揮官を見やった。
一人が力なく、電話で報告を始めた…。


42 :10:03/01/26 03:51 ID:???
ミサトとシンジが、横倒しになった車を戻そうとしている。
「さ、もう一度やるわよ!せーのッ!」
「くっ、くくっ」
ドゴン!バン!起こせたものの、廃車寸前である。
「ふぅ、やれやれ、ね。」
しかめっ面をしながら、ミサトは携帯を取り出してどこかに連絡をしている。
「…いろいろあったけど、彼はちゃんと保護しているわ。直通のカートレインを用意しと
いて。二時間以内に戻るわ」
電話を切ると、ミサトは車の修理を始めた。辺りの車から、工具や部品を拝借したのだ。
「良いんですか?こんな事して…」
「作戦上、必要と思われる徴発よ。なにしろ緊急時だから」
「ネルフ、って何なんですか?」
なんだか不機嫌そうなシンジ。
「特務機関ネルフ、国連直属の非公開組織よ」
「…父の居る所ですね」
「お父さんの仕事、どんなものか知ってる?」
「…人類を守る、大切な仕事、だと聞いています」
「そうよぉ。…そうだ!これ読んで時間潰してて」
修理の手を止めて、後部座席からパンフレットを取り出し、シンジに差し出す。
ようこそ ネルフ江
そう表書きされたパンフにはしかし「極秘」のスタンプが押してある。
つまらなさそうにページをめくるシンジ。
予見される人類の危機  一縷の光明  人類の可能性と限界  進化と退化…
ため息をついて視線をミサトに向ける。片膝をついて修理に熱中しているその服装は
タイトミニなのだった。女性らしい柔らかな曲線が惜しげもなく晒されている。
白く肉付きの良い太腿も…下着はピンクですか!


43 :10:03/01/26 03:52 ID:???
一瞬シンジはパンフで顔を隠したが、またそーっと覗いてみる。
今度は腰をかがめてエンジンを点検している。ごそごそと動く度に臀部の肉がぷりぷりと
震える。おまけに下着のラインがはっきりと見えるのだ。
腰を伸ばして、暑ィと呟いたミサトはファスナーを胸元まで下ろし、また地面にしゃがん
でバッテリーとコードをいじくっている。今度は、胸の双球が揺れているのが見える。
思わずシンジはしゃがみ込んだ。少し横を向くと、横目でちらちらとミサトの方を見る。
そんなことに気付かないミサトは、またエンジンの修理を始める。
黒いピンヒールから伸びる、優雅な曲線を描く、白い脚…。
シンジはチソチソの位置が気になっていた。早く真直ぐ上に向けねば、痛くて仕方が無い。
鑑賞はそれからゆっくりで良いのだ。しかし視線を離せない…。
哀しいな、男の子は。この時、シンジがきちんとパンフを読んでいれば、彼には別の人生
があったのだが、止むを得ない話である…。
「よッし、OK。シンジ君、行くわよ」
修理を終えたミサトが声を掛ける。
「は、はいッ」
立ち上がる時にシンジは無理やり位置を直してみた。陰毛の何本かが一緒に抜けたが、
何とかなった。車の中では、鎮まるまでパンフで隠せばいい…。


44 :10:03/01/26 03:54 ID:???
「はッ。ではその様に致します」
電話を置くと、戦自の指揮官が机の男に向かって無表情に言う。
「今から本作戦の指揮権は君に移った。お手並みを見せてもらおう」
「了解しました」
机から立ち上がりながら男が答える。
「碇ゲンドウ君。我々の所有兵器では目的に対し有効な手段が無い事は認めよう。だが
君なら勝てるのかね!?あんな、あんなふざけたシロモノで!!」
立ち上がった男・ゲンドウが、右手の指先で眼鏡を押し上げながら、鷹揚に答える。
「その為のネルフです」
ゲンドウの横にいた初老の男性が、半身になって戦自の面々を見る。オペレーター達も
振り返っている。どの顔にも不適な笑みが浮かんでいる。
「…期待しているよ」
皮肉と社交辞令を発して、机ごとエレベーターで降りていく指揮官達。
「国連軍もお手上げか。どうするつもりだ?碇」
「初号機を起動させる」
「…パイロットがいないぞ?まさか…」
「問題無い。予備が届く」
「…そうか、あの子か」


45 :10:03/01/26 03:57 ID:???
ガタガタと軋みながら走るミサトの車。
「シンジ君、パンフ、あまり読まないわね?」
チソチソを隠している、とは言えない。仕方なく話題をそらす。
「ミサトさん、胸、見えそうですよ…」
修理の時に下げたファスナーを戻していないのだ。
「ごっめーん。眼の毒だったぁ?でも運転中なのよねー。シンジ君上げてくださる?」
ミサトが悪戯っぽく笑う。たしかにこの状況では、片手運転は危険だ。
何が起こるかも解らないのだ。それに片手では上手くファスナーを挙げられない…。
シンジは体を捻ると、バランスを崩さない様にしながら右手を伸ばした。
しかし位置が悪い。
今度は左手でファスナーを持ち、右手で服の下の方を掴んだ。斜め上から胸の谷間を
覗き込むような体勢だ。カッとなり、力任せにファスナーを持ち上げようとしたその時
「優しくしてね♪壊れちゃうわぁん」
「…ミサトさんって、意外に子供っぽいんですね」
ファスナーを上げながらシンジがやりかえす。
「お姉さんの胸を見ただけでそんなになるシンジ君は、お子ちゃまでちゅー♪」
ミサトがシンジの股間を見ながらニヤニヤしながら言った。
まだ元気にしていたようだ。
「…」
「あら、怒った?ごめんごめん、男の子だもんねぇ」
ミサトは笑っていたが、シンジが黙ったままなので口を閉ざした。
しばしの沈黙。
シンジの脳裏に、父の顔が浮かんでくる。
「…これから父の所へ行くんですか?」
「そうね。そうなるわね」
「…父さんの仕事、僕も何かするんですか?」
「……」
ミサトが口篭っている。かなりややこしい話に違いなかった。


46 :10:03/01/26 03:59 ID:???
「そうですよね。用も無いのに、父が僕に手紙をくれる筈、無いですよね」
「そっかぁ、苦手なのね、お父さんが…」
黙ったままのシンジ。ミサトが伏目がちに、つぶやく。
「…あたしと同じね」
え、とシンジが反応する。
「ミサトさんも父さんが苦手なんですか?」
ミサトは、あぁもうこの子は!みたいな表情をしたが、すかさず
「そぉよォ!ヘマした時なんかは、びくびくして会いに行くのよ!」
「そうなんですか。そうですよね、おっかないですよね」
何故か、ホッとしたような表情のシンジを横目で見ながら、ミサトは彼の任務について
思いを巡らせた。…心配になって来たのである。
「さ、ここから地下に潜るわよ」
突然シャッターが開き、巨大な通路が見えた。
「この先に、車ごと本部に行けるカートレインがあるの」
その言葉通り、しばらく進むとベルトコンベアの様な物が見えた。
「シンジ君、パンフにきちんと目を通しておいてね。質問には、可能な限り答えるわ」
ミサトが、前を向いたままシンジに言う。声の調子が真面目である。
シンジにもそれが判るのか、慌ててパンフを読み出した。
地底に本部のある組織、ネルフ。
このような巨大な施設が、いつ建設されたのか?その資金は?目的は?使徒とは?
シンジはまだ、何も知らない。
「うわぁ…すごい」
ふと、シンジが回りに眼をやると、そこは地底空間であった。
天井(!)からビルが生えている。眼下には森や湖が広がっている。その中央に、光輝く
ピラミッドがあった。壁面に、葉っぱが半分切り取られた様なマークがある。
「ホントにジオフロントだ…」
「そう、これがあたし達の秘密基地、ネルフ本部。世界再建の要、人類の砦となる所よ」
カートレインは、ゆっくりとネルフ本部に近付いて行く。


47 :10:03/01/26 04:01 ID:???
パイプコードだらけの、室内プールのような場所。
「技術局一課、E計画担当の赤木リツコ博士、赤木リツコ博士。至急、作戦部第一課
葛城ミサト一尉までご連絡ください。繰り返し…」
ドライスーツを脱ぎながら、金髪の女性が呟く。
「呆れた、また迷ったのね。この忙しい時に」
水着の上から、タンクトップとタイトミニを身に着けると、白衣を羽織る。
素足にはピンヒールを履く。軽くブラッシングしてからコロンを胸元と首筋、両手首に
つけ、鏡を一瞥した後、カツカツという小気味良い音と共に、颯爽と歩いて行く。

「冬月、後を頼む。ケージに行って来る」
ゲンドウがエレベーターから声を掛ける。
「ああ」
そう答えて初老の男は複雑な表情を見せた。
「三年ぶりの対面、か…」
「副指令、目標が再び移動を始めました」
そうか、と答えるとマイクを持ち、静かな声でしゃべりだした。
「副指令の冬月コウゾウだ。先程、本作戦に関する指揮権が、正式に我々ネルフに委譲
された。初陣ではあるが背水の陣でもある。総員、奮闘努力して欲しい」
やや古臭い物言いに苦笑いをすると、三人のオペレーターに指示を出す。
「マヤ君、赤木博士に準備を急がせてくれ。終わったら第一種戦闘配置の発令だ」
はい、と快活な声で、右手の女性が内線電話に手を伸ばす。
「第一発令所の伊吹マヤ二尉です。赤木博士をお願いします」
「日向君、ウチの防衛網の状況を調べてくれ」
判りました、と中央の黒ブチ眼鏡の男性が返事をする。
「第一発令所の日向マコトです。各防衛拠点の稼動状況を報告してもらいたい」
「青葉君、戦自に連絡して使徒の情報を集めてくれ」
左手の長髪の男性が、背筋をピン!と伸ばして大きな声で返事をする。
「ネルフ中央作戦司令室の青葉シゲル二尉です。現在戦自が所有する、目標に関する
情報を全て、可及的速やかに提供してください…」
三人の仕事を見ながら、コウゾウは考える。
ついに始まったのだ…。あの時から思い描いた結末は、本当に来るのだろうか?


48 :10:03/01/26 04:02 ID:???
エレベーターでミサト達とリツコはバッタリ出会った。
「ごめん、ちょっち遅れちゃった」
「…時間が無いわ、急ぎましょう」
リツコがシンジを見つめる
「例の男の子ね、よろしく」
簡単に挨拶を済ませると、リツコがミサトに耳打ちする。
「任務の説明は済ませた?」
「なかなかパンフを読まないのよ。ほら、今も」
ミサトがアゴでシンジを指す。周りをきょろきょろ見回しているシンジ。
「マルドゥック機関に選出されたパイロット候補者、アテにしたいのだけれど…」
「アンタが上手く説明してよ。あたしは苦手だわ」
顔の前で手を合わせてオーバーに懇願するミサト。
突然、非常サイレンが鳴り響いた。
「使徒、本所に対し接近中。総員、第一種戦闘配置。繰り返します…」
「…ですって」
「一大事ね」
まるで他人事みたいな表情の二人である。
「…仕方ないわね。ケージに行きながら説明するわ。急ぎましょう」
「リツコ、サンキュ♪」
三人は歩き出した。


49 :10:03/01/26 04:05 ID:???
セカンドインパクトは確かに大惨事だったの。
でも、数年後からの人口調査などの方が余程ショックだったわ。
様々な原因によると思われる出生率の低下、乳幼児の死亡率の高さ。
確かに戦火や疫病・汚染物質などの影響は存在したわ。
でも、もしかしたら、人間の、種としての生命力にカゲリが出てきたのでは無いか?
と指摘する学者がいたの。
生命の進化は、環境に順応して生き延びようとする力なのね。
人間は知恵と技術力で生活環境を快適にしてきたわ。
自分の身体を変えること無く…。
だからその生命力が弱まっているのではないのか、とね…。
ちょうど同じ頃、この地球上に、次代の盟主たる生命体が存在している、と言う
学説が発表されたの。当然学会はそれを否定したわ。
だってまるっきりマンガですもの。
でも、そう思わない人達がいて、対策を研究し続けたのよ。
その結果がネルフであり、地上で暴れている使徒であり、これよ!

リツコの説明を聞きながら何時の間にか倉庫みたいな場所に来ていた。
巨大な倉庫、いや格納庫、か?…何の?
巨大すぎて解らなかったが、目の前には人間に似た、否、人間と同じ頭部があった!
リツコが先導して正面に回る。
蒼い頭髪、細いうなじ、すーっと通った鼻筋、柔らかそうな頬、意思の強そうな唇
長いまつ毛、紅い瞳!
リツコが宣言するように、誇らしげに言う。
「人の造り出した、究極の煩悩人型決戦兵器」
「ぼんのうじんがたけっせんへいき?」
慌ててページをめくるシンジに、ミサトが言う。
「載せてないわ、極秘事項だもん」


50 :10:03/01/26 04:08 ID:???
「人造人間エヴァンゲリオン。その初号機、綾波レイよ。通称、エロンゲリオン」
名前のある秘密兵器…。リツコは無感動にしゃべり続ける。
「建造は極秘裏で行われた、我々人類最後の切り札よ」
「これも…父の仕事ですか?」
「そうだ」
頭上から声がする。この声は…。
シンジは視線を巡らす。初号機―レイの頭上に窓があり、そこに立つ人物がいる。
「久しぶりだな」
「父さん…」
複雑な表情のシンジ。言いたい事、聞きたい事がたくさんある。逃げ出したい気持ちも…。
「…出撃」
それらを全て拒絶するような、選択肢の無い、『命令』
「出撃、ですか!?レイを?彼で!?」
驚くミサト。
「…他に道は無いのよ」
無表情で言い放つ、リツコ。
「マジなの?」
ミサトに頷いてから、シンジに話しかける。
「碇シンジ君」
「は、はい」
「あなたが乗るのよ」
「…」
「テストプラグでさえ七ヶ月もかかったのよ。いきなり、知らない男の子を受け入れる
ことなんて、無理だわ!」
ミサトが強く反対する。
「座っているだけでいいの。それ以上は望みません。今は使徒迎撃が最優先事項です」
先程とは違った、事務的な話し方。リツコの本気モードであることを理解するミサト。
「その為には誰であれ、エヴァと僅かでもシンクロ可能と思われる人間を乗せるしか
方法は無いわ。…解っているはずよ、葛城一尉」
ダメ押しの一言である。


51 :10:03/01/26 04:09 ID:???
「そうね」
唇を噛んで、自分の感情を押さえ込むミサト。
「…父さん、何故、僕を呼んだの?」
シンジが押し殺した声で聞く。
「お前の考えている通りだ」
「じゃあ、僕に、これに乗ってさっきのと戦えって言うの!?」
「そうだ」
「イヤだよッ!そんなの!何を…今更、何だよぉッ!」
今にも泣きそうになるシンジ。
「父さんは、父さんは、僕が要らないんじゃなかったのッ!」
「必要だから呼んだ、それだけだ」
「何故、僕なの…」
下を向いてしまっているシンジ。
「他の人間には無理だからな」
「そんなの無理だよ、見た事も聞いた事も無いのに…」
「説明を受けろ」
「無理だよ…無理だよ!命令があれば何でもするなんて、おかしいよ!」
「命令があれば そうするわ」
格納庫に、今まで聞いた事の無い声が響く。
「レイ…」
「信じられない…停止信号プラグが入っているのよ」
ミサトとリツコが驚く。ゲンドウだけが、にやりと笑っている。
「乗るなら早くしろ。でなければ…帰れ!俺が乗る」
げっ!となるミサト。目がすーっと細くなるリツコ。


52 :10:03/01/26 04:11 ID:???
「シンジ君、よく聞きなさい」
半べそのシンジにリツコが説明する。今度は情感たっぷりだ。
「レイは自分で考えて自分で動けるの。操縦というのは補助的なものよ。
エネルギーは電気と普通の食事。あなたの役目は、レイに意欲や情熱を与え続けること。
それは人間に必要なものなの。どんなに才能が有っても、努力しなければ開花しないわ。
それを、あなたが彼女に与えてあげるのよ!」
一気にしゃべるとふーっと息をつく。
そして今度は上体をかがめ、両手でシンジの頬を優しく包む。
顔をすっと近付けて、瞳を覗き込みながら、ゆっくりと語りかける。
「人間には本能があるわ。睡眠欲・食欲・性欲がその典型ね。睡眠を取らないと人間は
生きていけないの。食欲も大切だわ。でも死を賭して絶食する人達がいるわね?性欲は
種の保存の為に必要なはずだけれど、意志やモラルである程度コントロールできるの。
でなければ、人間も動物と一緒だわ。強い本能と、それを制御する力。
快楽を力に変え、意思の力で制御するの。それが、エヴァの秘密なのよ」
リツコの、口紅をひいた赤い唇を、桃色の舌がぬらり、と這う。口を湿らせているのだ。
シンジはどきどきしていた。
鼻腔をくすぐるいい匂い。
左目の下の泣き黒子。
理性的で、なおかつ情熱的な瞳。
うっすらと紅潮した頬。
暖かく柔らかい掌。
顔をくすぐる吐息。
目の前でくねくねと動く、赤い唇。
ちろちろと見え隠れする桃色の舌。
きらきら揺れるイヤリング。
タンクトップから見える胸の谷間。
どこに視線を動かしても、どきどきするもので一杯だった。
眼を閉じても、その他の感覚が刺激を広い集めて来る。


53 :10:03/01/26 04:12 ID:???
頭がぼーっとして来た。チソチソがゆっくりとその鎌首を持ち上げて来ている。
股間が熱い。車中での、ミサトの胸の柔らかさと温かさが脳裏をかすめる。
まずリツコが気付いた。次にミサト。遠巻きに見ていた作業員も笑いをこらえている。
リツコは勝負をかけた。
「出生率の低下は、ひょっとすると、その性欲の減退によるものかも知れないの。
そうなれば、人口は減少する一方ね。そこに人類に取って代わる生命体が現れたら…。
人類は間違いなく滅亡するわ。」
うんうん、と頷くシンジ。
「それを阻止するためには、無尽蔵の性欲を持ち、かつ、情感豊かな人が必要なの。
例えば、一日十回以上、自慰行為が出来るとか…」
「自慰行為って?」
「オナーニよオナーニ」
ミサトが指を筒状にして上下させる。
シンジの顔が真っ赤になる。…やった事があるな?
リツコが、シンジの顔を舐める様に話す。
「レイはね、体が大きいだけで、構造は人間なの。あなたはエントリーカプセル
という筒状の操縦席に乗り、彼女のここに挿入されるの。眼前に広がる女体の神秘!」
リツコはミサトのXXXを指し示して説明する。
「そしてレイと一心同体になり、レイを気持ちよくしてあげるの。そうすれば
レイもあなたを気持ちよくしてくれるわ」
リツコの様子が尋常ではない。怨念の様なものを感じる。
シンジに至ってはもはや暴走寸前である。
「ややややります、いえ、ぜひやらせてください!」
リツコ、執念の勝利である。
この時、シンジがもう少し冷静であったなら、彼には別の人生があったのだが
もはや後の祭り。
さっそく搭乗準備が始まり、誰もいなくなった。


54 :10:03/01/26 04:15 ID:???
「予備が使えなくなった。レイ、出撃だ」
プラグスーツ姿のゲンドウが現れた。いつの間に用意していたのだろう?
「はい」
「恐れることは無い。新しい世界を知る、ただそれだけだ」
「…はい、でも」
無線でレイと話していたゲンドウにリツコが報告する。
「シンジ君が出撃に同意しました」
「何ッ!…まあいい、出撃を急がせろ。私は発令所に戻る」
格納庫を後にするゲンドウを見ながら、リツコが、にっ、と笑った。

格納庫が俄然あわただしくなった。
パイロットが決まった矢先に、使徒が新第三東京市に攻撃を開始したのである。
通常兵器による迎撃が行われているが、時間稼ぎにしかならない。
シンジは搭乗準備に追われていた。アナウンスが起動準備の手順を読み上げる。
「冷却完了」
「右腕、再固定完了」
「ケージ内、全てドッキング位置」
「停止信号プラグ、排出完了」
「エントリープラグ、挿入」
「プラグ固定完了」
「第一次接続開始」
「LCL注入」
「うッ、気持ち悪い…」
「それはLOVE CONNECTED LIQUIDよ。レイとあなたの結合をスムーズにして
くれるわ。肺に入れば直接ガス交換をするから呼吸も大丈夫。その他生命維持に必要よ」
「あの味がわからないとは、子供ですね、やっぱり」
「あらーん、言うじゃない、日向クン?」
ミサトがからかう。
「不潔…」
マヤは潔癖症なのか、下ネタには冷たい…


55 :10:03/01/26 04:17 ID:???
「主電源接続」
「全回路動力伝達」
「第二次コンタクト準備よし」
「レイの反応はどう?」
「心拍数・呼吸数とも上昇。アドレナリン分泌しています」
「昇10神経接続、異常なし」
「思考形態は日本語を基礎原則として、ファック」
「初期コンタクト、全て問題なし」
「双方向回線、開きます」
「うわッ、なんだコレ。チソチソがむずむずする…」
「あぅ…」
レイの表情が微妙に変化した。
「レイも反応しているわ」
「シンクロ率41.3%」
「…すごいわね」
「ハーモニクス、全て正常値。暴走ありません」
「驚きの連続だわ…イケるかもしれない」
「いッ、ああッ…はぁはぁ…あッ」
レイが苦しそうな声を出す。拘束具のせいで身もだえさえ出来ない。
ただ、身体を小刻みに震わせるだけだ。
「イケる…」
「プラグ深度、上げますか?」
プラグ深度。この深度が深い=レイとのシンクロが強いことを意味し、お互いの情報の
やりとりが活発になる。もしレイの自我がパイロットより強くければ、パイロットは
その自我を侵食される…。ちなみに、プラグが挿入される場所がナニなので、上に行く
程、深度は深くなる。
「実験も兼ねられる。やれ」


56 :10:03/01/26 04:19 ID:???
「発進準備」
「第一ロックボルト、はずせ」
「解除確認」
「アンビリカル・ブリッジ移動開始」
「第二ロックボルト、はずせ」
「第一拘束具、除去」
「同じく、第二拘束具を除去」
「1番から15番までの安全装置を解除」
「内部電源、充電完了」
「外部電源用コンセント、異常無し」
「了解。エヴァ初号機、射出口へ」
「進路クリア。オールグリーン」
「発進準備完了」
「了解」
ミサトが振り返ってゲンドウに確認する。
「かまいませんね?」
「もろチンだ。使徒を倒さぬ限り我々に未来は無い」
「本当にこれで、いいんだな」
コウゾウがゲンドウの耳元で囁く。
「悔しいが、な」
「エヴァ初号機、発進!」
ズゴオオオオォォオォォォオ!!
通路を進み、いよいよ地上へのリフトに着いた。
ズウン
上昇を開始するエヴァ。
グオオオオオオオオオオ!
ガァン!
地上発進口にエヴァが到着した。いきおいよく開く扉。
眼前に使徒がいる。睨み合う、レイと使徒。不安げな顔のシンジがモニターに映る。
「死なないでよ、シンジ君」
ミサトが心配そうに呟いた。


57 :10:03/01/26 04:21 ID:???
時に、西暦2015年
世界は静かに破滅の時を待っていた。
愛は地球を救うのか?
アイは恥丘を突くのか?
アイハ シキュウヲ ミタスノカ?

次回予想
レイ達は使徒に勝つ。だがそれは全ての始まりに過ぎなかった。
父親から逃げるシンジ。
ミサトの豊満な肉体は、自分が彼を救おうと決心させる。
次回「見知らぬ、テンション」
この次も、サービス サービスゥ♪


58 :10:03/01/26 04:36 ID:???
>>26>>28>>29
ありがとうございます。今回は少し趣向を変えて見ました。
いかがでしょうか?
>>27
修行不足で申し訳ありません。あまりハデなエロにはなりませんでした。
>保守していただいた皆様
ありがとうございます。
>お怒りの皆様
どーもすみません。でも、やめる気も無いのです。勘弁してください。

さて、週末にデスクワークをしようと仕事を持ちかえりましたが、現実逃避のため
遅れまくりです。来週からはまじめに仕事だ(w

59 :10:03/01/26 04:52 ID:???
うぉぉぉ!しまった。五時に誤字を発見してしまった。
用語の間違いもある。まだまだ修行が足りんのぅ…。


60 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:03/01/27 01:25 ID:???
新作キタ━━(゚∀゚)━━!
俺も挿入されてー

61 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:03/01/27 02:16 ID:???
>>60
される方かい!

62 :10:03/02/01 03:20 ID:???
おお…放置プレイ…。
予定通り、仕事多忙にてしばらく書けません。
ではまた…。

63 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:03/02/01 10:09 ID:???
続きに期待大(w

64 :ナナシサン:03/02/10 23:06 ID:SE8F9tYX
http://page4.auctions.yahoo.co.jp/jp/auction/d27281212

65 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:03/02/11 06:37 ID:4DlMybCQ
>>64
(・∀・) イイ!
こういうのもとめてた
ハゲシクチンコタッタ(;´Д`)ハァハァ

66 :10:03/02/13 01:13 ID:???
先日、古本屋を物色していたら、ふゅーじょんぷろだくとの同人誌アンソロジー
「失楽園・1」を発見・購入しました。
>>26が指摘していた、TAGRO良明の作品「火傷しそぉ君の冷たさに」がありました。
…ネタ、少しカプっておりまして、戦闘シーンを書き直し中です。
日曜日辺りまでにはなんとかしたいと考えております。

>>64、良いですなぁ。

…ここ、定期的に覗いている人っているのだろうか?

67 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:03/02/13 05:47 ID:???
俺は三日おきぐらいにきてるよ

68 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:03/02/13 15:04 ID:???
実は、日参している(w

69 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:03/02/13 23:42 ID:???
漏れも見るだけなら毎日かな。

70 :26:03/02/15 00:05 ID:???
>>66
TAGROだとゲンドウが3rd childrenになるやつで爆笑しましたです。
「葛城君、いま風呂にだな」
機会があればお試しを。

71 :10:03/02/15 03:54 ID:???
第弐話「見知らぬ、テンション」

地上発進口のシャッターが開き、使徒と睨み合う格好になったレイとシンジ。
シンジにはどうして良いのか解らない。しかし、使徒もレイを観察している様だ。
「相手も驚いているのね。シンジ君、行くわよ!」
「は、はひ…」
「最終安全装置解除!」
ガシャンという音と共にレイの肩部拘束具が外れる。
「エヴァンゲリオン初号機、リフト・オフ!」
後部のガントリーが離れ、エヴァの両足に荷重がかかる。ふらつくレイ。
「シンジ君、今は歩く事だけを考えて」
リツコが、ミサトの横からシンジに指示する。
えっ?という顔をするシンジ、思わず呟く。
「勝手に動くって…、座ってればいいって言った…」
「何事にも裏と表はあるわよ。レイが、まだ身体に馴染んでいないみたいなの。
データ収集も兼ねるから、お願い」
「歩く…歩くって、どうやる…右手を振って、いやまず足…」
人間は、無意識に歩行している。いきなりどう動かすか、などと考えても戸惑うだけだ。
シンジの混乱の様子がそのままレイに伝わり、がくがくと身体を揺する。
かろうじて右足を持ち上げ、前に出す。
ズ…ン、という音と共に踵がアスファルトの地面にめり込んでいく。今度は左足。


72 :10:03/02/15 03:55 ID:???
「歩いた…」
第一発令所では、どよめきと興奮が起こっていた。
歓喜と安堵が、それぞれの顔に見て取れる。
「歩く…」
シンジは、引きつった顔でただひたすらレイを歩かせている。
「ガニ股、イヤ…」
レイの声が伝わってくる。慌てて足をすぼめようとするシンジだが、急激な動作はバラン
スを崩し易い。レイの身体が、ゆっくりと傾いて行く。
「えっ?あれっ?…手を、摑まる物は…?」
レイの右手が、虚しく空中を摑み、上体が捻れたまま、顔面から倒れて行った。
ズズ…ゥウウ…ン
揺れるビル街、舞い上がる粉塵。
無理も無い。体重こそほんの○十万kgだが、レイの身体はウェットスーツの様な物の
上に特殊装甲板や防具などを装着している。裸では「わいせつ物チンレツ罪」だ…いや
そんな問題ではないなぁ。
「痛ッ!」
思わず顔を抑えるシンジ。


73 :10:03/02/15 03:58 ID:???
「シンジ君、しっかりして!起き上がるのよ、早く!使徒が動き出したわ!!」
無意識に上体を上げようとするシンジ。レイの頭が持ち上がり、モニターの景色が
変わる。使徒の手が画面一杯に映し出されている。
ガン、という衝撃と同時に、シンジの頭に激痛が走る。使徒がレイの頭部を鷲摑みに
したまま、持ち上げようといる!
「うわあああぁぁあぁ!」
右手にも激痛が走る。まるで万力で締め付けられているようだ。
「シンジ君、落ち着いて!あなたの腕じゃないのよッ!」
プラグ内にミサトの声が響くが、シンジには聞こえていない。完全なパニック状態である。
「エヴァの防御システムは?」
「システム、作動しません!」
「損傷度、0.8, 1.7, 4.6 ,10.6,38.2…」
「だめ、なのかしら…」
リツコの関心は、エヴァ優先のようだ。
ゴリ、ゴリ、グキン!
乾いた音が聞こえた。
「右腕損傷!回線切断!」
「あああぁあぁぁぁああぅあぉおおお!」
シンジの叫び声が、スピーカーを介して人々の耳を叩く。
ミサトはちら、とゲンドウを見た。が、彼は無表情のまま、モニターを見据えている。


74 :10:03/02/15 03:59 ID:???
今度は使徒がレイをビルに押し付けている。右手の肘が光りだした。
バシュコン!バシュコン!バシュコン!
光の槍がレイの頭部―兜の様な防具で守られているーを襲う。
「強化ガラス・特殊装甲板に亀裂発生!」
バシュコン!バシュコン!バシュコン!
「シンジ君逃げて!」
ミサトの叫び声は、シンジに聞こえているのか?ひきつった悲鳴だけが聞こえている。
ズクッ!ヴシュッ!
鈍い、肉の押し潰される音がした。
手応えを感じたのか、使徒の動きが止まる。ゆっくりと手を離し、様子を伺っている。
「頭部損傷、損害不明!」
「制御神経が次々と断線して行きます!」
「パイロット、エヴァ、共に反応ありません!」
非常警報が鳴り響き、各モニターが赤く染まっていく。
「シンジ君…」
ミサトが心配そうに呟く。いや、言葉には出さないが、皆が絶望感を共有していた。
ゲンドウとコウゾウを除いて…。


75 :10:03/02/15 04:00 ID:???
十畳程の、明るいががらんとした部屋。ベッドで寝ているシンジ。
急に目を開き、がばっと起き上がる。ゆっくりと周りを見渡し、またベッドに横たわる。
身体はじっとりと寝汗で湿っている。額の汗を、右手の甲で拭きながら天井を見る。
「知らない天井だ…」
右手を見ている。右目で見ている。時折、痙攣した様に身体が震える。
脳裏をかすめる、かすかな、記憶?

暗い室内。六つの光るテーブル。男達が何事かを協議している。
六人の男達の中にはゲンドウもいるが、ゲンドウ以外は白人である。
「使徒襲来か。あまりに唐突だな」
「15年前と同じだよ。災いは何の前触れもなく訪れるものだ」
「幸いともいえる。我々の先行投資が無駄にならなかった点ではな」
「そいつはまだ解らんよ。役に立たねば無駄と同じだ」
「左様。いまや周知の事実となってしまった使徒の処置、情報操作。ネルフの運用は
全て、適切かつ迅速に処理して貰わなければ困るよ」
彼らの言葉には、何処か、何故か、棘があった。
「その件に関しては既に対処済みです、ご安心を」
「しかし、碇君。ネルフとエヴァ、もう少し上手く使えんのかね」
「君たちが初陣で壊した初号機の修理代、国がひとつ傾くよ」
「それに君の仕事はそれだけでは無い」
男がレポートをゲンドウの前に投げる。『極秘 人類補完計画』と記載されている。
「これこそが君の急務だぞ?」
「左様。その計画こそが、この絶望的状況下における唯一の希望なのだ。…我々の、ね」
「いずれにせよ、使徒再来におけるスケジュールの遅延は認められん。
予算については一考しよう」
「では、後は委員会の仕事だ。碇君、ご苦労だったな」
そう言うと、次々とテーブルの灯りが消え、ゲンドウだけが取り残された。


76 :10:03/02/15 04:01 ID:???
市街地に開いたクレーターの中心に、テントが張られ、周りに何台もの特殊車両が
止まっている。クレーターの周囲には、「危険、立ち入り禁止区域」という看板や非常灯
と、工事用の重機などが取り囲んでいる。上空では警備用のヘリが、マスコミのヘリを
さえぎる様に旋回している。
「こーのクソ暑い時に、こーんなモノ着て作業とは、哀しくなるわ」
ミサトが防護服を脱ぎながらボヤく。タンクトップとパンツ(タンガ、ってヤツ?)姿になり
テレビをつける。各局共、昨日の「事件」の政府発表を中継している。
「発表はシナリオB−22か…。またも事実は闇の中、ね」
「仕方無いでしょ?…広報部は喜んでいたわよ、やっと仕事が出来た、って。
…どうでもいいけれど、あなたノーブラ?作業員がちらちら見てるわよ」
「そーいうアンタはどうなのよ。白衣の下は黒のノースリーブ・胸元にヘンな穴開き
&ヘソ出し。タイトミニは左太腿前にスリット20p。黒の網タイツとピンヒール。
マニアの視線でヤケドするわよ」
「…相手の服装についてとやかく言うのはやめましょう。誰にも迷惑はかけていないし」
「逆に悦ばせているわ!」
そこに、ネルフの制服をきちんと着たマヤが報告に来る。
「爆心地における汚染の心配はありません。使徒のサンプルは、エヴァに付着していた物
以外はまだ何も無いそうです」
「ありがとう、マヤ。ここで清らかなのは、あなただけかもね」
「?」


77 :10:03/02/15 04:03 ID:???
データ収集を終え、トレーラーでネルフに帰投中のミサトたち。クーラーが効いている
はずだが、格好はそのままだ。
「やっぱクーラーは人類の至宝!まさに科学の勝利ね」
「さっさと服を着たら?汗は引いたでしょう?」
電話をかけながらリツコが嗜める。
「ひひひ。運転手さんにサービス♪」
シートに胡坐をかいて、ミサトが囁く。好みのタイプらしい。
「シンジ君が目覚めたそうよ」
「で、容態はどうなの?」
「外傷は無し。少し記憶に混乱が見られるそうだけど」
「まさか、精神汚染じゃ…」
「その心配は無いそうよ」
「そう…そうよね。いっきなりアレだったものね」
「無理も無いわ、脳神経にかなりの負担がかかったもの」
「腎臓、の間違いじゃないの?」
トレーラーが停車する。ミサトが、シンジの身柄を引き取りに行くのだ。
クレーンで吊り上げられ、移動して行く巨大な銃器。
ミサイルを装填している偽装ビル。
建設中のさまざまな支援設備。
「エヴァとこの街が完全に稼働すれば、いけるかも知れない」
「…使徒に勝つつもり?相変わらず楽天的ね」
「あら、希望的観測は、人が生きて行く為の必需品よ」
「…そうね、あなたのそういう所、助かるわ。…じゃ」
小さく手を振るリツコ。対照的に、ビシ、と大げさに敬礼するミサト。


78 :10:03/02/15 04:04 ID:???
「独りで、暮らすんですか?」
ミサトの、やや硬い声がフロアに響く。
「そうだ。彼の個室はこの先の第6ブロックになる。司令・副司令も了解済みだ。
問題は、無い」
「そんな。それでいいの?」
「はい。父も、僕もお互いが居ない生活が普通でした。今更…」
「シンジ君」
「いいんです、どこでも同じですから」
「ちょーっとお待ちなさい!」
ミサトはそういうと、携帯電話をかけ始めた。

「そ。シンジ君は私ん所で引き取る事にしたから。上の許可も取ったし。心配しなくても
子供に手ぇ出したりしないから…」
はっと思い出し携帯から耳を離すミサト。リツコの声がスピーカーを震わせる。
「こういう冗談は通じないヤツだった…」

ぼろぼろのミサトの車が走っている。
「さーて今夜はぱーっと歓迎会でもしましょーか♪」
「え…?」
「飲んで騒いで親睦を深めるのよッ♪」
「は、はい」
「そうと決まれば買出しねッ♪」


79 :10:03/02/15 04:05 ID:???
ンビニ。この形態の店舗は、このご時世でも重宝がられている。往時の品数こそ無い
ものの、必要最低限の物は揃っていた。…豊富な品揃えなど、まだ夢物語だ。
生活物資は優先順位が付けられ、生産ラインを効率良く稼働させている状況なのだ。
そういう訳ではないのだが、ミサトが買い込んだのは、酒とつまみとレトルト食品。
これは単に、ミサトの調理能力と嗜好の問題である。
レジで会計をしている間に、ご近所の主婦らしい二人連れが昨日の事件を話している。
使徒の脅威が現実のものとなって、やや不安になっている様子だ。疎開、そんな言葉まで
出てきた。シンジは「当事者」としてその会話を聞いている。その表情は、暗い。
「シンジ君、ちょっち寄り道するわよ」
会計を済ませたミサトが声をかける。
車は、第3新東京市を見下ろす高台の、だだっ広い一鶴に止まった。
「なんだか寂しい街ですね」
シンジが街の見た目の感想を言う。ミサトは時計を見ている。
「時間だわ」
その声を合図としたかの様にサイレンが鳴り響く。
ガコーン、ガツン、という金属音が山々に木霊する。
夕日に染まった街に、地下から新しいビルがせり上がり、景色を一変させて行く。
グオオオオォォォンという地鳴りが不気味ですらある。
「すごい…」
「これが『使徒』迎撃要塞都市・第3新東京市、私たちの街よ」
ミサトがシンジに語りかける。
「あなたとレイが守った街…。あなたは、人に褒められる立派な事をしたのよ。
胸を張っていいわ」
そっとシンジの肩に手をかけるミサト。夕焼けに染まりながら、二人はしばらく街を
眺めていた。


80 :10:03/02/15 04:06 ID:???
コンフォート17マンション11-A-2号室前の通路。ミサトの官舎である。
住人はミサトのみ。機密保持・身辺警護及び民間人へのとばっちり防止措置である。
「シンジ君の荷物は、もう届いていると思うわ」
コンビニ袋を片手にミサトがカードキーを取り出しながら言う。
「散らかってるケド気にしないで。害は無いわー。さ、入って」
ドアを開けると、さっさと中に入る。下駄箱の周りで、照明がぼわーっと灯る。
「あ〜やれやれ」
奥の方でミサトの声がする。シンジは戸惑いが先にあり、中に入れないでいる。
「どうしたの?」
ミサトが玄関に戻ってくる。おずおずとシンジ。
「し、知らない人の家、には、そんな、ずかずかとなんて…」
シンジの言いたい事は解る。ミサトも解っている。
しかしミサトは、ニッコリ笑いながらこう告げる。
「シンジ君、ここはもうあなたの家なのよ。急な話とはいえ、私達は家族なの」
判るわね?とでも言いたそうな、笑顔だ。
視線をあちこちと彷徨わせるシンジ。が、下を向いたまま、小声ではあるが
「たっ、ただいま…」
そう言って玄関をくぐった。上出来である。ミサトも満足そうにしている。
「じゃ、初仕事は食べ物を冷蔵庫に仕舞って♪」
この時から、シンジの「もうひとつの戦い」が始まったのである。


81 :10:03/02/15 04:10 ID:???
部屋の中でシンジは愕然とする。
ビールの空き缶やウィスキー・ボトルで一杯のテーブル。
引越しの段ボール箱が山積みの廊下。
あちこちに脱ぎ散らかされた服。
シンクにたまっているコップや皿。
ダイニングの隅っこに集められたゴミ袋の山。
「…散らかっている、ですか?」
呆れつつ冷蔵庫を開けるシンジ。ビールと冷凍食品・缶詰で埋め尽くされている。
ため息とともに食料を詰め込んでいると、ヴィィィッ、という低音がする。
音源には、さらに巨大な冷蔵庫がある。
「こっちの冷蔵庫って、まさか、日本酒用ですか?」
着替え中のミサトに向かって質問する。
「あら、よくそんなこと知ってるわねぇ。イケるクチ?」
お猪口でクイッと酒をあおる真似をしながらミサトが顔を出す。
「いえ、先生が、好きだったから…」
少し表情が曇る。
「そっちは違うのよー。まだ寝てるはずだわぁ」
「?」
シンジが首を傾げていると、部屋着のミサト(ヨレヨレタンクトップにジーンズのショート
パンツだ)が出てくる。


82 :10:03/02/15 04:11 ID:???
「さって、料理にかかるとするかぁ!」
玄関開けたら2分でご飯。あーら奥様、電子レンジなら1分半よ。
ウジジジジ…チーン!
軽やかな音と共に、良い匂いが漂う。空腹は最上の調味料。
テーブルにはミサトがウデを振るった「レトルト料理」が並んでいる。
「いっただっきまーすッ!」手を合わせてそう言いながら、ミサトはまずビールだ。
「ごきゅごきゅごきゅごきゅごきゅごきゅごきゅ…ぷふぅ。
くーッ!やっぱ人生、この時の為に生きてる様なもんよねー!」
左手で口元の泡を拭いながらご満悦のミサト。箸の進まぬシンジに気付く。
「ん〜?シンジ君も、飲む?」
「えっ?いっ、いえ、僕は、あの、いりません」
「ダッメよぉ!好き嫌いしちゃあ」
「…そういう問題じゃ無いんじゃあ…」
国債公務員が未成年に酒を薦めるとは、などとブツブツ言うシンジ。
「…楽しいでしょ?こういうの」
「え?」
「お話しながらする食事って、大切なのよ。心の栄養を摂れるの」
穏やかな、微笑み。
「…はい」
二人の、初めての夕食はこんな感じだった。


83 :10:03/02/15 04:12 ID:???
「二人の生活を始めるにあたって、決めておかなきゃならない、大切な事があるの」
真剣なミサトの声に、シンジがピクッとなる。
「じゃん、けん、ぽん!」
いきなりそう言われてつい、手を出すシンジ。
「よし、勝った!月曜日の朝食はシンジ君ね」
「え?」
「次ッ!じゃん、けん、ぽん!2連勝ッ!」
「ええ?」
「さくさく行くわよ。じゃん、けん、ぽん!よぉぉぉぉぉし!」
「えええぇ〜?」
どうやら、食事当番やら掃除当番やらを「じゃんけん」で決めている様なのだが
シンジはただ、無意識に手を出しているだけだ。ミサトはこのままウヤムヤのまま
押し通すつもりらしい。そんなに家事がイヤなのか?…嫌かもなぁ。
「うっし、これで当番も公平に決めた!」
右手とミサトを、恨めしそうな目で交互に見ているシンジ。
「さて、さっきも言ったけどォ」
「…」
「ここはもう、シンジ君のウチなんだから」
「…」
「何も遠慮なんて要らないのよ」
「…」
オーバーアクションで能天気に振舞うミサト。シンジはまだ恨めしげな表情のままだ。
テーブル越しに上体を突き出し、ミサトがグッと手を伸ばして、シンジの頭をぐしぐし
する。揺れる乳。ノーブラ、なのか?シンジからは、その谷間さえ覗けたであろう。
「もーーー辛気くさいわねぇ!おっとこの子でしょう!
シャキッとしなさい、シャキッと!」
「は、はい」
「ま、いいわ」
むふー、と鼻息荒く腕組みすると、ミサトはシンジに入浴を勧めた。
「ヤな事はお風呂に入って、パーッと洗い流しちゃいなさい。風呂は命の洗濯よ」
ビシ、と中指を立てて言う。…意味が違ってくるぞ、ミサト。


84 :10:03/02/15 04:13 ID:???
脱衣所で、裸のまま中空を見つめているシンジ。そこにはミサトの下着が干してある。
風呂の入り口に向かいながら、視線が離れないシンジ。手探りでドアを探し、開ける。
ばさばさばさッ!
「わわッ!」
音のした方に目をやると、ペンギンが羽ばたきをしながら水切りをしている。
首にはタオルまでかけているではないか。
「みっみみみミサトさん!あっあっあっあれ」
いすの上に胡坐をかいてビールを飲んでいるミサトの前に、フルチソで出るシンジ。
その前をすぃ〜、と通り過ぎるペンギン。シンジが表情で訴える。
「ああ、彼。新種の温泉ペンギンよ。名前はペンペン、もう一人の同居人よ」
ペンペンが爪を器用に使い大型冷蔵庫を開ける。中にはソファーやテレビ(!)がある。
しばしシンジを見て、頭を振りながら冷蔵庫の中に入っていく。知恵はある様だ。
「…前、隠したら?」
ビールを飲みながら、ミサトがシンジの股間を指差す。赤面しつつ前を押さえ、カニ
歩きで風呂場に戻るシンジ。
「…ちと、はしゃぎ過ぎたか?見透かされているのはこっちかもねー」
ビールを飲み干し、しばし腕組みのミサト。しかめっ面でもう一本追加だ。
一方シンジは湯船の中で天井を見つめている。
「葛城ミサトさん。悪い人じゃないんだ。でも…風呂ってイヤな事を良く思い出すな」
また、フラッシュバック。
「父さん…綾波レイ…使徒…」
無意識に股間を触っているシンジ。


85 :10:03/02/15 04:14 ID:???
風呂の中でミサトが電話をしている。相手はリツコらしい。
「あんな目にあってんのよ?また乗ってくれるかどうか…そりゃあ、心のケアは私が言い出した事だから……違うの、怖いのよ、どう扱ったら良いか判らない……え?なにそれ。
うっさいわね!」
電話を切り、ふぅ、とため息をついて湯船に肩まで浸かる。無意識に、胸の傷痕に触れて
いる。縫合痕の不揃いな、大きな傷痕…血行の良くなった今は、赤く浮き上がっている。
「あの時私は、シンジ君を道具として見てた。リツコの事、とやかく言えないか…」
前屈みになり膝を抱え込む。
「使徒を倒したと言うのに、うれしくない…シンジ君もかしら?…」

照明が消えた室内。ベッドに横たわり、イヤホンで音楽を聴いているシンジ。
視線は天井を向いている。
「ここも、知らない天井だ。…当たり前だよな、初めての街なんだから」
夕焼けの街の遠景が、シンジの脳裏をかすめる。
「僕はなんでここにいるんだろ?」
フラッシュバック。今度は音まで聞こえてくる。
「僕は、何をしているんだろう?」
バシュコン!バシュコン!バシュコン!バシュコン!
「僕は、何を、した…」
ズクッ!ヴシュッ!
「あがぁッ!」


86 :10:03/02/15 04:16 ID:???
ビルにもたれ掛かる様な格好でレイが倒れている。兜の右側が破損している。
使徒は、少し離れてその様子を窺っている。やがてゆっくりとレイに近付き、頭部に
手をかけた。そして――その破壊された箇所に指を突っ込み、引き剥がし始めた。
ギシギシ、ガキン、という音を立てながら、次第に顔面部分がむき出しになる…。
第一発令所。あちこちで警報音が鳴り響いている。
「頭部損傷!損害不明!」
「制御神経が次々と断線して行きます!」
「パイロット、エヴァ、共に反応ありません!」
非常警報が鳴り響き、各モニターが赤く染まっていく。
「シンジ君…」
ミサトが心配そうに呟く。いや、言葉には出さないが、皆が絶望感を共有していた。
ゲンドウとコウゾウを除いて…。
「活動維持に障害発生が予想されます!」
「状況を報告して!」
「シンクログラフ逆転、パルス逆流しています!」
「回路遮断、ブロックして」
冷静にリツコが指示を出す。コンソールの上を素早くマヤの手が動く。
「だめです、信号拒絶!受信しません」
モニター表示は、次々と制御神経が断線していく様子を映し出している。
「パイロット…シンジ君は!?」
「モニター反応無し、生死不明!」
「初号機、完全に沈黙!」
「葛城一尉、どうするの?」
「…ここまでね。作戦中止!パイロットの保護を最優先。プラグを…」
「作戦は続行する。エヴァ・パイロット共に現状維持」
ゲンドウがミサトの指示を打ち消した。
「そんな」
「現状維持だ、葛城一尉」
司令の有無を言わさぬ命令に、ハイとしか答えられないミサト。


87 :10:03/02/15 04:19 ID:???
その時。
ウヒ ウヒャヒャヒャ ヒヒヒィハハハハハ
ボークハ シンジクン オトコーノコー
チソチソ ニギレバ ヘッチャラダー
ボークノ チソチソ ミーギマーガリー
ヒヒ ミサトサンノ チチ パンティ
ハカセノ イイ ニオイ ムネノ タニマ
タタタタッテキチャッタ ウフフ
独り言のような、歌のようなシンジの声。モニターに、オナニー中のシンジが居た。
「パイロット、一回目の射精!2回目に入りました!Βエンドルフィン・アドレナリン
大量に分泌されています」
「すごい回復力ね」
リツコがちらりとゲンドウを見る。
「いやぁ自分もあの頃はサルでしたよ」
「俺も」
「不潔…」
「初号機の反応は?」
事態のあまりのマヌケさに、笑いを堪えながらミサトが聞く。
「同じくアドレナリン分泌しています…鳥肌が立っています!これは…」
「怒っている、みたいよ?」
「そりゃそうでしょう、女の子目の前にしてオナーニするなんて」
「しかも、いきなり中出し」
「不潔不潔不潔」
「イケそう?」
「解りません…あっ!」
レイがゆっくりと立ち上がっていく。
「勝ったな」
「ああ」


88 :10:03/02/15 04:22 ID:???
変化が現れたのはエヴァだけではなく、使徒の身体にも起こった。腹部がボコッと
膨らみ、ゆっくりと垂れ下がって行く。そして…。
「使徒の下腹部に形態変化!」
「きッききききのこが生えています!イヤッ!何アレ!?」
「まぁ、立派。おまけにおイナリさんまで」
またリツコが(以下略)
「どういう事?使徒はオスなの?」
ミサトがリツコに問う。しかし、それには答えずマヤの耳元で囁く。
「データの収集は出来ている?」
「MAGIがやっています」
「ほほぅ、何が目的だろうな?」
コウゾウが笑いながらゲンドウに聞く。
「お前の考えている通りだ、冬月」
再起動した、レイ。新たな機能を追加した、使徒。
しゃがみ込み、一気に跳ぶレイ。
くるくると回転して、そのまま使徒の顔にケリを入れる。
体制を崩しながらもレイを摑もうとする使徒。
が、レイは使徒を踏み台にして再び跳躍し使徒の後方に着地した。
そこに使徒の両手がグーンと伸びて行く。左手でそれを払いのけ懐に飛び込むレイ。
しかし、使徒の膝蹴りがそれを阻む。
ズズゥゥゥゥン ガゴン ドドドォォォォォオオォン
バランスを崩し、ビルを壊しながら倒れるレイ。
右手に激痛が走る!
一瞬、テンションが下がるレイとシンジ。
そこに使徒が跳び付いて来て、馬乗りになる。
「マウントポジション!」


89 :10:03/02/15 04:24 ID:???
ミサトが驚く。使徒はグレイC柔術までマスターしているのだろうか?
「いえ、違うわ。これは…」
そう、違っていた。
使徒はレイの頭を摑むと、その顔に股間を押し付けてきた。
「いきなりそれはちょっと」
「嫌われるよなぁ。ま、相手にもよるが」
「不潔不潔不潔不潔不潔!」
「生殖行為より快楽を優先した?擬似器官かも知れないわね」
「ナニ冷静に分析してんのよッ!乙女のピンチなのよ!」
「うわああぁぁぁあああぁああ!」
「シンジ君?」
「嫌だ嫌だ嫌だ他の事なら何でもしますだからそれだけは許してくださいぃぃ!」
「どうしたのシンジ君!」
「どうやら、性的なトラウマが有るみたいね」
「何、どういう事?」
「それより今はこの状況を何とかするのが先よ」
「心配無い。対策は立ててある」
ゲンドウの落ち着いた声が響く。
「レイ、レイープ魔撃退法を思い出せ」
「…」
躊躇するレイ。
「頚部拘束具を絞めろ」
「呼吸が出来なくなりますが…」
ミサトが異議を唱える。
「構わん。口を開くまで絞めつけろ。口が開けばもとに戻せ」
「頚部拘束具、作動」


90 :10:03/02/15 04:25 ID:???
見る見る内にレイの顔が苦痛に歪んでいく。
「かはッ」
レイの口が開く。すかさず押し込まれる、きのこ。
「むぐッ」
「頚部拘束具、解除!」
静かにゲンドウが命令する。
「噛み切れ、レイ」
「うっ…」
マコトが呻く。
レイのアゴが動く。ビクッとなる使徒。
「握り潰せ」
左手が「おイナリさん」を摑み、握りしめる。
ぐちゅっ。
「おぅ…」
シゲルが思わず身をすくめる。
「へぇ、そうなの…」
感心した声を出すマヤ。
使徒は痙攣しながら身体をのけぞらせている。
やがて、レイに覆い被さる様に倒れ、身体を丸め込んだ。
次の瞬間、まばゆい閃光が広がり、爆発音がそれに続いた。天空に伸びる十字の光。
「初号機は?無事?」
やがて炎の中から、地響きを立てながら、ゆっくりとレイが姿を見せた…。
「あれがエヴァの本当の力…」
恍惚と不安が入り混じった表情でリツコが呟く。
「回線接続。システム回復、グラフ正常位置。パイロットの生存を確認」
「機体回収班、急いで」
「パイロット保護を最優先に!」
ミサトが割り込むように指示を出す。


91 :10:03/02/15 04:27 ID:???
ズン、ズンという衝撃を感じながら、シンジは呆然としている。
ふと、気配を感じて左モニターを見る。
そこには、ビルのガラスに映った、冷ややかなレイの瞳があった。
見られている、そう思った。
そして非難されているかの様にシンジは感じた…。


92 :10:03/02/15 04:28 ID:???
ベッドの上のシンジ。記憶の世界からの帰還。
泣いている。
あふれ出した記憶が、様々な感情を叩き起こしている。
羞恥・憤怒・悲哀・思慕…。
それらがないまぜになってシンジを襲っている。
嗚咽が漏れる。
ふすまが開き、風呂上りのミサトが髪を拭きながら入ってくる。
「シンジ君、どうしたの?」
それには応えられなかった。
口をぱくぱくと動かすのだが、言葉にはならない。
あう、おぇう、と、呻いている。。
「…いいのよ、泣きなさい。今はそうするのが一番よ」
ミサトが優しくシンジの肩に手を置く。
シンジは、すがりつく様にミサトに抱きついた。
そして、幼児が母親の前でするように、ただ、泣き続けた。

一時間程泣いて、シンジは眠りについた。
涙と鼻水とよだれで濡れた胸元を、ため息混じりに見たミサトはシャワーを軽く浴び直し
ビールを飲みながら記録を付け始めた。
「初号機操縦者・碇シンジの第壱回戦闘記録及びその後の精神状態について…」



93 :10:03/02/15 04:30 ID:???
次回予想
状況に流されるままのシンジに、友人が出来るはずも無かった。
だが、エヴァのパイロットという現実は、彼を異なった形で周囲に映し出す。
好奇と敵意、従順と反抗。小さな自我が、悲鳴を上げる。
第参話「いらない、電話」
さーて、次回もサービスするつもりでがんばろっと♪

予定より早く仕上がりました。
でも週末は仕事が多忙です。来週は大変かも知れません。

>>67>>68>>69
ありがとうございます。筆が遅くて申し訳ありません。
文章はさておき、のた打ち回る姿も含めてお楽しみください。
>>70
機会があれば参考にさせていただきます。
つくづく、先達の壁は厚いな、と痛感させられます。
いやはや。


94 :10:03/02/15 05:02 ID:???
>>79
一行目。×ンビニ
    ○コンビニ
>>88
拾七行目。×体制
     ○体勢

気をつけていても、誤字はあるなぁ。

95 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:03/02/15 16:14 ID:???
アスカでてくるまでだいぶかかりそうだなぁ
気長に待つよ

96 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:03/02/17 13:27 ID:???
激しくイイ!

10さんがんがれ。

97 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:03/02/18 10:04 ID:???
次回、更新を楽しみにしてます。

98 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:03/02/22 22:23 ID:???
とりあえず重要度を0から1に引き上げてROMっておきます。

99 :10:03/02/23 07:28 ID:???
第参話「いらない、電話」

シミュレーターの中。
ぼぅ、と灯りが点き、上目遣いで無表情のシンジが浮かび上がる。
どこか、精神的に不健康な雰囲気が漂う。
「おはようシンジ君。体調はどう?」
リツコが事務的に挨拶をする。
「…慣れました。悪くないと思います、」
「それは結構。エヴァの出現位置・非常用電源・兵装ビル配置・回収スポット、全部
頭に入っているわね?」
「たぶん」
シンジの声には、どこか投げやりなものがある。
「ではもう一度おさらいするわ」
だがリツコは容赦が無い。
「通常エヴァは有線からの電力供給で稼働します。非常時に内部電源に切り替えると蓄電
容量の関係によりフルで1分、ゲインを利用しても5分しか稼働できません。これが私達
の科学の限界です。では昨日の続き、インダクション・モード始めるわよ」
インダクション・モード。目標攻撃時における正確性を高める為の、コンピュータ誘導モ
ードである。
シミュレーター内部のカウンターが5分にセットされる。カシャン、という音とともに
カウントダウンが始まり、モニターに灯が入る。


100 :10:03/02/23 07:29 ID:???
ビル街。第3新東京市の市街戦を想定しているようだ。先日の使徒がモニターに映し出さ
れている。静止しているのは、難易度調整か?
「目標をセンターに入れて、スイッチ・オン」
リツコが指示を出す。ゆっくりと反応するシンジ。
操縦桿の引き金にかけた指が動く。モニターの中で、使徒に向かって飛ぶ弾丸。
ヴォヴォォォォォ!
だが、当たらない。
「落ち着いて。目標をセンターに入れて…」
「スイッチ」
事務的なリツコと、抑揚の無いシンジの声。
今度は命中した。倒れこむ使徒。
「次は目標が移動するわよ」
リツコが指示を出し、マヤがコンソールを操作する。
モニター右手に使徒が現れる。ゆっくりと、エヴァの背後に回ろうとしている。
モニターが使徒の動きを追視して行く。
「目標を、センターに入れ、スイッチ」
同じ言葉と動きを、ただ繰り返すシンジ。
モニターでは、次々と使徒が倒されていく。
狭いシミュレーターの中で、シンジ自身の思考と行動は無かった。


101 :10:03/02/23 07:30 ID:???
モニタールーム。
リツコとマヤ、それにミサトがシンジのトレーニングを監督している。
「しかし、よく乗る気になってくれましたね、シンジ君」
「人の言う事にはおとなしく従う、それがあの子の処世術じゃないの?」
リツコはあっさりと切って捨てる。腕組みをして見ていたミサトがしかめっ面をする。
「目標を、センターに入れ、スイッチ 目標を、センターに入れ、スイッチ
目標を、センターに入れ、スイッチ 目標を、センターに入れ、スイッチ」
モニターからはシンジの呟きが聞こえている。
突然、モニターが真っ暗になる。
「シンジ君、内部電源残量ゼロよ。カウンターにも注意をして頂戴。実戦なら…」
「…なら、そう指示を出してください」
一瞬、苛立ちを感じるリツコ。
「実戦では電波障害などの不測の事態が生じるわ。そのためのシミュレーションよ」
ミサトが助け舟を出す。
「シンジ君、電源ソケットの挿入方法、知ってるゥ?」
「ミサト、甘やかしちゃだめよ!」
「ソケットをお尻に当ててぇ、女の子がお尻を拭くみたいに、前から後ろに動かすのよー。
それでガッチリ挿入されるわ」
あああああ。電源ソケットって、アナル挿入式ですか!?
「女の子が、お尻を拭く様に、前から後ろへ 女の子が、お尻を拭く様に、前から後ろへ
女の子が、お尻を拭く様に、前から後ろへ 女の子が、お尻を拭く様に、前から後ろへ」
「へ、変態」


102 :10:03/02/23 07:31 ID:???
晴れた空。さえずる小鳥達。清々しい、朝。
ミサトのマンションでは、シンジが簡単な朝食を用意している。
ちらちらと、ミサトの部屋に視線を送るが、主はまだ現れる気配が無い。
テレビでは、朝のニュースショーが様々な出来事を伝えている。ついでに、時間も。
そろそろ登校する時間である。
戸惑いながら、シンジがミサトの部屋をノックする。
「ミサトさん、もう、朝なんですけど…」
ビールの空き缶や雑誌が散らばる部屋の中、布団にくるまっているミサト。
「当直…勤務、さっき帰ったトコ、眠い、寝かせて」
「じゃ、僕、学校に行ってきます」
布団の中から、ミサトがアクビをしながら応える。
「ゴミも、ついでにお願い、ね…」
布団から手だけが出て、ぶらぶらと振られている。
「はい…」
「どう、学校、慣れた…?」
「なんとか、はい」
「そういってらっひゃい…」
「行ってきます」
フスマを閉めるとシンジはゴミ袋片手に玄関を出た。
朝の通学・通勤時間だと言うのに、このマンションには人の気配が無い。
所定のゴミ捨て場にも、シンジが出したゴミだけがぽつんと在るだけだ。
非日常的な空間。だが、苦手ではない。苦手なのは…。


103 :10:03/02/23 07:32 ID:???
プルルルルルルルル プルルルルルルルル
柔らかな電子音が鳴り、電話機のランプがチカチカ光る。
布団から手を伸ばし、手探りでスピーカーホンのスイッチを入れるミサト。
「はい、もしもしぃ」
「あら、不機嫌ね。彼氏とケンカでもしたの?」
「彼氏ぃ?…あぁシンジ君のことね。違うわよ、当直明けよ」
「あらそう。で、彼、様子はどう?」
「転校して二週間、相変わらずよぉ。未だに、誰からも電話かかって来ないわ」
「電話?」
「そ。必須アイテムだから持たせたんだけど、使ってる様子、無いのよ。
あいつ、友達いないんじゃないかしら?」
「シンジ君って、友達を作るのには不向きな性格かもしれないわね」
「せっかくの青春が、生き腐りだわぁ。恋のひとつやふたつやみっつ…」
「ヤマアラシのジレンマ、って知ってる?」
「あのトゲトゲの?」
「ヤマアラシの場合、相手に自分の温もりを伝えたいと思っても、身を寄せれば寄せる程
身体中のトゲでお互いを傷つけてしまう。人間にも同じことが言えるわ。今のシンジ君は
心のどこかで痛みに脅えて臆病になっているんでしょうね」
「…ま、そのうち気付くわよ。大人になるって事は、近付いたり離れたりを繰り返して
お互いがあまり傷付かずに済む距離を見つけ出す事だ、ってことに…」
面倒くさそうにミサトが「オトナの定義」を打つ。


104 :10:03/02/23 07:33 ID:???
道路に出ると、「現実」に連れ戻される。
うるさい工事の音。やかましいクラクション。知らない人の集団。
それらのモノの中に身を置き、シンジはのろのろと学校へと歩く。
周りに居る数人は、明らかにシンジと同じ制服なのだが、シンジも彼らも挨拶はない。
下駄箱でも、廊下でも、教室に入っても、親しみある挨拶はない。
窓際の席に集まり雑談している者。ファッション雑誌を見てはしゃぐ女生徒。
タレントの真似をして笑いを取る男の子。教科書を開き、予習をしている子。
それらの中にシンジは入らない。
目立たず、騒がず、ひっそりと、ただ、そこにいる。
それは綾波レイも同じだ。
窓際の後ろから二番目の席に、彼女はいる。3日前から登校した。
3週間前の戦闘で受けたケガのため、頭に包帯、右目に眼帯、右手前腕はギブス・シャーレで肘関節から固定して、三角巾で吊り下げている。
ケガはかなりの重傷だと思っていたが、短期間でここまで回復するのはやはり、人造人間
だからなのか?説明されたのは、シンクロ率向上の為、可能な限り二人の交流を持つ事と
レイとエヴァの秘密保持。まだ情報公開する時期ではないのだという。
レイの身体の大きさは、特殊な薬物により一定の範囲で調節できるらしい。ただ、発明者
がマッドサイエンティストであり、レイへの使用方法が本来の目的とは異なるため、副作
用に関しては問題が残るそうだ。文字通り、人体実験である。
ちなみに、その科学者はリツコの「友達」だそうだ…。
レイの、シンジへの対応は冷たい。シンジはそう感じている。
簡単に言えば、必要最低限。
だがそれは、誰に対してもそうなのだが、シンジはまだ知らない.


105 :10:03/02/23 07:35 ID:???
「ギュオオオォォォーーン、ドドドド、シュパッ、シュパッ」
戦闘機の模型を、ビデオカメラで撮影ながら遊ぶメガネの少年。臨場感、出るのか?
モニターに女生徒のスカートが移る。顔を挙げるとおさげの少女が立っている。
「何?委員長」
「相田君、昨日のプリント届けてくれた?」
委員長こと洞木ヒカリが、メガネをかけた相田ケンスケに尋ねる。
「ああ、居ないんだ、トウジのヤツ」
「相田君、鈴原と仲良いんでしょ?3週間も休んでるのに、心配じゃないの?」
「ケガでもしたのかなぁ?くらいは思ってるさ」
「例の、ロボット事件で?テレビじゃ一人もいなかったって言ってたわよ」
「まさか…。鷹巣山の爆心地、見たろ?」
巨大なクレーターが出来て、周りの木々が焼け焦げ、倒れた、現場の記憶。
「入間、小松、三沢、それに九州からも出動してんだよ。あの騒ぎじゃあ、10人や20人
じゃあ済まないよ…。それに、ホラ。綾波だって」
ケンスケが窓際のレイに視線を向ける。
「なんにも言わないけど、あれは絶対そうだよ。家は旧市街だろ?」
「そうね、旧市街だったわ」
「口止めされてるんだと思うよ。報道管制が敷かれてるくらいだからね」
教室の扉が、乱暴な音を立てて開く。眉間にシワを寄せたジャージ姿の少年が入ってくる。
「やぁ、トウジ」
「鈴原」
二人に、オス、と短く答えるジャージ少年、鈴原トウジ。
自分の机の上に乱暴に鞄を置くと、机に腰を降ろして教室を見渡す。
「なんや、しばらく見んウチにエライ寂しゅうなったな」
教室の前の席に着席している生徒は居ない。
「疎開だよ、疎開。みんな転校しちゃったよ。街中であれだけハデに戦争されちゃあ…」
カメラで教室内を見渡しながら、人事のようにケンスケが答える。
「喜んどんのはオマエだけやろな。ナマのドンパチ見れるよってに」
ケンスケがニヤリと笑う。


106 :10:03/02/23 07:36 ID:???
「戦自の無線もバッチリ聴いたよ。まさか航空隊のGCI波まで聴けるとは!」
軍用無線の傍受をしていたらしい。事情に詳しいわけだ。
GCIとは「地上要撃管制波」の事で、スクランブル発進した航空機や訓練飛行中の機体が
使用する周波数だ。緊迫した交信は魅力的だが、秘密保持のため周波数は公表されない。
おまけにコロコロと移動するので、追跡が大変なのだが。
「で?トウジはどうしてたの?こんなに休んじゃってさ」
「…妹がな」
ムスッとしたトウジが口を開く。 
「瓦礫の下敷きになってもうた。命は助かったんやが、大ケガして入院しとんねん。
うちンとこ、おじんもお父んも研究所勤めや。なんや今度の事件で仕事が休めんらしい。付き添いが出来るんはワイだけや」
しまった、という顔をしておとなしくなるケンスケ。
更に表情が険しくなるトウジ。
「しっかしあのロボットのパイロット、ホンマにヘボやな。無茶苦茶腹立つわ!
味方が暴れてどないするっちゅうんじゃ」
「それなんだけどさ、聞いた?転校生のウワサ」
「転校生?」
「ほら、アイツ。トウジが休んでいる間に転入して来た奴なんだけど。
変だと思わない?あの事件の後にだよ…」
がらがらと教室の戸が開く。委員長・ヒカリが慌てて号令をかける。先生が来たのだ。
授業が始まり、それなりに静まりかえった校内。
新東京市立第壱中学校には、使われていない教室が目立つ。
元々、少子化で人数が少なかったのだが、先日の通称「ロボット事件」―関係者の間では
「E事件」と呼ばれる−使徒との戦闘により不安になった親達が転校させていった。
シンジのクラス、2―Aも空席が目立っている。…前の席に空きが多いのは判るなぁ。
黒板には数式が書かれている。どうやら数学の授業らしい。
おじいさんと呼ばれても違和感の無い教師が、滔々と喋っている。
生徒達がつまらなさそうな顔で授業を聞いている。


107 :10:03/02/23 07:39 ID:???
「…これが世に言うセカンドインパクトであります。繁栄を誇った文明も、一瞬で塵芥に
帰し、人類は未曾有の危機に陥ったのです。しかしながら人類は希望を捨てず、勤勉に働
き、苦節15年、たった15年でここまで復興しました。これも皆さんのご両親の弛まぬ
努力と忍耐、血と汗の結実であります…」
これは…つまりませんね。え?しかも、いつもこんな調子なんですか?
ぼーっとしているシンジのパソコンからコール音。キーを押すと画面に文字が。
<碇君が、あのロボットの操縦者だってウワサ、本当?
                    YES/NO>
えっ?という顔をして辺りを見回すと、後ろの方の席で手を振る女の子がいた。
横の席の女の子がキーボードを打っている。
<本当なんでしょ?こんな時に転校してくるなんて、いかにも、だもんね!>
少し躊躇してから、シンジは<YES>と返信した。
静かだった教室が騒然となる。
「その頃私は根府川に住んでましてね。今はもう海の底なんですけど…」
それに気付かないのか、窓の外をみながら老教師は続ける。
「ええええぇぇぇぇっ!」
「やっぱり!」
「すげぇぞおい」
「ねねね、詳しく聞かせて!」
「祭りだ ワショーイ!!」


108 :10:03/02/23 07:40 ID:???
あっと言う間に取り囲まれるシンジ。
「ちょっとみんな!まだ授業中でしょ!席についてください!」
「もぉ〜カタイ事言わないの。いいじゃんいいじゃん」
「よくなーい!」
その時、チャイムが鳴り老教師は退室して行った。
ぺこりとお辞儀を済ませると、ヒカリも輪に加わった。
「ねぇねぇ、どうやって選ばれたの?」
「やっぱりテストとかあった?」
「怖くなかった?」
「操縦席とか、どうなってるの?」
女の子達が立て続けに質問している。もじもじしているシンジ。
「あっあの、そういう事は秘密にしなくちゃ、いけない、って…」
「だーいじょーぶッ!ウチのお父さん、ネルフ勤務だから。少しくらいなら知ってるの」
「私の家もそう!経理2課」
「俺ん所は技術3課っつってた」
「あたしんちは病院勤務よ」
「あ、オヤジがそこの臨床工学技師」
「なんだ、みんな関係者じゃん」
「だって、この街がネルフのための街だもん」
そりゃそーだ、とみんなが納得したところで質問が再開された。
「で?あのロボットの名前は?」
「みんなは、エヴァとか、初号機、とか、呼んでる、けど」
「武器とか必殺技は?」
「マシンガンみたいなのと、プ、プログナイフ、っていう刃が高振動するナイフ」
「うわーッ、まるでドラマかマンガみたい!」
みんながはしゃいでいる隣で、ケンスケが会話を自分のパソコンに打ち込んでいる。
レイは無関心に外を眺めている。
トウジは、視線をシンジに据えたまま腕組みをしている…。


109 :10:03/02/23 07:42 ID:???
昼休みの教室。
みんなそれぞれ、気ままな場所で昼食を摂っている。
昼食のパンを買いに行こうとするシンジの前に、トウジが立つ。
「転校生。体育館裏まで、ちとカオ貸せぇ」
え?となるシンジに畳み掛けるトウジ。
「話が有る、っちゅうとんじゃ。早よ来んかい」
「ちょっと鈴原、あんた何絡んでんのよ!いい加減にしなさ…」
「じゃかんしぃわ、女は黙っとれ!」
ヒカリの言葉を遮りトウジが叫ぶ。シンジの首に手を回し、引っ張っていく。
「様子を見てくる。ムチャはさせないよ」
ケンスケがヒカリにそう言い残し後を追った。
体育館裏。
倒れているシンジ。鼻血が出ている。
拳をさすりながらトウジがしゃべる。
「スマンな、転校生。ワシはオマエを殴らなアカン。殴っとかな気が済まへんのや」
無表情でシンジを見下ろしているトウジ。
ケンスケがやってきて、やれやれ、というカオをする。
「それでやめとけよ。お前に殴る理由が有るように、転校生にも事情があるはずだぜ?」
「わぁっとるわい。…くそ、殴り返しても来いへん」
「こいつの妹さん、この間の騒ぎで大けがしたんだって。今、フツーじゃないんだ。
悪いヤツじゃあないんだけど、ま、許してやってくれよ」


110 :10:03/02/23 07:44 ID:???
「…僕だって、乗りたくて乗っている訳じゃ、ない…」
その呟きを聞いてトウジの顔色が変わる。
「…ワシの気持ちはまだ伝わっとらんようやなぁ」
シンジの胸ぐらを摑み、引っ張り上げる。視線をはずすシンジ。スネている様にも見える。
「やめろって。委員長が心配してたぞ」
二人の間に割って入るケンスケ。
その時、小走りで駆けて来る足音がした。
レイだ。
「…非常召集。先、行くから…」
そう告げると、また足早に去っていく。
呆然としている三人。
すぐにシンジがトウジの手を振り払い、後を追うように走り出した。
ウウゥ〜というサイレンと共に、非難勧告のアナウンスが流れる。
「只今、東海地方を中心とした関東・中部の全域に特別非常事態宣言が発令されました。
住民の方々は速やかに指定のシェルターへ避難してください。繰り返し…」
「さ、トウジ。俺達も避難しよう」
そう言ってトウジを促しつつ、ケンスケが首をヒネる。
「なんで綾波が転校生を呼びに来るんだ…しかも、非常召集?」
他の生徒達に雑じりながら、自分の荷物を持って指定シェルターに急ぐ二人。
学校の近くにはシェルターへの入り口が設けられており、比較的安全に避難が出来る。
オマケに避難訓練も定期的に行われている。生徒達には緊迫感があまり無い。
街のあちこちでビルが地下に格納されていく様子を、ケンスケは高台から見ている。
「見たい、な」
「ケンスケ、早よせぇ。委員長がうるさいんちゃうんか?」
ああ、と応えながら、バッグからビデオカメラを取り出しバッテリーのチェックを始めた。


111 :10:03/02/23 07:45 ID:???
海上。
極低音と共に、陽炎に揺らめきながら、何かが近付いてくる。

ネルフ本部・第一発令所。
「目標を光学で確認。領海内に入りました」
「総員、第一種戦闘配置」
シゲルの説明にコウゾウが応える。
「了解。対空迎撃戦、用意」
「第3新東京市、戦闘形態に移行します」
「中央ブロック、収容開始」
「政府及び関係各省庁への連絡終了」
「現在、対空迎撃システム、稼働率48%」
「第5から第7管区まで迎撃システム作動させます」
「非戦闘員及び民間人の避難完了した、との報告がありました」
「中央ブロック及び第1から第7管区までの収容完了」
民間人の安全を確認したミサトが勢い込んで言う。
「さーて、これで安心してドンパチ始められるわ。碇司令の居ぬ間に第4の使徒・襲来
…意外と早かったわね」
「前は15年のブランク、今回はたったの3週間ですからね」
「こっちの都合はお構いなしか。女性に嫌われるタイプね」
ミサトとマコトがまるで世間話のレベルで会話している。緊迫感は、無い。
「ねー今度の使徒って、何に見えるゥ?」
「イカ」
「マツタケの薄切り」
「じゃあの光球は、真珠?」
「じゃじゃあ、あの辺りがカリ首で」
「あのヘンなのは、スジが立っていると?」
「不潔」
「マヤ、意味はわかっているのね…」


112 :10:03/02/23 07:46 ID:???
山麓のミサイル陣地からミサイル、対空ロープウェイ群から銃弾が、雨あられと使徒に
浴びせられる。その弾幕の中、悠然と使徒が進む。
「税金の無駄遣いだな」
コウゾウが呟く。
「委員会から再びエヴァンゲリオンの出動要請が来ています」
「うるさい奴らね、言われなくても出撃させるわよ。レイの準備はどう?」
ミサトがリツコに問う。
「Bモルモン服薬して1時間、巨大化はしているはずよ」
「友達には悪いけれど、大丈夫なの?その薬」
「本人が実験済みよ。でも、根本的な使用方法が異なるのよ。こんなに短期間で縮小・
巨大化したら、人体に相当の負担があるでしょうね」
「負担、って?」
「簡単に言えば、細胞が壊れ易くなるわね」
「…」
「これが実験なのはレイも承知よ。弐号機以降の貴重なデータですものね」
「エヴァンゲリオン初号機・テストタイプ・綾波レイ、か…」
「初号機、エントリー・スタートしました」
「がんばってもらうしかないのね」
「LCL電荷」
「圧着ロック解除」
発進プロセスが着々と進んでいく…。


113 :10:03/02/23 07:47 ID:???
第334地下避難所。
シンジのクラスメート達が避難している場所だ。
避難して来た人達は、ビニールシートの上で休んでいる。
チューナー付きビデオカメラで放送を確認しているケンスケ。
「チッ、また報道管制だ」
トウジが覗き込む。モニターをトウジに向けるケンスケ。
画面では、お昼のワイドショーを放映している。
画面上に「特別非常事態宣言発令中」とテロップが出ている。
「民間人には見せてはくれないのさ。こんなビッグイベントだっていうのに」
「自慢の改造受信機はどないした?こないだのは、あれで無線を聴いたんやろ?」
「こう深く地下に潜っちゃ、電波を拾えないよ」
「…なんでや?テレビは映っとるやないか?」
「アンテナが天井のどこかにあるんだろう。不安解消にもなるしね」
ふーん、と感心した様子のトウジ。
ケンスケが委員長に声をかける。
「綾波はどうしたの?姿が見えないけど」
「先生に報告したら『連絡は受けているから大丈夫』って言ってたわ。どうしたの?」
「いや、どしたのかな?って思ってさ。それより…トウジと二人、トイレ行っていい?」
「相田君らしくないわね。鈴原だけならわかるけど…うん、判った」
じゃ、と言ってケンスケはトウジと連れ立って通路に出た。


114 :10:03/02/23 07:49 ID:???
避難所・男子トイレ。
「なんや。ホンマに便所かいな」
「チビらないように、用心さ」
「やれやれ、オタクっちゅうのんはメンドイのぉ」
「死ぬまでに、一度だけでも見たいんだよ」
「上のドンパチをか?」
「今度いつまた敵が来てくれるか解らないんだ」
「ケンスケ、お前なー、ビョーキやぞ」
「この時を逃しては、あるいは一生…な、頼むよぉ〜ロックはずすの手伝ってくれ」
「外にでたら、死んでまうで?」
「それはここに居たって判らないよ。どうせ危険なら、ひと目だけでも、だよ」
「アホ。何のためにネルフがおるんじゃ」
「そのネルフの決戦兵器って何だよはてなあのロボットだぜ?この前もあいつが俺達を
守ったんだ。それをお前はあんな風に殴って」
「う」
「あいつが、ロボットに乗らない、なんて言い出したら、俺達全員、死ぬぞ?」
「む」
「トウジには、あいつの戦いを見守る義務があるんじゃないのか?」
ビシ!と指差すケンスケ。
腕組みして考えているトウジ。
「…しゃあないな」
やった!というカオのケンスケ。
「お前、口から先に生まれて来たんとちゃうか?まぁええ。協力するわ。一理あるしな」
「ひひひ。上手くいけば2体のエヴァが見られる」
「ん?なんやそれ」
「綾波だよ。彼女、なんか秘密があるぞ」
「そう言やぁ転校生に伝言したり、途中で居なくなったり、やな」
「血が、血が騒ぐ…」
二人は通路に出ると、ロックをはずして避難所を抜け出した。
そして神社のある小山に登ると、ビル街をゆっくり進む使徒が見えた。
「すごい!これぞ苦労の甲斐があったというもの…おっ、エヴァが来る!」


115 :10:03/02/23 07:50 ID:???
エントリープラグ内。
「父さんもいないのに、なんでまた乗っているんだろう?…人に殴られてまで」
「シンジくん。出撃、いいわね?」
「はい」
「よくって?敵のA.T.フィールドを中和しつつパレットの一斉射。練習通り、大丈夫ね?」
「はい」
「エヴァ初号機、発進!」

ビィィィィィッ!ビィィィィィッ!
警報音と共に、リフトビル屋上のロックボルトが上がっていく。
ビルが固定されるとシャッターが開き、パレットガンを持ったエヴァが姿を現す。
「エヴァキタ━━(゚∀゚)━━!」
「…なーんやそれ…」

無線でマヤとミサトが最終チェックをしている。
「A.T.フィールド展開」
「作戦通り、いいわね。シンジ君」
「女の子が、お尻を拭く様に、前から後ろへ 女の子が、お尻を拭く様に、前から後ろへ
女の子が、お尻を拭く様に、前から後ろへ 女の子が、お尻を拭く様に、前から後ろへ」
「ままままだ言ってる、嫌ァ〜ッ!」
「余程インパクトがあったのね」
「作戦は失敗かな?」


116 :10:03/02/23 07:51 ID:???
いきなりリフトビルから飛び出すエヴァ。そのまま使徒にパレットガンを連射する。
ヴォヴォォォォォォォ!ヴォォォヴォォォォォ!
全弾撃ち尽くしてしまいそうな勢い。
「バカ!爆煙で敵が見えない!」
カチッ カチッ
弾倉がカラになったようだ。
ゆっくりとたなびく煙。
シュシュッ、という音がして、煙の中から光のムチがエヴァに向かう。
上体を沈めて避けるレイ。だが、リフトビルとパレットガンが真っ二つにされた。
「なんや!もうやられとるで…」
「まだまだ!」
「予備のライフルを出すわ、受け取って!」
ガラガラという音をたてて近くの兵装ビルのシャッターが開く。
だが、エヴァの動きがぎこちない。
「やっぱ殴られたのが効いてるのかな…」
「う、っく」
だが、発令所では異なる意見が出た。
「現在、レイは右目が見えません。右側の視野は狭まっているし、距離感も狂って
いると思われるわ」
「どーして?射撃はできたわよ?」
「射撃は火器管制システムが支援しているのよ。でもシンクロしたレイの異常感覚が
シンジ君の感覚まで狂わせているんじゃないかしら」
「どうすれば…」


117 :10:03/02/23 07:54 ID:???
使徒の光るムチがシュルシュルと音をたてて迫ってくる。
地面にへたり込んだ様な姿勢から、立ち上がろうとするレイ。
使徒のムチが頭上から降ってくる。左に跳び、なんとかかわすが不利な状況である。
相手はムチで街を破壊し放題だが、パイロットのシンジがそれに対して過敏に反応して
しまうのだ。無意識に街から逃げようとしている感じだ。
使徒のムチが唸りをあげて振るわれる度に、ビルや道路が破壊されていく。
逃げ回っているだけでは、だめ。
そう思うのだが、シンジとシンクロしきれない。もどかしさを感じている自分がいた。
幾度目かのムチ攻撃をかわして、ビルの陰に身を隠す。
突然、頭上から切断されたビルが降ってくる。
使徒がもうひとつのムチで放り投げたらしい。
身を翻して飛び出すと、そこに使徒のムチが待ち構えていた。
ごろごろと転がって、間一髪で避ける。
が、土煙の中でバチバチと火花が散った。
プラグ内。
ビーッ、ビーッという警報音と共に、赤いライトが点灯!タイマーのカウントダウン!
「初号機、アンビリカルケーブル断線!」
「エヴァ、内部電源に切り替わりました!」
「活動限界まで、後4分53秒!」
ビルに片手をついて起き上がろうとする、レイ。
その足元に絡みつく、ムチ。
次の瞬間、レイは空中高く放り投げられていた。
「わわわこっちに来る!」
「あひゃぁ〜!」
ズズ…ン…ッ!ドドドドド…ッ!
小山に叩き付けられたレイ。木々をなぎ倒し、土煙が上る。
プラグ内ではシンジがぐったりとしている。
「シンジ君、大丈夫?ダメージの状況は?日向君」
「問題なし、イケます!」


118 :10:03/02/23 07:55 ID:???
「う、うぅ」
うめき声と共にシンジの意識が戻る。
急いでモニターを確認するシンジ。左モニターに、エヴァの手と「何か」が映っている。
エヴァの指と指の間に、人が頭を抱えてうずくまっている。しかも、二人。
二人は、そろそろと頭を上げて回りを見る。
「!!」
シンジの背中を旋律が走る。もう少しで死なせるところだった…。
「民間人が何故あんなところに!?」
第一発令所のモニターに二人の情報が出る。
「シンジ君のクラスメート!?」
エヴァを涙目で見上げるケンスケとトウジ。急に、あっ!となる。
正面モニターに目をやるシンジ。
使徒が眼前に来てムチを振り上げている!
ひゅん
振り下ろされるムチを両手で受けるレイ。
「うッ…」
右手の骨折はまだ完治していない。おまけに、掌が溶けていく。
耐えるレイとシンジ。のたうち回る使徒のムチ。
「なんで戦わんのや…」
「俺達がここにいるから?…自由に動けないのか?」
「活動限界まで後3分28秒」
「…」
「あの二人をプラグに搬入、その後速やかに撤退させましょう」
「ちょっと、リツコ。許可の無い民間人をプラグに乗せられると思っているの!」
「このまま手をこまねいてはいられないわ。民間人の救出も大事でしょう?」
「赤木博士、それは越権行為です。作戦の指揮権は私にあります」
「エヴァに関する権限はこちらにもあります」


119 :10:03/02/23 07:56 ID:???
「初号機、活動限界まで後3分」
「…エヴァは現行命令でホールド。その間にエントリープラグ排出。急いで」
リツコが命令を下す。
「以後のデータはMAGIに記録して」
「はい。エヴァ下腹部装甲板オープン」
「『鋼鉄の処女』開きます」
ガコーン バシュウッ!
「そこの二人、急いで足元に行って、エヴァに乗りなさい!」
リツコの声が外部スピーカーから流れる。
足元に行くと、エヴァがM字開脚している。その股間から一本の棒が突き出ている。
あれがエントリープラグなのだろう。…あの、じゃあ、コレって…。
「なんやアレ」
「貞操帯、ってやつかな?」
「…なんや知ってはイカン物、ちゅうんは判るわ」
「鼻血が出そうだ」
「ワシもや」
二人は開いたハッチから飛び込んだ。
「うワ、なんやこれ?水か?」
「あああああ!カメラが!」
「…チソチソむずむずせんか?」
「する!」
「LCL再注入します」
「うわ〜がぼがぼがぼ」
「神経系統に異常発生」
「異物を二つもプラグに挿入したからよ」
「神経パルスにノイズが混じっているんだわ。レイ、お客さんが二人増えたわ」
リツコがレイに話しかける。


120 :10:03/02/23 07:57 ID:???
血の匂いがする」
「おそらく鼻血でしょうね」
「…今度はイカ臭い」
「発射オーライ、ってか?」
「すると三人はアナ兄弟」
「お互いのナニがLCLに溶け合って…」
「しかもいきなり4P」
「不潔不潔不潔」
「マヤ、やっぱりわかっているのね…」
「命令…まだ?」
レイの無表情な声がする。
「そのまま緊急撤退。しかる後、再出撃。いいこと、レイ?ヘッドセットとプラグスーツ
を着ているのはシンジ君だけよ。彼の意識を捕まえて頂戴」
「はい」
「シンジ君。友達は収容できたわ。撤退よ」
それには答えないシンジ。
「おい転校生。撤退や言うとるで!」
「嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ」
プチ
「モモモモウボクハオコッチャウゾ。
ココココココデオナーニシチャウゾ
カマウモンカカマウモンカ
ソーレソーレソーレ…ウッ」
「…まさか、コレ、混ざるんか?」
「だろうね、俺達のも、混じってるよ、多分」
「イヤーンな感じ」
「出―しーてーくーれー!」


121 :10:03/02/23 07:58 ID:???
その時レイは奮闘していた。
力一杯、使徒のムチを引っ張り引き寄せる。
使徒の胴体がゆっくりと近付いてくる。その胴体にケリをいれて吹っ飛ばす、レイ。
「イケ、マヨウナ、レイ!ツッコメー!」
山の斜面を、使徒めがけて駆け下りる、レイ。
「撤退しなさい!」
リツコが叫んでも、レイは止まらない。
ゆっくりと立ち上がった使徒が、レイに向かってムチを振るう。
2本のムチがレイの胴体を貫く。
「ううッ…」
「ソノママ、ガマンダ
ムチハ ツカエナイ
ナイフデツキサシテ ヤルゥ」
「くッくぅ…」
うめき声と共にプログナイフを取り出すレイ。
右手でムチを摑み、使徒を引き寄せる。痛い痛い痛い。
左手を大きく振り、使徒の光球をめがけてナイフを突き出す。
ガチン ガン
二度、三度、ナイフが跳ね返される。
「初号機、活動限界まで後30秒」
「シンジ君!」
ざくり、と刃が食い込んだ。
シュイイイィィィィイィィィィン   キキキキキキキンキンキン
高速振動する刃が、火花を散らしている。
「初号機活動限界まで後10秒。9.8.7.6…」
シュイイイィィイイン
「アハアハアハアアアアアアァァァァァア」
「3.2」
ピキッ  ピシピシッ
「1.0!」
ピシュウゥゥゥウゥゥゥ


122 :10:03/02/23 07:59 ID:???
「エヴァ初号機、活動停止」
「目標は、完全に沈黙しました!」
第一発令所内に、安堵のため息が漏れる。
「助かったぁ〜!」
「あンのバカ、たっぷり絞ってやる…」
ミサトが鬼の形相で呟く。

「うっうっうっ…」
プラグ内にシンジの嗚咽が響く。
トウジもケンスケも、かける言葉が無い。
想像と現実の違いを、目の前で見せつけられたのだ。
シンジの苦悩が、少しは理解できたような気がする二人だった。
「おおっおっおっえぐっおえぇぇぇ」
「転校生、元気出せぇや…」
トウジが見かねて声をかける。
「おおっおっおっおえええええええええっ。げろげろげろ」
「…リバース?」
「循環、するかな?」
「イヤーンな感じ」
「出―しーてーくーれー!」

次回予想
自分を克服できないシンジは、ミサトからも逃げ出してしまう。
目的も無く彷徨うシンジは、現実の中の自分を再確認してしまう。
そんなシンジを、組織はあっさり連れ戻し、選択を強いる。
そこに優しい言葉はなかった。二人の少年を除いて。
第四話「雨、逃走の果てに」
さぁ〜てこの次こそサービスになるのかな?


123 :10:03/02/23 08:00 ID:???
>>95
筆が遅くて申し訳ありません。
ストーリーを明かさないためにも、もうしばらくお待ちください、としか言えません。
でも必ず出しますのでお許しを。
>>96
ありがとうございます。
出来れば、具体的な感想など、頂けましたら嬉しさ十倍なのですが…。
それが、例え辛らつなご意見でもコヤシにしていきたいと思います。
>>97
ありがたいお言葉です。
やっと更新出来ました。今回はいかがでしょうか?
>>98
「無」から「有」へ。小さくとも前進です。
ご期待にそえるよう、がんばります。

さて、仕事は一段落しましたが、会社はタダで給料をくれません。
三月から四月にかけて、また仕事量が増えそうです。
なんとか、二週間に一度のペースは維持したいと考えております。
おおまかなストーリーは出来ています。
後は矛盾点をチェックしながら、コツコツ書くのみです。
…どうなる事やら?


124 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:03/02/23 10:30 ID:???
10さん今回も楽しく読ませていただきました。

レイが初号機だと、零号機が気になりますね。

125 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:03/02/23 14:25 ID:???
10さん
乙です

126 :10:03/03/12 02:43 ID:???
第四話「雨、逃走の果てに」

使徒との戦いが終わっても、それでネルフの仕事が終了した訳では無い。
エヴァの収容・診察・治療と、各施設の損害状況を把握し補修工事の計画を立案、関係各
省庁との連携を図り、復旧作業を速やかに行わねばならない。
今回はそれに加えて、使徒のサンプル収集と分析がある。
…いや、もうひとつ。
避難命令を無視した民間人と、命令違反の操縦者の処罰があった。
活動停止したエヴァの下腹部装甲板「鋼鉄の処女」緊急ハッチが手動でこじ開けられ、
ケンスケとトウジは連れ出された。
エヴァは、シンジと共に最寄りのルート34を使用して収容されていく。
保安諜報三課の黒服達に連れられてネルフ本部の一室に隔離され、保護者が身柄を引き取
りに来るまでの間に、二人はたっぷりと冷や汗をかかされた。
当然、保護者側も「身内からの忠告」にキモを冷やしたと思われる。
「機密保持のため、君達はしばらくの間、我々の監視下に置かれる…」
お決まりのセリフが、お約束通りの状況下で出たことだろう。
ケンスケのビデオカメラがディスクごと没収されたが、弁償はしてもらえた。
ケンスケ・トウジの処罰はそれで済んだ。

第7ケージ。
ブリッジが傾斜した状態になり、巨大なリクライニングチェアに横たわった格好のレイ。
作業員が、レイの装着している装甲板を手際良く外して行く。
身体にフィットしたスーツ(シンジのパイロットスーツと同じ物だ)の腹部に二つの穿孔。
普通なら、緊急手術を要する。
いや、レイの場合も治療は必要なのだろう。皆、真剣に作業を急いでいる。
「スーツ切開、急げ!患部を露出させろ」
「腹部エコーとMRI準備急げ。内臓へのダメージが心配だ!」
リクライニングチェアがさらに変形してベッドのようになり、クレーンが巨大な機材を運
んでくる。それをマニピュレータが把持し、患部に近付けていく。
その様子を、ぼーっと見ていたシンジにミサトが声をかける。
「シンジ君、ちょっと来なさい」


127 :10:03/03/12 02:44 ID:???
ケージから少し離れた、倉庫のような部屋。
ドア横の壁にもたれ、腕組みをしたまま動かないミサト。
簡易ベッドに腰を降ろし、前屈みになって組んだ手の指を見ているシンジ。
「どうして私の命令を無視したの」
「ごめんなさい」
「どうしてリツコの指示を優先したの」
「ごめんなさい」
「そのリツコの命令も無視したわね」
「ごめんなさい」
「あなたのは私達の命令に従う義務があるの。判るわね」
「はい」
「今後こういう事の無い様に」
「はい」
指は組んだまま、親指をもぞもぞさせているシンジ。ナマ返事とも取れる。
「…アンタ本当に判ってんでしょうね?」
ミサトの声のトーンが変わる。
「はい」
「アンタね、何でも適当にハイハイ言ってりゃ良いってモンじゃァ無いわよ!」
「判ってますよ、ちゃんと。もういいじゃないですか、勝ったんだから」
ちら、とミサトを見て、また視線を指に戻すシンジ。
ミサトがツカツカとシンジに近付いて言う。
「…そうやって表面だけ人に合わせてれば、楽でしょうけどね、そんな気持ちでエヴァに
乗ってたら、死ぬわよ!」
「いいですよ。そんなの」
視線を落としたまま、なげやりに答えるシンジ。
「良い覚悟だわ、と言いたいところだけど、褒められると思ったら大間違いよシンジ君!」
感情を抑制するために声が硬くなっているミサト。
「褒められるも何も、僕しか乗れないんでしょ?…乗りますよ」
明るい声とは裏腹に、俯いたその顔には、自嘲気味な笑いしか無かった。


128 :10:03/03/12 02:45 ID:???
「お説教」はそれで終了した。
明日の実況検分への立会いと、自宅での休息を下命してミサトは出ていった。
身体洗浄を済ませて着替えれば、SPがミサトのマンションまで送ってくれるだろう。
だが、シンジはなかなか動こうとしない。
シンジは、もっと違ったリアクションが欲しかったのだ。
甘え、と一言で切って捨てる事のできるものだが、シンジはそれが欲しかった。
のろのろと立ち上がり、廊下に出たシンジはケージへと向かう。
誰かの話し声。
「…は冬月から口頭で報告を受けている。」
「監督不行き届きです。申し訳ありません」
「操縦者の命令違反は、記録上存在しない。MAGIが交信記録を作成している。明日には
正式な記録として広報課から提出される。役人達には勿体ぶって渡せばそれで良い」
「了解しました。シン…操縦者にお会いになられますか?」
「アクシデントの報告は受けていない。会う必要は無い。レイの状態を見る」
「現在、第7ケージにて検査中です。詳しくは赤木博士から…」
声と足音が遠ざかって行く。
「父さん…」
実の息子が、生死を賭けて戦っても見向きもせず、逆に別の人間を気にかけている。
その事実は、シンジの心をさらに空虚にさせた。
期待してはいけないのだろうか?
努力は報われないのだろうか?
父にとって、息子とは何なのだろうか?
一度は幼いなりに出した結論が、また頭をもたげてきた…。


129 :10:03/03/12 02:46 ID:???
「レイの身体的損傷は比較的軽度です」
リツコがゲンドウに説明している。
「内臓器に重大な損傷はありません。小腸の一部に損傷がありますが、LCL内に三日程度
いれば修復可能です」
「縮小化の後、中央プラントに収容。データ集積を行う」
「何度も申し上げますが、短期間のサイズ変更は負担が大きすぎます」
「ダミーシステムの完成は急務だ」
ゲンドウの言葉には迷いがない。
リツコは沈黙することで了解の意志を伝える。
そして、意外な報告をする。
「…初号機操縦者の情緒に問題があります。このままでは任務に支障をきたす恐れがあり
ます。速やかに意欲の向上を図るか、根本的な解決が必要と考えます」
「具体的な方法は?」
「最悪の場合、洗脳という方法もあります。ただし、以後のシンクロ率に関して課題を残
す事が十分に考えられます」
「…今しばらく、葛城一尉に任せておこう。レイを頼む」
そう言い残し、ゲンドウは執務室へと向かった。
独り残されたリツコが、ぽつりと呟く。
「誰が一番幸せなのかしらね、母さん」
それに答えられる者は誰もいないのではないか?
それぞれの幸せ。
それぞれの価値観。
それぞれの、心。


130 :10:03/03/12 02:46 ID:???
四日後。雨の第3東京市。
人型に抉られた山肌。その麓に建てられた仮設建造物。ネルフマークの付いたテント。
安全第一・ヘルメット着用を促す看板。雑然とした雰囲気の現場。
使徒の残骸が有る場所は、外部から見えないように隠蔽されている。
徹夜での突貫工事の賜物である。使徒の身体周囲には足場が組まれ、作業が始まっている。
シンジは当事者の一人として実況検分に立ち合い、無事に役目を終えている。
ただし、ミサトの指示により、可能な限り発言を控えていた。
ネルフが提出した資料との矛盾を避けるためだ。
幸い、広報課職員とミサトが手際よく代弁してくれた。ま、それが仕事なのだが。
「D-3ブロックの解体終了」
「全データを技術局一課分析班に提出してください」
あちこちに設置されたスピーカーから、それぞれ指示が流される。
あわただしい現場。
ぽつんとシンジが使徒の残骸を見上げている。
「これが、僕たちの、テキ、なのか…」
ミサトが、すーっと近付いて来て一緒に見上げる。
足場の上では何人かの白衣姿の人達が、頭をつき合わせる様にして使徒に見入っている。
やがて一人が立ち上がり、手すりにもたれ掛かる様にしてシンジ達に声を掛ける。
「コア以外は殆ど原形を留めているわ。ホント理想的なサンプルね、ありがたいわ」
科学者としての探究心が刺激され、本当に嬉しそうだ。
シンジが戸惑いながら、笑顔を返す。


131 :10:03/03/12 02:47 ID:???
「でぇ?何か解ったわけ?」
ミサトの質問に、リツコが微笑みながら手招きする。
現場の一角に作られた分析室。
「本格的な調査はまだ始まったばかりだけれど…」
大量の情報が、ものすごいスピードでスクロールされているモニター。
やがて「601」と表示される。
「…ナニ、コレ?」
「解析不能を示すコードav
「…つまり、ワケワカメ、ってコト?」
「そう。使徒は粒子と波、両方の性質を備える光の様なモノで構成されているのよ」
「動力源はあったの?」
「それらしきモノは、ね。でも、その作動原理がまたさっぱりなのよ」
やや気だるそうに、溜め息交じりに答えるリツコ。コーヒーを口に運ぶ。
つられてシンジとミサトも一口啜る。
「まだまだ未知の世界が広がってるワケねー」
「とかくこの世は謎だらけよ。例えば、ほら」
立ち上がり、モニターを指し示す。
「この、使徒独自の固有波形パターン」
「どれどれ」
ミサトが身を乗り出す。シンジは後ろから背伸びをして覗く。
「え?これって…」
「そう。構成素材の違いはあっても、信号配置と座標は人類のそれと酷似しているわ
99.89%ね…」
「99.89%…それって」
「改めて、私達の知恵の浅はかさってものを思い知らせてくれるわ…」
シンジには何の事だかさっぱり解らない。


132 :10:03/03/12 02:47 ID:???
その時、シンジの視界の端を、見覚えのある人影が横切る。
それを視線で追うシンジ。二・三歩、入り口に近寄っていく。
ゲンドウがコウゾウと共に視察に来たのだ。
「…よーしストップ」
「ほう、これがコアか…。残りはどうした?」
「劣化が激しく、資料として問題が多すぎます」
「かまわん、他は全て破棄だ」
「はい」
赤い石の様な物を熱心にみているゲンドウ。手袋をはずし、直接触っている。
「?」
シンジは訝しげな表情をして、その光景を見つめている。
「…どしたの?」
「あ、いえ、別に…」
ミサトは軽く溜め息をつくと
「あ〜のねぇ、そーゆーカオして、別に、って言われてもねぇ」
急に意地悪く
「気にかけてください、心配してください、って言われてるよーなもんなんですけどぉ」
「…あの、父さん、手にヤケドしているみたい、なんで、どうしたのかな、って…」
おずおずとシンジが答える。
「火傷?リツコ知ってる?」
「あなたがまだここに来る前、テストプラグでの起動実験中に、レイが暴走したの…」
そう言いながらリツコが、少し優しい口調で話し始めた。


133 :10:03/03/12 02:48 ID:???
ネルフ本部・第二実験場・32日前。
「…起動実験開始」
静まりかえった室内にゲンドウの声が響く。
眼鏡が違う。手袋もしていない。
「準備完了。いつでもどうぞ」
「テストプラグ、挿入!」
「う…」
「レイ!」
「だいじょ…ああッ!」
「いかん!プラグを抜けッ!」
「あぅ…」
「レイ、安定しました」
「よし、再挿入」
「あ、あッ…あぅ」
「抜け!」
「あはァ…あぁぁ」
「挿入しろ」
「あッあッ痛…うゥうッ」
「碇、真面目にやっているか?」
「ああ…」
「プラグ挿入完了。主電源全回路接続」
「主電源全回路接続完了。起動用システム作動開始」
初号機の目に光が点り、モーター音が実験場に鳴り響く。
「稼働電圧、臨界点まであと0.5,0.2…突破しました」


134 :10:03/03/12 02:49 ID:???
「起動システム第二段階へ移行」
リツコが静かに指示を出す。
「システム・フェイズ・2スタート」
「シナプス挿入、結合開始」
「パルス送信」
「全回線正常」
「初期コンタクト、異常無し」
「左右上腕筋まで動力伝達」
「オールナーブ・リンク、問題ありません」
「チェック2550までリスト・クリア」
「2580までクリア」
「バイブレーター、スイッチオン。振動と回転運動を交互に3秒間隔で。第3次接続準備」
うぃぃぃぃぃん。くねくね。ヴぃぃぃいん。うにょにょにょん。
「ひッ、あぁぁああ、はァあ」
拘束具により立位姿勢を強制させられているレイは、つま先立ちで身体を震わせる。
「絶対境界線まであと0.9,0.8,0.70.5,0.3,…」
「パルス逆流!」
マヤが異変に気付き、叫ぶ。
レイが首を左右に振りもがいている。子供が、イヤイヤをしている様だ。
「第3ステージに異常発生!」
「中枢神経素子にも拒絶が始まっています!」
ガキン!グワシャン!
拘束具から逃れようとしてもがくレイ。
「コンタクト停止!6番までの回路を開いて」
「だめです、信号が届きません!」
「プラグ強制射出、急いで!」
「コントロール不能です!…膣痙攣も起こしています!」
バキン!バキッ!ビギン!ヴアキッ!
カベから基部ごと腕の拘束具を引き抜いているレイ。
バキンッ!
ついに拘束具をねじ切ると、股間の装甲版を壊そうとして殴る。だが、びくともしない。


135 :10:03/03/12 02:49 ID:???
ドン!と地響きをたててレイがふらつく。
左手で頭を抑え、右手を制御室に向けて伸ばす。
「エヴァ、制御不能!」
マヤの声にゲンドウが応える。
「実験中止、電源落とせ」
ハイ、と返事をして緊急用スイッチのガラスを割るリツコ。中のレバーを引く。
バキャン!ブボボボ
電源ソケットが外れ、落下していく。
ガシャン!ガツン!ガギン!ビシィィィッ!
制御室の窓を殴り続けるレイ。ついにガラスが砕け、細かなヒビ割れで真っ白になる。
「危険です、下がってください!」
ガラス片が飛んできても、真直ぐにレイを見つめるゲンドウにリツコが叫ぶ。
「ワイヤー射出!」
リツコの指示で、壁のあちこちからレイに向かってワイヤーが飛ぶ。
身もだえする度に、ボディスーツ姿のレイの肉体にぎりぎりと食い込むワイヤー。
首に、胸に、太腿にと食い込むワイヤーが、レイの肉感を強調していく。
レイはもう一度のけぞって身震いをすると、内股になり首を振りながらしゃがみこむ。
「いかん!」
ゲンドウが何かに気付き、制御室を飛び出していく。
レイは床の上で身悶えていた。
ワイヤーで身体の自由を奪われ、股間に挿入されたプラグから伝わる刺激に耐えている。
純粋な快感ではない。
身の毛もよだつような不快感と恐怖を伴う、おぞましい刺激。
マゾっ気のある女性が興奮を高めるために、敢えて絶望的な状況を妄想して自慰をする事
がある。だが、決してその実現は望まない、そんなシチュエーションの刺激。
プラグの模擬データには、伝説のAV男優・伊藤鷹と、伝説のイロモノ芸人・江頭2:50が
設定されていた。
指をうにうにさせながら近付くエガちゃん。
ねちっこい愛撫をしながら、嫌がる貴女を陵辱するエガちゃん。
かっ勘弁してくれぇぇぇぇぇぇ!
…江頭ファン・恋人の皆様、ごめんなさい。


136 :10:03/03/12 02:50 ID:???
「初号機、活動停止まで後5.4.3.2.1.0!」
カウントダウンにあわせて、レイの動きが停止する。
だが感覚は残っている。送球にプラグを排出しなければ、レイの脳神経に負担がかかる。
ゲンドウが横たわったレイの股間に取り付いている。
手動で「鋼鉄の処女」を開けるつもりらしい。レバーを掴むと体ごと捻る。
ジュジューッ!ズリュッ。
熱を持ったレバーが、ゲンドウの掌の肉を焼き、皮膚がめくれる。
熱さに思わずのけぞるゲンドウ。眼鏡が飛び、床に落ちる。
その甲斐あって「鋼鉄の処女」が開き、次いでテストプラグが強制排出されていく。
底部の辺りが少し変形しており、膣痙攣の凄まじさが解る。
「レイ、大丈夫か…」
ゲンドウがよろよろとレイの頭の方へ歩きながら声をかける。
「だ…じょ…ぶ…」
頬を上気させ、虚ろな目で息も絶え絶えにレイが答える。
「…そうか…」
どことなく、優しく、そして物悲しい微笑みをゲンドウは見せていた。
駆けつけた作業員が手早く拘束具を取り外し、Sモルモンを注射されたレイがストレッチ
ャーで治療室に運ばれていく。
この後リツコは、ゲンドウにより「お仕置き」されるのだが、削除が怖いので省略する。
…エロはどの程度まで許容されるのだろう?


137 :10:03/03/12 02:50 ID:???
その晩、シンジはひどく憂鬱そうだった。
ミサトにしてみれば、父親の、レイへの多大な愛情にショックを受けたのだろう、との
感想だったが、事態はかなり深刻であった。
翌朝、いつまでもシンジが起こしてくれないので不審に思ったミサトが部屋を覗く。
きちんと整理された室内。手荷物が消えている。
机の上にはIDカードと置手紙。
「家出、か。無理も無いわね…」

雨の市立第壱中学校。
キーボードを打っているケンスケ。先日のエントリープラグの立体図を作成している。
「今日でもう五日か…」
「俺達がこってり怒られてから」
「アイツが学校に来んようになってからや」
「アイツって?」
とぼけるケンスケ。
「転校生や。あれからどないしとんのやろ?」
「心配なの?」
「別に、心配っちゅう訳や…」
ぶすっとしているトウジ。
「トウジは不器用な癖に強情だからね」
「…」
「あの後、別れ際にでも謝っておきゃあ、三日も悶々としなくて済んだのに。
…ホラ、転校生の電話番号」
パソコン越しにメモを渡す。
「心配だったら、かけてみたら?」
「…いや、」
「なんだ、まだ意地張ってるの?」
「きちんと逢うて、目ェ見て謝らんと気が済まん」
「なるほど、ね」
「今日、一緒に行ってくれ?頼むわ!な?」
「あぁ良いよ」


138 :10:03/03/12 02:51 ID:???
ピンポーン♪
呼び鈴が鳴る。
玄関に飛んでいくミサト。勢い良くドアを開け、シンジの名を呼ぶ。
しかし、そこに居たのは少年二人だった。
「うッ!」
ビクッとなる二人。
「う。あっあの…」
「碇君と同じクラスの相田と鈴原と申します」
ミサトに見とれ、しどろもどろのトウジ。ケンスケはしれっとしている。
「相田君と、鈴原君…」
「はい」
「ワシ…僕が鈴原です」
「あ、エントリープラグに入った…」
「はいぃ!その節はとんだご迷惑をおかけしました。実はあれから碇君がずっと休んでい
らっしゃるので気になって見に寄らしてもろぉたんですが」
「シンジ君はね、今ネルフの訓練施設にいるの」
「ああ、そうなんですか…」
「これ、机に溜まっていたプリント。碇君の」
「わざわざ悪いわね。ありがと」
「ほな、僕ら失礼します」
「碇君によろしくお伝えください」
「ええ、伝えるわ。じゃ」
ウィ〜〜ッ、ガシュン!
扉が閉まると、みるみるふくれっ面になるミサト。壁に一発ケリを入れる。
「シンジのぶぁかッ!―――心配してくれる友達がいるのに…ばか…」
最後の方はうなだれて、切なさがにじみ出ている。

一方、外の二人は。
「…これは予想外の展開だ」
「エライべっぴんさんやったな」
「登校して着たら問い質さねばなるまい。フフフ」


139 :10:03/03/12 02:52 ID:???
第3新東京環状7号線の車中。
イヤホンをつけて音楽を聴いているシンジ。
制服姿のまま、ずっと電車に揺られている。
行く当ても無く、ただ時間を潰すためだけにこの空間にいる。
周りの乗客は、誰もシンジに気を止めない。
それぞれの目的のために、それぞれの場所で乗り、降りて行く。
乗客の数は増えては減り、減っては増える。
朝・昼・夕方・夜…。
やがて終着駅となり、電車も回送車となる。
「…帰らなきゃ…」
そう呟いたものの、シンジの足はミサトのマンションには向かわなかった。
夜の街の雑踏を、雨に濡れながらシンジは、ただ歩いた。
やはりシンジには目的が無いのだ。
ただただ、今の現実から逃げているだけなのだ。
もちろん、迷いは有る。
だからこそ、この街から遠く離れる事もせず、うろうろと彷徨っている…。
逃げてはみたが、逃げ出せずにいる自分が惨めだ。
井上陽水の歌が聞こえてきそうだ。
イカナクチャ キミニアイニ イカナクチャ キミノモトニ イカナクチャ カサガナイーー
ごみごみした路地裏の、雑居ビルの非常階段の下で雨宿りをするシンジ。
壁にもたれて膝を抱える。不意に、がたん!と音がする。
びくっとなり、そちらを窺うと、野良猫がゴミ箱を漁っている。
やがて何がしかの収穫があったらしく、足早に逃げていく。
あの猫は、いつからあんな生活をしているのだろう?
誰から生き方を教えてもらったのだろう?
「…僕は、野良猫にもなれない…」
そう呟くとシンジは、俯いて、声を上げずに泣いた…。


140 :10:03/03/12 02:52 ID:???
今夜のねぐらを探そうと街を歩きまわり、オールナイトの映画館を見つけた。
古い映画ばかりを上映しているようで、館内にはあまり客はいない。
足を投げ出して寝ているおっさん。
でかいバッグを足元に置いて、本を読んでいるおじいさん。
映画には目もくれず、いちゃついているカップル。
缶ビール片手にタバコを吸っているおっさん…。
…皆、映画を見るためにここに居るのではないのは確かだ。
シンジは中央の席に座った。
別に、熱心に映画を見ようと思ったわけではない。誰からも等距離で居たかったのだ。
映画は、既に始まっていた
殺人罪に問われている男がいる。だが、その男は過去の異常体験により二重人格であるら
しい。彼がいた児童施設の責任者が、子供同士でのセックスを強要し、それを撮影してい
たのだ。弁護士は芝居っ気たっぷりにそれを照明して無罪判決を狙う…。
シンジは何故か不安になっていた。デジャ・ヴュ。いや、これは…。
我に返ると、次の映画が始まった。
子供達がふざけて遊んでいたら、人に大けがをさせてしまった。
裁判で有罪になり、少年院に入れられた少年達は9ヵ月間の間、暴力と性的虐待により
心にトラウマを受ける…。夜、寝ているところを叩き起こされ、人気の無い場所へ連れ
出される。暴力によって、その行為の意味も知らず、口で奉仕させられ、そして…。
がちがちとシンジの歯が鳴る。いや、身体も小刻みに震えている。
腹部がビクビクと痙攣しているようだ。
口を押さえて席を立ち、荷物を持ってトイレに駆け込むシンジ。
そして、吐いた。
食事をしていないので、胃液だけが出る。ニガく苦しい。
横隔膜が痙攣し、おえおえ、と呻くだけで楽にはならない。


141 :10:03/03/12 02:53 ID:???
「兄ちゃん、大丈夫か?」
おっさんが個室の入り口に立って声をかける。急いでいたので鍵をかけ忘れたのだ。
声の方に視線を向けるが、涙目なのできちんと見えない。
「かわいそうに。背中をさすってやろう」
そう言っておっさんはシンジの横に行き、右手で背中をさすりだした。酒臭い息だ。
「…兄ちゃん、家出か?」
そう言いながらおっさんは、左手をシンジの股間にやり、膨らみを確かめる様に、揉む。
身体を強張らせるシンジ。閉じ込めた
過去の記憶が、脳裏をかすめる。
涙を拭って、ゆっくりとおっさんの方へ目を向けると、何時の間にかおっさんはジッパー
を開けて、イチモツを剥き出しにしている!
「にに兄ちゃん、こっこっこれしゃぶってくれ」
「うぁあああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!」
シンジはおっさんを突き飛ばすと、無我夢中で雨の街へ飛び出して行った。
公園の水道で水をごくごく飲み、もう一度吐く。何度も何度も繰り返す。
口をすすいでから呟く。
「…逃げよう。…ここは、嫌だ…」
シンジはふらふらと、闇を目指して歩き始めた。


142 :10:03/03/12 02:54 ID:???
第3新東京市・郊外。
蝉時雨の中を山間部に向かうシンジ。
田園風遅滞。
緑のカーペットのような稲穂。風が吹き、海面の様にうねっている。
芦ノ湖・湖畔。
きらきらと光るエメラルド色の水面。
名も無いであろう丘。
辺り一面に、ひまわりが咲き誇っている。
大涌谷。
赤茶色の地表から噴出す噴煙。煮えたぎる温泉。
見通しの良い崖。
吹き抜ける風。流されていく雲。遠くに第3新東京市。
転落防止柵の外で、腰を下ろして第3新東京市を見つめるシンジ。
逃げ出すと言いながらあちこちを彷徨った挙句、逃げ出せずにいるのだ。


143 :10:03/03/12 02:54 ID:???
「14歳だもんねぇ〜、人類の存亡を背負わせるのはやっぱ酷よね」
ネルフ本部・医療ブロックの精密検査室。
ジオ・フロント内において発生した疾病・事故に緊急対応する為の施設であり、地上の
「ネルフ病院」とは異なるので注意されたし。
ムームーのような、すっぽりとした病衣を着たレイがスキャンされている。
「でも、私達はエヴァの操縦を14歳の子供に委ねざるを得ないのよ」
コンピュータを操作しながら、淡々と会話しているリツコ。
「判ってる」
腕組みしたミサトが、天井を見上げて答える。
「で?シンジ君からの連絡は?」
検査を続けながらリツコが問う。
「…」
「無いの?」
「無いわ。彼、もう戻らないかも知れない」
「どうするつもり?」
「別に…。戻らないなら、その方が良いかも」
「何故?」
ミサトが先日の「お説教」の件を話す
「なるほどね」
作業の手は休めずに、深刻そうな表情で相槌を打つ。
「あの小にとって、エヴァに乗る事が苦痛でしかないのなら、もう乗らない肩が良いわ…
絶対死ぬもの」
「でもパイロットは必要よ」
現実的なリツコの答え。
首をうなだれ、溜め息をつくミサト。
「…ショック療法かなぁ」
「何?」
「…シンジ君に決めてもらおうかな…」


144 :10:03/03/12 02:55 ID:???
右京ヶ原・夕刻。
ざざざざざざざざざざざざざざざっ。
ススキの原を奔る影、ひとつ。
迷彩服に身を包んだケンスケである。
「だだだだだだだだだだ」
「うわぁっ!」
いきなり倒れこむ。
「小隊長殿ォ!」
「構うなっ!行け、行くんだ相田!」
「しっしかし、自分は小隊長殿を置いては…」
「貴様、それでも軍人かァッ!」
「ううっ!…あれ?」
奇妙な一人芝居を続けていたケンスケだが、視界の端に白い物を捉えた。
ナイトスコープを出して確認する。
シンジがお地蔵さんの前で固まっている。
視線はお供え物にロック・オン。
「碇?…お〜い、碇ぃ〜!」
そう叫びながら、ススキの原を走っていく。
驚いた顔のシンジ。
「やぁ。何してんの?訓練施設にいる、って聞いたよ?」
「う、あ、えぇと…」
ぐぐぅううぅぅぅ。
シンジの腹が、主の状況を的確にケンスケに伝える。
「腹、減ってるの?」
恥ずかしそうに頷くシンジ。
よく見れば、シンジの服はヨレヨレで汚れが目立つ。
「来いよ。飯盒メシとレーションで良けりゃあるよ」
何かを察知したケンスケが、シンジに笑いかける。


145 :10:03/03/12 02:56 ID:???
夕闇の中、テントの横で燃えている焚き火が、辺りを照らしている。
飯盒でメシを炊いているケンスケ。乾パンとコーヒーをもらって食べているシンジ。
上着まで借りている。
「……トウジのヤツ、反省してた。妹に説教されたらしい」
「…」
「私達を助けてくれたのは、あのロボットなのよ!ってさ…」
「…」
「小学校低学年に説教されんなっての、ホント」
「…」
無言のままのシンジ。ケンスケも焚き火を見つめている。
「夜はいいよな。あのうるさい蝉が鳴かないから。子供の頃は静かでよかったけど、
毎年増えてる」
「…生態系が戻ってるって、ミサトさんが言ってた」
「ミサトさん、ね」
シンジが喋ったのを聞いて、安心した様子のケンスケ。
笑いながら本音を喋る。
「まったく羨ましいよ。あんなお姉さんと一緒に暮らせて、エヴァの操縦が出来て。
ああ!一度でいいから思いのままにエヴァを操縦してみたい!」
「やめた方がいいよ。お母さんが心配するから」
妙にさめた口調でシンジが答える。しかし
「…ああ、それなら大丈夫。俺、そういうのいないから」
穏やかなケンスケの声。
「!」
「碇と一緒だよ…」
ケンスケの穏やかな声は、焚き火の炎のように暖かい。
「…」
言葉も出ないシンジ。考えてもみなかった事だった。
自分一人が不幸だと、思い込んでいただけなのだ…。
「…飯、食うだろ?缶詰がおかずだけど、戦自の戦闘食なんだぜ」
「うん」
暖かな思いやりと、暖かなご飯。シンジは泣きながら飯盒飯をかきこんだ。


146 :10:03/03/12 02:56 ID:???
夜。テントで毛布にくるまっている二人。…一緒にじゃ、ないよ。
眠くなるまであれこれと話をした。
自分の事、トウジの事、ミサトの事、綾波の事、エヴァの事…。
やがて二人は眠りに落ちた。

朝。
豆スープの様な霧の中を、男達が歩いてくる。
テントの周りを遠巻きにしている、
一人の屈強な男が、テントの中に向かって声をかける。
「ネルフ保安諜報部の者だ。出てきなさい」
テントの入り口から覗いているケンスケ。
ケンスケを黙って押しやり、出て行くシンジ。
「碇シンジ君だね」
「はい」
「保安条例第8項の適用により、君を本部まで連行する」
「はい」
男達が信じの両脇を固め、近くに止めていた車に連れて行く。
黙ってみているしかないケンスケ。
走り去る車。
「そんでオマエ、黙って見とっただけやっちゅーんかい!」
学校で、ケンスケから事情を聞いて興奮しているトウジ。
相反してしらけているケンスケ。
「んな事言ったって、向こう派ネルフの保安諜報部。プロなんだよ」
「それがどないしたんや。お前それでもマタンキついとんのか!」
嫌だ、下品、ヘンタイ、などの声が女生徒から上がる。
「勝てないケンカする奴はバカなの。マタンキは関係無いの」
「むむむむむ!…おい、ケンスケ、行くで!」
「どこへ?」
「見送りじゃい!」


147 :10:03/03/12 02:57 ID:???
ネルフ本部・懲罰房。
鉄製の扉が、がしゃん!という音を立てて開く。
「しばらくね」
「はい」
「この二日間、ほっつき歩いて少しは気が晴れたかしら?」
「別に…」
「エヴァのスタンバイ、出来てるわ。…乗る?」
「…」
「乗らないの?」
「叱らないんですね…」
「?」
「当然ですよね。ミサトさんは他人なんですから」
「!」
「もし僕が乗らない、って言ったら、初号機はどうするんですか?」
ぷち。激情家・ミサトに火がついちゃいました。
「乗らないのね」
「そんな事、できる訳ないじゃないですか。大丈夫ですよ、乗りますょ」
「乗りたくないのね!」
「そりゃそうでしょう。第一僕には向いてませんよそういうの。だけど父さんやミサトさ
んやリツコさんや…」
「いい加減にしなさいよッ!他人の事なんて関係ないでしょ!」
ミサトのあまりの変わり様に驚くシンジ。
「嫌ならここから出て行きなさい。エヴァや私達のことは忘れて元の生活に戻りなさい!
……あんたみたいな気持ちで乗られるのは、迷惑よ!」
そう言い放つと足早に出て行った。
がしゃん!と扉が閉まる。呆けているシンジ。
一方ミサトは、リツコの所で落ち込んでいた。
「子供相手に、売り言葉に買い言葉。…無様ね」
「…駅まで様子を見に行くわ」
そう言ってコーヒーを飲み干した。


148 :10:03/03/12 02:57 ID:???
護送中のシンジ。
「あの、ミサトさんは、どこですか?一言、お別れを…」
「君は既にネルフの人間ではない。どのようなことも、教えられない」
黒服の男は無愛想に答える。
ひとつの言葉のアヤ、それで全てが思いもかけない方へ動く…。
人生では良く有る事だよ、シンジ君。
キキィ!
車は新湯沢駅に着いた。
車から降りたシンジに、意外な声がかかる。
「碇、忘れ物」
振り向くと、ケンスケとトウジが立っている。
「あの、ちょっといいですか?」
黒服達は黙って頷く。
二人に駆け寄るシンジ。鞄を受け取る。
しばし沈黙の三人。


149 :10:03/03/12 02:58 ID:???
「ほら、トウジ。喋れよ!」
ケンスケがトウジを突っつく。
トウジ、意を決して硬い口調で喋り出す。
「…碇、この前はどついて悪かった。ワシの事もどついてくれい!」
「そそんな事、できないよ」
「頼む!せやないとワシの気ィが済まん」
シンジがケンスケを見る。
ニガ笑いをしながらケンスケが言う。
「こういう、恥ずかしいヤツなんだよ。ま、それで丸く収まるんだったら、殴ったら?」
黒服達は、タバコに火を点けて横を向いている。視線は外さずに。
「でも」
「デモもストライキもあるかい!早よせぇ!時間が無いんちゃうんか!?」
「じゃ、一発だけ」
「おし!来んかい!…手加減は無しや」
頷いて拳をぎゅっ!と握るシンジ。
がつん!
トウジの左頬に一発、入れる。
「痛っ!」
思わず手をぶらぶらさせるシンジ。
トウジもしかめっ面をして同じ様に痛がっている。
「へ、へへっ」
誰とも無く、笑いが起こる。
黒服達も、何故かニガ笑いをしている。


150 :10:03/03/12 02:58 ID:???
「…どうして、ここが?」
「カン、ってヤツさ。ここんとこ何十人て同級生を見送ってきたんだ…」
「碇がおらんのやったら、いずれワシらもこの街から出ていかんならんようなるやろ。
せやけどワシら何も言われへん。エヴァの中で苦しんどる碇の姿見とるからな。碇の事で
ごちゃごちゃヌカす奴がおってみぃ、ワシがパチキカマしたる!」
「…」
シンジの中で新しい何かが芽生えている。
エヴァに乗っていて、初めて得た気持ち。
例え父から褒められなくても、ここに努力を認めてくれる人が存在する。
エヴァに乗って、戦って、良かった。
「そないシンキ臭いカオすんなや」
「元気でな」
「がんばれや」
二人がシンジの肩を叩く。
「あの…」
どうしても言いたい事が、有った。
「時間だ」
黒服がそれを制する。
両脇から抱えられるようにして会談を上るシンジ。
振り向くと、二人が階段下で手を振っている。
身体をのけぞらせて二人を見るシンジ。
曲がり角が来て壁が視界を遮る。
突然、黒服達の手を振り解き、曲がり角まで戻る。
「殴られなきゃならないのは、僕だ!僕は、卑怯で…ズルくて、臆病で…弱虫で!
エヴァに乗った理由だって、立派なモノなんかじゃ、ないんだ!」
黒服達に捕まり、引っ張られていきながら、シンジは夢中で叫んだ。
「これ以上手を焼かせるなよ」
黒服の、その言葉を最後にシンジは沈黙した。


151 :10:03/03/12 02:59 ID:???
駅のホーム。
うなだれたシンジが立っている。辺りに人影は無い。アナウンスが特別列車の案内をする。
「2番線の電車は4時20分発・厚木行きの政府専用列車です。一版の方は柵の中へは…」
電車がホームに停まる。
両手でバッグをさげて、俯いたままのシンジ。
駅前では、ケンスケとトウジがじっと電車を見つめている。
キョキョキョキョ!
タイヤを泣かせながら、ミサトのルノーが急停車する。
電車をじっと見つめている。
果たしてシンジは、おとなしく電車に乗るのか?
それとも再び、悩み多い生活に戻るのか?
発車のベルが鳴り響く。
ドアが閉まり、モーターの唸る音が大きくなる。
電車はゆっくりと動き出す。それを目で追うケンスケとトウジ。
ホームを見つめるミサト。
「シンジ君!」
驚きと、喜びが混じり合った声。
その声に振り向くケンスケとトウジ。
「なんや?」
「あのお姉さんだ…あ!」
ホームには、両手でバッグをさげて、俯いたままのシンジがいた。
「シンジ君!」
もう一度ミサトが叫ぶ。今度は笑いながら。
「帰ってきた時の挨拶は!?」
「…ただいま」
「もっと大きな声で!」
「ただいま!」
「男の子なら、胸を張って!」
「ただいま!」
顔を上げたシンジの表情は、泣き笑いであった。


152 :10:03/03/12 03:00 ID:???
暗い室内。六人の男が会議をしている。
「使徒が二体、連続で出現した以上、ネルフ本部が最前線です。せっかくの使徒のサンプ
ルも、十分な分析が行えません。加えて、テストタイプでは戦力的に苦戦が予想されます」
「だから弐号機をよこせ、というのかね?」
「アメリカ第2支部で建造中の参・四号機も逐次投入して頂きたい」
「勝手な言い草だな!」
「…代わりに何を出すのかね?」
「使徒のサンプル…不完全ながら、光球も回収しております」
「ドイツ支部なら、分析も可能だな」
「ネルフ各支部が、それぞれ役割分担をする訳か」
「ものは言い様だな、碇」
「だが、一理ある…弐号機は許可しよう。参・四号機については協議してみよう」
「碇、あまり先走るなよ」
次々と消えていく男達。
碇の目が、眼鏡の奥でぎらりと光る。
――

次回予想。
ドイツのビルヘルムスハーフェンを出港し、一路日本へと向かうエヴァ弐号機。
突然の使徒襲来は、エヴァによる初の水中戦を強いる。
UN太平洋艦隊を巻き込んだ戦いの行方は?
弐号機って、どんな子?アイツもついて来ているの?バームクーヘン?
謎が謎になっていないこの展開。
次回「アスカ、襲来」
さぁ〜て、次回もまた読んでくださいね♪
んがッくっくっ。


153 :10:03/03/12 03:00 ID:???
>>124
ありがとうございます。
そう言って頂けると嬉しゅうございます。
零号機、まだ出ていませんね。しかも次はアスカ登場。
しばし推理してみてください、たぶん、予想通りです。
>>125
ふりがとうございます。
でも、リアクションが少ないので、本当にこれでよいのかと小一時間(略

さて。辛気臭いエピソードがさらに辛気臭くなってしまいました。
エロも笑いも、極端に少なくなってしまった今回。これからどうなるのでしょうか?
先日、他スレ「新世紀エバンゲリオン」OPのAAを見ました。
職人さんは黙して語らず。見習いたいものですが、性根が出たがりなので反省しきり。
アスカファンの皆様、次回はがんばってみますのでよろしくお願いします。


154 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:03/03/12 07:33 ID:???
おぉ!次はアスカ登場ですか、期待して待ってます。

155 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:03/03/12 11:51 ID:???
続き、キターーーーーーーーーーー

156 :山崎渉:03/03/13 16:53 ID:???
(^^)

157 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:03/03/15 02:34 ID:???
面白いスレですな
良スレ認定

158 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:03/03/19 07:42 ID:???
アスカ待ち保守

159 :10:03/03/24 01:17 ID:???
第伍話「アスカ、襲来」

ウジジジジジ…チーン!
トースターが、小気味良い音を立ててトーストを放り出す。
手早くバターを塗り食べているシンジ。
床ではペンペンが、焼き魚を飲み込む様にして食べている。
主はまだ寝ている…いや、お目覚めのようだ。
フスマが力無く開いて、脱力し切ったミサトが現れる。
髪の毛はボサボサ、寝ぼけマナコで、お腹をポリポリ掻いている。
「…おはようございます」
シンジの挨拶に、生アクビをひとつ。
「ぉはょぅ…」
蚊の鳴く様な声で返事をしたミサトは、ふらふらと冷蔵庫に向かう。
缶ビールを取り出し、お尻でトンと扉を閉めると、片手で器用にフタを開ける。
あまりの手馴れた動作に、ややしかめっ面のシンジ。
「んぐんぐんぐんぐ…ぷは〜ッ。くぅーッ!朝一番はやっぱコレよね!」
表情がイキイキとして来るミサト、朝のささやかな幸せなのだ。
「コーヒーとかじゃないんですか?」
すかさずシンジが突っ込む。
「日本人はね、昔っから朝はご飯と味噌汁、そしてお酒って相場が決まってんの!」
ムキになってミサトが抗議する。
「ミサトさんが、の間違いでしょ」
少しムッとなるミサト。シンジ、さらに追い討ち。
「だいだい、今朝の食事当番は、誰!でしたっけねぇ」
ぐっ、となるミサト。今日は火曜日だった。
「ミサトさんが、その年で未だに一人なの、判ったような気がします」
「悪かったわねガサツで」
「ズボラ、もです」
「うううっさいわねー!」
ピンポーン♪
あわや!というその時、チャイムが鳴る。


160 :10:03/03/24 01:18 ID:???
「ハイ。…あら、わざわざありがとう。ええ、もう少し待っててね」
余所行きの声で応対しているミサト。
「ミサトさん、そんな格好で出て行かないでくださいよ!恥ずかしいから」
鞄を取りに行きながらシンジが言う。
「ハイハイ」
茶化すように、手で胸元を隠してみせるミサト。
少し赤面するシンジ。
「お友達が待ってるわよ。急いで急いで」
ここぞとばかりにさっきの仕返しをするミサト。
むむぅ〜!となるシンジ、ドアを開ける。
「おっ早よー、碇クーン♪」
そう言いながらドアから首を突っ込み、室内を覗こうとするケンスケ・トウジ。
「でわ!ミサトさん、行って来まーす!」
朝からテンションの高い二人組。
「行ってらっしゃい」
柱の影から手だけ出してミサトが返事をする。
オトナの色気が漂う声は、サービスサービス♪
それに感動している二人組。シンジはなぜか不機嫌。
おやおや、嫉妬かな?
「早く行こうよ!」


161 :10:03/03/24 01:19 ID:???
新しいビールを取り出し、グッとあおるミサト。
「皮肉、かぁ。…ま、くだけて表情が増えてきたのは良い傾向ね」
そう呟くと電話をかけ始める。
「…今、ウチを出たわ。後のガードはよろしく」
先日の一件もあり、シンジへの『監視』はますます強化されていた。
「ケンカした相手が最初の友達、か。…青春よねぇ」
そう呟き苦笑すると、ミサトは机に向かい監督日誌を書き始めた。
「使徒との戦闘という非日常的な状況は、操縦者の精神に重度の負担となり、一時的では
あるものの、任務に支障を来すものと思われた。為に敢えて一週間という期間限定ながら
休養を取らせる事で、心身のストレスを除去する事とした。結果、やや安定した操縦者は
周囲との交流も改善しつつあり、今後の作戦任務に良い効果が期待できると推察する…」
「こっちは味方まで欺く仕事か…飲まずにはいられないわネ♪」
…言葉と表情がチグハグなんですけれど?

ネルフ本部・執務室。
ゲンドウが電話をかけている。
「…そうだ。その問題は既に委員会に話はつけてある。荷物は昨日佐世保を出港し、今は太平洋上だ。後は君の任務に専念してくれ…」

「ミサトさんが、今度の日曜日に予定あるか、聞いてくれって言ってたんだけど…」
学校への道すがら、シンジが切り出す。
「無い!有ってもミサトさんのお誘い優先や!」
「当然だね。で、何をするの?」
「エヴァ弐号機に会いに行って、ついでに豪華な船でクルージングだって」
「デートか?デートのお誘いなんか?」
「行く行く行く行く!これは見逃せないイベントだよ!」


162 :10:03/03/24 01:19 ID:???
どぼーん!ざざん!
ぎらぎらと光る水面に向かって飛び込んで行く、スクール水着の女生徒達。
照りつける日差しをものともせずに泳いでいる。
体育の授業である。
夏の体育と言えば、スク…プールで水泳、これ、最強。
周りからは黄色い歓声があがっている。
「いけヒロミ!」
「ヨシミ〜!」
「負けちゃえー!」
「負けたらアイスオゴリねー♪」
どうやら賭けの対象にされたらしい。…元気があってよろしい。
一方男共は、校庭でバスケットなどしている。おお、盛り上がっているなぁ。
「惜しいっ!」
「あぁ〜」
「うぉし。次、キメるぞ!」
そんな青春をよそに、プールサイドに視線が釘付けの控えの男子達。
「やだ、男子がこっち見てるー」
「H!」
「い・か・り・くーん♪」
「みんな、えぇチチしとるなぁ…」
トウジがぼそっと呟く。
「鈴原の目つき、なんかヤラしい」
「いやーん、キモい〜」
きゃーきゃー騒いではいるが、反応は微妙である。
お年頃ともなれば、異性に興味を持たれる事はある意味、カイカンである。
ま、マトモな相手、というのが前提ではあるが。
「センセ。何、熱心な目ェで見つめとんや?…綾波きゃ?ひょっとして」
トウジがシンジの視線を追う。
「ち、違うよ」
「まったまたァ。ア・ヤ・シ・イ・なっ」
ケンスケまでやってくる。


163 :10:03/03/24 01:20 ID:???
「あ、綾波の胸」
カオを紅潮させ、汗一杯のトウジ。
「綾波のフトモモ」
眼鏡を光らせながらケンスケが迫る。
「綾波のフ・ク・ラ・ハ・ギ!」
今度は二人で挟み撃ちしてくる。
「違うってば!」
「だったら何見てたんだよ」
「ワシの目ェはごまかされへんでェ」
なおも追求の手を緩めない二人。
「…どうしていつも一人でいるんだろう、って。それから、解んないけど他の女の子と
どこか違うな、って思って」
「…おい、聞いたか?」
「聞きましたがな。ホンマこのセンセっちゅー人はもう…」
「頭の中は綾波で一杯」
「綾波の身体の事はスミからスミまで知っている、と…」
「そんな事言って無いだろ!…違和感って言うのかな、これ?」
「髪は青、目は赤、肌は白、手足は長く、やや細めながらスタイルは良い。エヴァって
言う事を差し引いても、すごいよな」
「それに比べて委員長なんかは…違和感あって当然やろ?」
「そういうのとも違うんだけど…」
「…ま、友達ちゅうのンはおらへんな。一年の時、転校して来てから、ずっとあんなんや
しな。別に仲間はずれにしとる訳や無いんやが…」
「なんとなく近寄りがたいんだよ」
「性格、メチャメチャ悪いんとちゃうか?」
「クール、ってのとも違うんだよなぁ」
ピーッという笛の合図。
選手交代だ。待機組がコートに走る。シンジたちも慌てて立ち上がる。
「シンジの方が良く知っているんじゃないの?一心同体みたいなモンだし」
「あんまり、喋った事、無いから…」


164 :10:03/03/24 01:20 ID:???
バタタタタタタタタタタタタタタ。
洋上を飛ぶヘリ。機体にUNの白文字。
「ミル55d輸送ヘリ!こんな事でも無けりゃ一生乗る機会ないよ、まったく!持つべき
ものは友達、って感じ。なぁシンジ」
ビデオカメラを回しながら、興奮気味のケンスケが喋りかける。
だが、ローター音が邪魔で聞こえない。
「毎日、山の中じゃ、息苦しいと思ってね!たまの日曜日だから、でぇとに誘ったのよ!」
にこやかに、だが大声でミサトが答える。
「ええっ?ほな、今日はホンマにミサトさんとでぇとっすか?この防止、今日のこの日の
ために買ぉたんです!ミ、ミサトさんっっっ!」
今にも踊りださんばかりのトウジ。
「で、どこまで行くんですか?」
呆れ果てたシンジが面倒臭そうに聞く。
「もう着いたみたいね。左下をご覧くださ〜い♪」
「おおっ!空母が5、戦艦4、大艦隊だ!ホント持つべきものは友達だなぁ!」
「これがゴージャスなおフネ?」
「まさにゴージャス!さすが国連軍の誇る正規空母、オーバー・ザ・レインボー!」
ケンスケとトウジでは、やはり反応が違う。
「でっかいなぁ」
「飛行甲板長332.9m、同幅76.8m、満載排水量91487t、艦載機数約90機、最大速度30
ノット…」
ケンスケがデータを諳んじてくれる。
「貴重だ!軍事作戦中はこんな密集隊形は取らないんだ!あの大艦隊が、一堂にっっっ!」
テンション上がりまくりのケンスケ。
「良くこんな老朽艦が浮いてられるわねぇ」
ネルフ作戦部長のミサトにしてみれば、ただの過去の遺物なのだろう。
「いやいや、セカンドインパクト前のヴィンテージモノじゃあないですか!ま、解体費用
が無い、新造艦の予定が無い、ってのは事実ですけど」


165 :10:03/03/24 01:21 ID:???
オーバー・ザ・レインボー艦橋。
「フン、いい気なもんだ。オモチャのソケットを運んで来おったぞ、子供の使いが」
双眼鏡を覗きながら、吐き捨てるように呟く艦長。
「世界を救うのが子供とオモチャとは…。とんだコメディだ!」
「議会もあのロボットに期待していると聞いています」
「あんなオモチャにか!?バカ共め、そんな金があるのならこっちに回せば良いんだ!」
副長の意外な情報に、新たな怒りを覚える艦長。

着艦しているヘリ。
甲板上では運んできたソケットの積み下ろし作業が始まっている。
ケンスケが手のつけられないテンションではしゃいでてる。
恥ずかしそうなミサト。
背伸びをひとつしてきょろきょろしているシンジ。
やたら帽子を気にしているトウジ。
突然の突風がその帽子を持ち去る。
「わあああっ、せっかく今日のために買ぉたタイガースの帽子…止まれぇぇぇ!」
風に煽られていく帽子。
その先にミュールを履いた、スラリとした足が…。ぐしゃ。
「ああっ!」
「何すんねん!足、どけんかい!帽子を踏むっちゅう事は、頭を踏む、っちゅう事や!」
トウジがその足に飛びつき、帽子を取ろうとする。
しかしそんな事にはお構い無しに、足の主はミサトに話しかける。
「へロ〜ォ、ミサト。元気してた?」
「ま、ね。貴女も背、伸びたんじゃない?」
「そ。他の所もちゃ〜んと女らしくなってるわよ」
「このこのこのこの」
黄色いサマードレスを着た少女の足元で、トウジが悪戦苦闘している。
「紹介するわ。エヴァ弐号機、惣流・アスカ・ラングレーよ」
ミサトの言葉に、えっ?という顔を見せる三人。


166 :10:03/03/24 01:21 ID:???
両手を腰に当て胸を反らし、やや顔を上げ、見下すように視線を向けるアスカ。
ふふん、という様な口元の笑み。
高慢とはこういうことだ、という見本みたいな態度。
その時、突風が…ビュウウゥゥ…ばさっばささっ。
翻るアスカのスカート。
視線が釘付けの三人組。
ゆったりとした動きでスカートが落ちていく。
アスカの笑みはそのままだ、が。
いきなり上体を屈め、トウジの左頬にビンタ。次いでツカツカとシンジに近付きまた
ビンタ。最後にカメラを回していたケンスケに、カメラごと掌底!
「何すんねん!」
立ち上がったトウジが叫ぶ。
「見物料よ!安いもんでしょ!」
「そないなモン、こっちも見せたるわ!」
ジャージを引き下げるトウジ。だが、勢い余ってパンツまでズリ下げてしまった。
「きゃあああああああ!何すんのよヘンタイ!」
右手で目を覆うアスカ。
一瞬怯んだものの、すかさず左手でビンタ!
「ミサト!まさかこのバカが操縦適格者じゃないでしょうね!?」
「違うわ、こっちの子よ」
ミサトがシンジを紹介すると、アスカが値踏みする様に見つめる。
「…冴えないわね」
思わずムッとなるシンジ。


167 :10:03/03/24 01:22 ID:???
再びオーバー・ザ・レインボー艦橋。
「おやおや、ボーイスカウトの引率のお姉さんかと思っていたが、どうやらこちらの勘違
いだったようだな」
ミサトのIDを確認しながら皮肉を口にする艦長。
「ご理解頂けて幸いですわ、艦長」
平然としているミサト。
「いやいや。私の方こそ、久しぶりに子供達のお守りが出来て幸せだよ」
さらに皮肉を言う艦長。
意に介さず、書類をファイルケースから取り出すミサト。
「この度はエヴァ弐号機の輸送援助、有難うございます。こちらが非常用電源ソケットの
仕様書です」
つまらなさそうに書類を眺める艦長。
「フン。だがこの海の上で、あの人形を動かす要請は聞いていないが?」
「万一の事態に対する備え、と理解して頂けますか?」
「その万一に備え、我々太平洋艦隊が護衛しておる。…国連軍が宅配屋に転職したという
記憶は無いのだが?」
「某組織が結成された後だと記憶しております」
息の合った皮肉攻撃である。
しかしミサトは動じず、にこやかな笑みを保っている。
「オモチャひとつ運ぶのに大層な護衛だよ。太平洋艦隊勢ぞろいだからな」
「エヴァの重要性を考えると、足りない位ですが。…ではこの書類にサインを」
「まだだ。エヴァ弐号機はドイツ第3支部から本艦隊が預かっている。勝手は許さん」
背中を向けて艦長が建前論を口にする。
「では何時引渡しを?」
「新横須賀港に陸揚げしてからになります」
副長が答える。
「海の上は我々の管轄だ。黙って従って貰おう」
「了解しました。ですが有事の際は我々ネルフの指揮権が最優先である事をお忘れなく」
書類をケースに戻しながらミサトが引き締まった表情を見せる。


168 :10:03/03/24 01:23 ID:???
「なお僭越ながら申し上げますが、現在日本周辺は使徒出現により戦闘区域と規定されて
います。艦隊隊形や索敵・哨戒活動が些かアマいのではありませんか?」
「責任者は私だ。君如きの指図は受けん!」
「ネルフの作戦目標は使徒殲滅が最優先です。それをお忘れなく」
びっくりしているシンジ。見とれているトウジ。撮影に余念の無いケンスケ。
やれやれ、という表情のアスカ。
アスカとミサトは、ドイツ支部で付き合いがあったので性格もある程度は判っている。
「よっ。相変わらず凛々しいな♪」
「加持さぁ〜ん♪」
アスカの表情がパッと明るくなる。
反対にミサトの表情は見る見る曇っていく。
ゆっくり声のした方を見ると、ハッチで長身の男が腰を屈めて室内を覗いている。
長髪を後ろで括り、無精ひげを生やした男・加持リョウジ。
少しタレ目で表情はどこかニヤケている。
うげっ、という表情になるミサト。
手に持っていたファイルケースを落としている。
「加持君、君をブリッジに招待した覚えは無いぞ」
「それは失礼」
「でででではこれにて失礼いたします。横須賀港までの輸送をよろしく」
そそくさと艦橋を後にするミサト達。

八丈島近海。
着底している潜水艦・くろしお。
戦略自衛隊・海軍所属のこの艦は、海底に身を潜め情報収集活動をしている。
「前方に感有り」
「どこの潜水艦だ?」
「いえ、スクリュー音ありません。何か巨大なモノが海底を移動して行きます」
「探知・分析を急げ。緊急浮上用意」
「艦長、もしや…」
「あるいは、な」


169 :10:03/03/24 01:23 ID:???
空母内のエレベーター、スシ詰め状態のシンジ達。
「なんでアンタがここにいるのよ!」
「彼女の随伴でね。ドイツから出張さ」
「ウカツだったわ。十分考えられる事態だったのに…」
ミサトはなるべく離れようとしているが、身動きが出来ない。
シンジを自分とリョウジの間に入れて身を守る。
その代わりシンジはミサトに密着してしまう。
「ちょっとォ!触んないでよ!」
「ムチャ言うなよ」
ミサトとアスカが抗議の声を上げると、トウジとリョウジがすかさす答える。
ま、リョウジは「触っている」のだが…。
やがてエレベーターは目的の階に停まった。
士官食堂で休憩している一行。
テーブルには飲み物があるのだが、会話は無い。
仏頂面をしたミサトのせいなんだが…。
「今、付き合っているヤツ、いるの?」
場の雰囲気なぞ気にせずにリョウジがミサトに聞く。
「それが貴方に関係ある訳?」
「あれ?つれないなぁ」
にこやかに話しながら実は、テーブルの下でミサトの足にチョッカイ出しているのだ。
つま先でこつこつ、甲でスリスリ。…足、長いなぁ。
ミサト、黙って睨みつけながら迎撃。
訝しむアスカ・トウジ・ケンスケ。
「君は葛城と同居しているんだって?」
「え、ええ」
「彼女の寝相の悪さ、治ってる?」
リョウジが意外な話をシンジに振る。
それを聞いて愕然とするアスカ・トウジ・ケンスケ。三人共、同じ姿勢で固まっている。
ふーん、君達はこの意味が判ってるんだね。
「ななななに言ってんのよッ!子供がいる時にッ!」
顔を真っ赤にしてテーブルを叩くミサト。


170 :10:03/03/24 01:24 ID:???
「相変わらず、か。碇シンジ君」
「え、ええ。…あれ?どうして僕の名前を?」
「そりゃあ知ってるさ。この世界じゃ君は有名だからね。何の訓練も無しに、エヴァを実践で動かした操縦適格者」
「いやそんな、偶然です」
リョウジとシンジの会話でやっと石化から回復したアスカが、シンジを見つめている。
「運も実力のうちさ。じゃ、また後でな」
「はい」
そう言うと領事はアスカを伴って食堂を後にした。
「悪夢だわ、そうに決まっているわ…」
頭を抱えて呟くミサト。

艦外・左舷通路上のリョウジとアスカ。
アスカは手すりに身体を預けて遊んでいる。…いや、股間を擦り付けたりはしてないよ。
ジッポライターでタバコに火を点けるリョウジ。
鼻をひくひくさせるアスカ。
「加持さん、タバコ変えた?」
「いや、どうしてだい?」
「いつもの匂いじゃ無いもの。すごく重厚な、香りって言うべきかしら?」
「鼻が良いな。『ネ』でも目指すかい?」
「『ネ』って驚異的な嗅覚を持つ調香師のこと?ガラじゃないわ」
リョウジはアスカの鼻先にジッポをかざす。
「燃料のオイルと一緒に香水を混ぜてある。これで火を点けると、その香水の香りが広が
ってくれるのさ。長い船旅で潮の香りにも、ちと飽きたんでね」
「へぇ、おっしゃれー」
「で?どうだ、碇シンジ君は?」
「つまんない子。あんなのが私のパートナーだなんて、ゲンメツ」
「しかしいきなりの実践で彼のシンクロ率は40を軽く超えてるぞ?」
「ウソ…」
その数値にアスカは軽いショックを受けた。
「あいつ、ああ見えてテクニシャンなの?」


171 :10:03/03/24 01:25 ID:???
再び士官食堂。
「しっかしいけ好かん艦長やったな」
「プライドの高い人なのよ。皮肉のひとつも言いたくなるんでしょ」
「にぎやかで面白い人ですね、加持さんって」
「昔からなのよ。あのぶぁくぁ!」
リョウジの話になるととたんに不機嫌になるミサト。
困った顔のシンジとトウジ。
ケンスケは既に甲板に出て単独行動をとっている。
ある程度の英会話も可能らしく、デッキクルーに話しかけている。
彼はどうやら「トーキョースパイキッド」としてこの分野では有名人らしい。
「せやけど、ケンスケがあそこまで英会話が出来るとは」
トウジが呆れ&驚いている。
「アメリカにもメル友がいるらしいじゃない?」
うぇぇとなるトウジ。
「あいつ、ケッコウいろいろやっとんなぁ」
そこにツカツカとアスカが近付いてくる。
「ちょっと付き合って」
アゴを廊下に向けて促すアスカ。
「う、うん」
強気のお誘いには逆らう術を知らないシンジであった。
「アスカ。入港前に巨大化しといて頂戴。エヴァとして入国するのよ」
「判ったわ。ホラ、早く来るのよ」
やれやれという顔で見送るミサト。そこに艦内放送が入る。
「ネルフ本部の葛城一尉殿、至急お近くのお電話までおいでください。繰り返します…」
その艦内放送に、ミサトは嫌な予感を覚えた…。

『なんですって?この艦隊の進行方向で使徒出現ですって?』
『詳しい状況はそちらに送りますから対策を立ててください。お願いします。以上』
予感的中。さっそくあの艦長とケンカしなくては…。


172 :10:03/03/24 01:26 ID:???
「…所詮、初号機はテストタイプ。訓練無しのあなたなんかにいきなりシンクロするのが
その良い証拠よ」
「…」
「けど私は違うわ。私こそ実戦用に造られた世界初の、本物のエヴァンゲリオンなのよ。
制式タイプのね」
アスカがシンジに対して、如何に自分が優れているかを力説している。
シンジはと言えば、アスカのむき出しになった肩や腕や胸元をチラチラ見ている。
「…人の話を聞かないで、ナニ見てんのよ」
「あ、う、うん。綺麗な肌だな、って」
「アンタ、バカぁ?」
実はシンジが見とれていた理由は別にある。綾波と比べていたのだ。
綾波とクラスの女子との違和感の原因。
それを同じエヴァであるアスカから探そうとしていたのだ。
「ヴィィィィィィィィィッ。ヴィィィィィィィィィィィィッ。」
「総員、第二種戦闘配置!デッキクルーは発艦準備急げ!対潜・対艦戦用意急げ!」」
「何?何?」
「何かが始まった?」
「…チャ〜ンス♪」
アスカがバッグの中からピルケースを取り出す。
そして薬の色を確かめて一粒を飲み込む。
そしてバッグを持つと階段へ走って行く。
「あっ、待ってよ」
「…ついて来たら殺すわよ」
追いかけようとしたシンジをアスカが睨みつける。
階段の踊り場でボディスーツに着替えるアスカ。下着も全て脱いでいる。
階段の影ではシンジがそーっと覗いている。そしてある事に気がついた。
「…ねぇ、聞きたいんだけど」
はっ!となり、振り向くアスカ。
階段の影から顔を覗かせているシンジを見つけ、あっと言う間に顔が真っ赤になる。
あわてて胸を隠してしゃがみ込む。白い肌に真紅のスーツ。耳たぶまで赤いんだコレが!
「きゃあああああ!覗かないでよっ!エッチィ!」


173 :10:03/03/24 01:27 ID:???
「ご、ごめん」
「なんで男の子って、ああバカでスケベなのかしら!」
質問するキッカケを失って、溜め息をつくシンジ。
やがて真紅のスーツを身にまとったアスカが上がってくる。
シンジを睨みながら、同色のプラグスーツを差し出す。
「?」
「私に乗りたいんなら、これを着なさいよ」
「え?」
「ナニが起こっているのか判らないけど、それを片付ける手伝いをさせてあげるのよ!」
「…それって、君がやりたいだけなんじゃ?」
「つべこべ言わずに着なさい!そして出撃よ」
「どうやって?」
「プロダクションモデルの実力、見せてあげるわ」
アスカはシンジを急がせて改造タンカーへと向かった。

LCLで満たされたタンカー内部。かろうじて本部のケージに似た施設がある。
まるで禊ぎをするように、アスカがゆっくりとLCLに入って行く。
「今から巨大化するからしばらく待機してて」
そう言うとLCLの中に身を沈める。
待つことしばし。水面に人のシルエットが現れる。少しずつ大きくなりながら。
「たぶん、こんなものね。じゃあそこにあるエントリープラグに入って」
「なんかすごく窮屈そうなんだけど…」
「あんた、バカぁ?清らかな乙女がそんなに太いプラグを挿入できると思っているの!?」
「君、処…」
「ああああんたバカぁ!?信じらんなーい。初対面の女の子にそんな事聞くなんて!」
「ごっごめんよ」
「…まぁいいわ。その代わり、コキ使ってやるんだから。エントリー・スタート」
アスカの言葉を合図にしたかの様に、設備が動き出す。
そしてシンジとアスカの、初の結合が行われる。
「アスカ、イクわよ」


174 :10:03/03/24 01:27 ID:???
そう呟くとゆっくり目を閉じる。プラグの先端が下腹部に当たる。
「鋼鉄の処女」が、そろりとアスカの秘肉を押し広げる。
ゆっくりと、しかし止まる事無く、確実にプラグはアスカの肉体を穿っていく。
「あッ…く、くぅうッ」
思わず声を漏らすアスカ。
「あ、あの、もっと全身の力を抜いた方がいいと思うよ」
「か…たん、に…言う…ね」
アスカのあえぎ声を聞いていたシンジが、ポツリと呟く。
「…勃ってきちゃった」
ぷっ。思わず噴き出すアスカ。腹筋が一瞬収縮し、そして弛緩する。
ぐりっ。ぐりぐりっ。容赦無くアスカの中に侵入するプラグ。
「あッ、あああッ!」
挿入完了。しばしの静寂。アスカの荒い息だけがタンカーに響いている。

「…というわけで使徒が接近していると思われます。よって、今後太平洋艦隊はネルフの
指揮下にて使徒殲滅作戦に参加します。よろしいですね?」
「何の根拠があってそんな事が言える!」
「では、貴艦隊が保有する対潜哨戒機で探知してみてはいかがですか?」
「言われなくても…」
「一刻を争います。当艦隊に甚大な被害が出てからでは遅いと思いますが?」
「判っている!」
こうして太平洋艦隊は初の使徒戦に向けて進んでいく。

「この緊張感!この臨場感!この活気!この殺気!男なら。男ならーッ!」
どうしようもなくなってきたケンスケである。
今、カタパルトを使用してF/A18戦闘機が発艦しようとしている。
ヘッドセットを着用したデッキクルーが大声で指示を伝えている。
発進許可が下りる。デッキクルーが鋭く腕を振る。
がくん!と機体を震わせてから、一瞬の後に甲板を飛び出して行くF/A18戦闘機。
周りに目を向ければ、何時の間にか艦隊が分散して艦隊行動をとっている。
戦いの準備が着々と進む。


175 :10:03/03/24 01:31 ID:???
『水中を高速で移動する物体を発見。5分後には艦隊と接触すると思われる』
哨戒機からの無線連絡が入る。
「なんという速度だ!?」
「これが使徒なのでしょうか?」
「判らん。が、対応を誤る訳にはいかん」
艦橋で艦長と副長が今後の対応を協議している。
「ちわー。ネルフですが敵の情報と的確な対処方法はいかがっスかー?」
ミサトが人の悪い笑顔でブリッジを覗き込んでいる。
艦長がいまいましそうに舌打ちをしながら敬礼で迎える。
「あなたの指摘した展開になった。事ここに及んではつまらん意地は有害だ。貴殿の指揮
下で作戦を遂行したい」
「了〜解ぃ。」
「まず何をする?」
「この艦隊にNN爆雷はありますか?」
「ポーシアに2発。後は…」
「それだけで結構です。それが我々の切り札です」
ミサトが艦長の発言を遮った理由は、軍事機密の、必要以上の暴露をさせない気遣いだ。
「今回の作戦名は『ヴェニスの商人作戦』とします」
…ネーミング・センスは今ひとつだなぁ。
「具体的には?」
「ポーシアは一時的に戦線から離脱し、安全を確保します。本隊は可能な限りの通常攻撃
と回避運動によりエヴァ起動までの時間を稼いでください」
「実戦に投入するのか!?」
「いつかは訪れる初陣です。その能力は十二分にありますのでご安心を」
「その後は?」
「エヴァによる近接戦闘を行い使徒を捕捉。しかる後そこに無人のポーシアを突入させて
自爆させ、使徒を殲滅させます」
「エヴァもろとも、か?」
「武運があれば生き残れます。ネルフの作戦目的は使徒殲滅、そうお話したはずですが?」


176 :10:03/03/24 01:32 ID:???
「しかしエヴァ弐号機の装備はB型装備。水中戦は無謀では?」
「足場は確保させて頂きます」
そう言ってミサトは床を踏み鳴らしてみせた。
艦長と副長は顔を見合わせる。ミサトの提案の意味が判ったのだ。
しかし、使徒殲滅の為には、子供の命さえ危険にさらす覚悟に、何も言えなかった。
「…初回の使徒戦では、NN地雷1発使用して効果が無かったと聞いたが?」
「その場合は、当艦隊が有する全てのNN爆雷を使用してください」
「執念を感じるな。了解した。準備を急ぐ」
小さく敬礼すると慌しく支持を出していく。
「オセロより入電。エヴァ弐号機、起動しています!」
「何ッ!?」
ミサトがすかさず無線を引ったくり、確認する。
「アスカ?シンジ君は乗ってるの?」
「もちろん。で、何があってどうしたらいいの?」
「ここに向けて使徒が接近中なの。甲板の整理が済んだらここに来て」
「判ったわ。無線はどのチャンネルなの?」
「当然、2chでしょ」

「全機、発艦急げ!目標を攻撃後は、それぞれ指定された空母に帰投し指示を仰げ!」
オーバー・ザ・レインボーの艦載機が慌しく発艦していく。
「掃除は済んだ。勝利の女神様を呼んでくれ」
「アスカ、ご招待されたわよ。いらっしゃい」
「了解」
改造タンカーの上に、颯爽と立ち上がるエヴァ弐号機。シートをマントの様にしている。
すっ、としゃがみ込み、空高く舞う。
手近な艦艇に飛び乗り、踏み台にしていく。
一隻、また一隻…。艦長の顔が苦渋に満ちていく。
「アスカ、着艦しま〜す♪」
ズズ…ン。
オーバー・ザ・レインボーの甲板に着地した弐号機は、すぐさま外部電源を接続する。
「準備オッケー。いつでもいらっしゃい」


177 :10:03/03/24 01:33 ID:???
その頃、既に戦端は開かれていた。
第一波攻撃隊が次々に魚雷を投下しているが、損傷を与えている気配が無いのだ。
『通常魚雷では歯が立ちません!』
『構わん、こちらに誘導できればそれでいい!怯むな!』
「対空兵器を所持していないのが、せめてもの救いですね」
「では攻撃手段は何だと思うね?」
「おそらくは体当たりなどの肉弾戦かと…」
「全長200m以上の化け物とレスリングをするのかね?あんな女の子が?」
他に方法がありますか?と言おうとした時、報告が入る。
『右舷2時、目標、急速接近中!攻撃か…』
「シンベリン、沈黙しました!」
「タイタス・アンドロニカス、目標捕捉できません」
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ
ズン…ズズ…ン
右舷から黒煙が上がり、破壊された艦船がゆっくりと沈んでいく。
「テンペスト、機関停止!」
「…ここまで常識はずれとは…」
艦長が頭を抱える。
「ヘンね、無秩序な破壊だわ。まるで何かを探しているみたい…」

リョウジに割り当てられた個室。
ブラインドを指で広げ、戦況を見ながら電話をしている。
『こんな所で使徒襲来とは、ちょっと話が違いませんか?』
『そのための弐号機だ。最悪の場合、君だけでも脱出したまえ』
『判っています』
電話を切ると、荷物を持って部屋を出る。


178 :10:03/03/24 01:33 ID:???
「アスカ、シンジ君!判ってると思うけど…」
「水中に落ちるな、でしょ?」
「万が一水中落下しても、ケーブルの長さは1500mあるから落ち着いて対処してね」
「あの、ミサトさん、僕、泳げないんですけど…」
「!」
「アンタは座ってりゃいいのよ。私に任せときなさい!」
「頼むわよ、アスカ」
「目標、来ます!」
水中から飛び出して来る使徒。肥満したエイのような形だ。
甲板上の弐号機に飛び掛っていく。
がしっ!
使徒の身体を抱きとめる弐号機。その重さで傾く空母。
足を右舷に向けて踏み出し、踏ん張る。
「こンちくしょォォォォォッ!」
重心を移動させて、船の傾斜をも修正しているのだ。
バキッ!
踏ん張った場所が悪かった。
艦載機用のエレベーターが、その重量に耐え切れず壊れる。
足場が不安定になり、バランスを崩す弐号機。
「わわわ」
「きゃ」
ざっばーーーーーん!
上がる水しぶき・押し寄せる大波・揺れる艦艇。
「落ちたぞ!」
「おおおおおぼ、おぼおぼれれれれれ」
「シンジ君、落ち着きなさい!あなたは元々LCLの中で溺れている様なものなのよ」
「…あ、そうか…」
「アスカ、胸元の酸素マスクを出して。しばらくはそれで持つわ」
「り゛ょ゛―がい゛」
マスクからごぼごぼと上がる気泡を、はむはむと取り込むアスカ。
「来た!」


179 :10:03/03/24 01:34 ID:???
海底に沈んだ廃墟の上を、使徒が悠然と泳いでいる。
弐号機の左側から近付いているが、弐号機の動きが鈍い。
迫る使徒。立ち泳ぎをしているような弐号機。
がばぁぁぁぁぁ!
使徒の口が大きく開かれ、弐号機を一呑みにする。
「ええええええええッ!?口ィ?」
「使徒だからねぇ…」
「アスカ、無事?」
少し考えたアスカが答える。
「使徒の体内に潜入。内部より使徒殲滅を遂行する」
「食べられたんじゃないの?」
「うッさいわね!」
使徒は再び動き始める。
ケーブルが延び切り、衝撃がオーバー・ザ・レインボーを襲う。
艦首がゆっくりと向きを変える。
使徒に引っ張られているのだ。
「ああああああッ!Yak-38改!」
何時の間にか艦橋に戻ったケンスケが甲板を指差す。
エレベーターから飛び立とうとしている機体の後部座席には、リョウジが乗っている。
「おーい葛城ィ、届け物があるんで、俺先に行くわぁ。じゃ、後よろしくぅ〜」
「加〜持ィィィィッ!」
「逃げた…んか?」
艦首がまたゆっくりと向きを変える。
使徒が水中で暴れているのだ。
「この手ごたえ、まるで釣りやな」
トウジが呑気に呟く。
「…釣り。それだわ!釣りよ!作戦修正します。ポーシアに連絡を」


180 :10:03/03/24 01:35 ID:???
「この様に電源ケーブルを巻き上げつつ、オーバー・ザ・レインボーにて使徒を牽引し
引き寄せます。この時、戦艦コンゴ・ケンタッキーの火力で両側より圧力を加えます。
その後、エヴァにより開口した使徒の口腔内に自沈させたボーシアが突入、NN爆雷を
爆発させ使徒殲滅を図ります。何か質問は?」
「口が開かなければ?」
「残りのNN爆雷を周囲に配置し、一斉に爆発させます」
「では、その準備も進めてよいですな?」
「万全の体制をお願いします」
「うむ。残存艦艇に伝達急げ」

「アスカ、作戦を説明するわ。至ってシンプルよ。こちらのカウントダウンに合わせて
使徒の口を開ける事。そこにNN爆雷を積んだ船が突っ込み自爆。巻き込まれないでね」
「開けられなかったら?」
「太平洋艦隊が所有する全てのNN爆雷を周囲から投下、使徒殲滅を果たします」
「りょ〜かい♪見せ場は私がもらったわ」
「頼んだわよ。シンジ君、アスカとのシンクロ、よろしくね」
「ハ、ハヒ…」
「作戦、再起動」
「ケーブル巻取り開始」
「オーバー・ザ・レインボー、針路105」
「コンゴ、ケンタッキー、両翼に展開」
「ポーシア、起爆装置点検後に自沈準備開始せよ」
「ミランダ、ラヴィニア、イモージェンはNN爆雷の投下準備急げ」

「さァ〜てオイシイ所を頂くわよぉ」
「は、早く開けようよ!」
「あんたバカァ?カウントダウンに合わせて、って命令でしょ?」
「でも、どのくらいの力が必要か、判らないじゃないか!」
「私が本気を出せば、オチャノコサイサイよッ♪」
「じゃ、プロダクションモデルの力、見せてよ」
「ふふん、まーかせてッ」


181 :10:03/03/24 01:38 ID:???
「開かないね」
「…アンタ、自分の役割を判ってるの?」
「?」
「私を気持ち良くさせて、能力を最大限引き出すのがアンタの仕事でしょう!」
「どうやって?」
「女の子の口から言わせないでよッ!デリカシーが無いわね!」
「アスカのむき出しになった肩や腕を舐めるように見ていた男は、やがてその後ろに回り
幼い胸の膨らみがつくる谷間を眺めた。サマードレスの下には何も身につけていないらし
く、青い果実のような乳房の形や、野苺にも似た突起がはっきりと分かる
次第に高ぶる気持ちを鎮めようと男が深呼吸をする。しかし、アスカの体臭がまともに男
の本能を刺激した。きちんと手入れされた髪からは子供らしいシャンプーの香りが。身体
からはあっさりとした、石鹸の香りが。そして、これは幻臭だろうか?…紛れも無い、大
人の女…いや、メスの匂いがしたのだ。
男の身体が電撃を食らったように痺れ、痙攣する。熱いモノが身体中を駆け巡り、一点に
集中する。ズボンの中でむくむくと頭をもたげ、熱く、硬くなる、欲望の塊。
まだだ。ここは電車の中だ。この少女を汚すにはここではまずい…。
男は自分にそう言い聞かせたが、欲望を全て抑えることは出来なかった。少しずつ身体を
近付けて行く。幸い、周りは満員でさほど不自然では無い。手はまだ触れない。人に押さ
れた勢いや、電車の揺れを利用してじりじりと近付く。今はもう身体が密着してアスカの
体温がはっきりと分かる。新陳代謝が高いのだ。背中も、腰も、臀部も、太腿も、衣服
を通してさえはっきりと分かる。
突然、電車が揺れる。男は足を広げ、踏ん張るフリをしながらアスカの臀部に股間を押し
付けてみた。身長差があるので、臀部の割れ目には当たらなかったが、その骨盤の辺りに
押し付ける。少し腰を振ってみる。硬い骨の感触が亀頭に伝わる。失礼、と挨拶してから
身体を離し、次の機会を狙う。駅に着いたが、アスカはまだ降りる気配が無い。大勢の客
が乗り込み、車内はさらに窮屈になった。ぐいぐいと押されて男はドアに左手をつく。
形としては、アスカを乗客の圧力から守ったことになる。振り返るとアスカは、ありがと
う、と男に礼を言い、にっこりと微笑む。まっすぐに見つめられてどきまぎしながら視線」


182 :10:03/03/24 01:38 ID:???
「あッあッあんたバカァ!?だだだ誰がエロ小説の朗読をしろって言ったのよッ!
しかもどうして私が出て来て、しかも痴漢なんかにッ!」
「ご、ごめん…勃っちゃった…」
「サイッテー!もう、信じられなーい!」
「二人共、準備はいい?60秒後には口を開いていてね!作戦開始!」
「あぁん、気持ちの準備がぁ〜ッ!どきどきしてるのにーッ」
「僕は冷静だ僕は冷静だ僕は冷静だ」
「アスカ、イキまーす!」
「開け開け開け開け開け開け開け開け開け開け開け開け開け開け開け開け開け開け開け」
「開け開け開け開け開け開け開け開け開け開け開け開け開け開け開け開け開け開け開け」
シンジとアスカが同じ言葉を繰り返す。
「努力の努の字はぁー」
「女のマタの力と書くゥゥーーーーーッ!こンちくしょーーーーーーッッッ!!!」
アスカが叫ぶ。
ゆっくりと使徒の口が開いて行く。
「開いた!」
「突っ込めーーーッ!」
ポーシアが、使徒の歯を砕きながら突っ込んでいく。
「逃げよう」
「言われなくてもッ!」
船体が使徒の体内に入ったのを確認して、アスカは手足を踏ん張って使徒から飛びすさる。
次の瞬間、使徒の体内で爆発が起こり、使徒の身体が膨張、やがて破裂した。
水中衝撃波が弐号機を襲う。
「ひーーーーー」
「上は、どっち?」
衝撃波により、三半器管が一時的に冒されたアスカが四方を見回す。
ザバーーーッッッ!
水中から、空中に放り上げられたアスカは空母の甲板を視認すると身体を捻る。
ダダン!
甲板上に、這いつくばるようにしてアスカが生還した。


183 :10:03/03/24 01:40 ID:???
新横須賀港。
無傷な艦船がほとんど見当たらない、太平洋艦隊。
それを見上げているリツコ。
「…またハデにやったものね」
「水中戦も考慮しとくべきだったわ」
「あら珍しい。反省?」
「ちょっち、ね。でも、ま、貴重なデータも取れたんだし」
「そうね。…確かにこれは貴重だわ。シンクロ率の記録更新だわ」
「たった7秒間じゃ火事場のバカ力でしょ」
「数字は雄弁だわ。今後の研究が楽しみだわね」

ネルフ本部・執務室。
「いやはや波乱に満ちた船旅でしたよ。…やはりコレのせいですか?」
碇の前で、リョウジがトランクを開けている。暗証番号の入力、キーロックの解除…。
パチンという派手な音とともに、ぶ厚いフタが開く。
「既にここまで復元されています。特殊硬化ベークライトで固めてありますが、生きてい
ます。間違いなく」
トランクの中にある、色つきガラス。
その中に封じ込められた、人間の胎児の様なモノ。
「人類補完計画の要ですね」
「そうだ。最初の人間、アダムだよ」


184 :10:03/03/24 01:41 ID:???
市立第壱中学校。2-A教室
休み時間に先日の話をしているシンジ達。
「ホンマ、顔に似合わずイケ好かん女やったなァ。」
「まぁ俺達はもう会うことも無いさ」
「センセは仕事やからしゃーないわな。ホンマ、同情するで」
どうやらアスカについての感想らしい。
チャイムが鳴り、老教師が入ってくる。
「えー、今日は皆さんにお知らせがあります。このクラスに転校生がやってきます。
仲良くしてください。…校長先生とのお話が済み次第、挨拶に来ます」
どよめく教室無い。イヤな予感のシンジ。
「えー、彼女はいわゆる帰国子女でありまして、大学を卒業していながらも、日本語の
勉強の為にこのクラスに転入してきます。どうかよろしく」
ざわめきが大きくなっていく。今日も授業にはならないだろうなぁ。
突然、教室の扉が開く。
「失礼ちまちゅ」
赤いドレスを着た、5歳くらいの女の子が入ってくる。
「やぁ、来ましたね。はい、こちらに来て」
一旦、教卓の近くに立ったものの、小さいので全身が見えない。
最前列の机まで行って、使っていない椅子を持ち上げる。よいしょ、よいしょ。
その椅子を黒板の前に置き、しとやかにその上に立つ。靴をちゃんと揃えるのは当たり前。
くるりと向きを変え、黒板に向かうと綺麗な筆記体で名前を書いていく。
チョークを静かに置くと、生徒達に向き直り自己紹介をする。
「惣流・アチュカ・ラングレーでちゅ。よろちく」
そう言うとチビアスカは、スカートの裾をつまみ、軽く持ち上げながら左足を引いてクロ
スさせ、腰をゆっくりとかがめてお辞儀をした。
さらさらと流れ落ちる長い髪。
時の止まった教室。
…やがて起こる、歓声と嬌声、そして、アスカコール。
その騒ぎを聞きながら、お辞儀をしたままのアスカがほくそえむ。
「災い転じて福と茄子。後はオトナの私を見せればカンペキね」


185 :10:03/03/24 01:42 ID:???
次回予想
心がてんでばらばらのアスカとシンジは、使徒にこてんぱんにノサれてしまう。
カンペキなユニゾンを目指して立てたミサトの計画は、レイも巻き込んでしまう(ハズ)
次回「瞬間、心、重ねて」
さ〜て来週は、間に合うのか?

>>124
前回はあんなコメントを書きましたが、もしこの方がものすごいアイディアを持っていた
ら「お前の発想はその程度か?」と笑われてしまう結果になるのですなぁ。
恥ずかしいなぁ。
>>154
さて、アスカ登場です。お待たせしましたが、どうでしょうか?
>>155
早いレス、ありがとうございます。今回はいかがなものでしょうか?
>>156
(^^;)
>>157
どうぞ存分にお楽しみください。力尽きるまでがんばります。
>>158
保守、ありがとうございます。…もしや>>154の方では?

さて。話が進むにつれて、分量と時間が増えております。
こんなことで完結させることができるのか、自分でも分からなくなって来た今日この頃。
定期的に更新されている方、すごいですねぇ。
仕事の方はといえば、四月以降はかなりのハードスケジュールになりそうです。
どうなることやら〜。


186 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:03/03/24 05:09 ID:???
瞬間、心、重ねてってタイトル捻ってな〜い
残念

187 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:03/03/24 10:01 ID:???
まぁがんがれ

188 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:03/03/24 10:06 ID:???
10さん乙!

>>186
文句言うな。

189 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:03/03/24 14:22 ID:???
捻らないタイトルはいらない

190 :10:03/03/24 21:37 ID:???
>>186.>>189
どうもすみません。ま、次回予想、ということなので次回までに
きちんと考えておきます。
>>187
はい〜がんばります。
>>188
というわけですので、ここはひとつ穏便に。
タイトルひとつにも興味を示してもらえるのなら
はりきって考えますよ、私ゃあ。
応援、ありがとうございます。



191 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:03/03/24 22:24 ID:???
今までタイトルだけが楽しみだった
あとはおまけ

192 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:03/03/26 23:59 ID:???
アスカでてキタ━━(゚∀゚)━━!
シンジとなんかいいコンビ
俺は本編楽しみにしてるよ

193 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:03/04/04 22:49 ID:???
>>1
良かったな。

194 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:03/04/05 09:17 ID:???
レイとアスカは電源切れると動かなくなるんだろうか

195 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:03/04/11 15:53 ID:???
イって動けなくなるんじゃないか?(w

196 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:03/04/15 08:33 ID:???
保守

197 :10:03/04/15 20:54 ID:???
第六話「瞬間、心 重ねたら、…わはは」

アスカが転校して来る前日。
ネルフ本部で「ちょっとしたアクシデント」が発生した。
Sモルモンを投与されたアスカが、幼児化してしまったのだ。
「どうちてくえゆのよッ!こんな姿、加持たんに見ちぇられない…」
泣きながらアスカがミサト達に訴えている。
なんとかなだめようとしているミサト。眉間にシワを寄せて何かを考えているリツコ。
「どうしたんだ、アスカ?」
リョウジが部屋に入ってくる。
その声に気付き、サッとミサトの影に隠れるアスカ。
「泣いてないでこっちにおいで。さぁ」
すい、と片膝を付くと両腕を広げてじっと待つリョウジ。
ミサトの影からその様子を見ているアスカ。
「絶対、笑わない?」
「笑うもんか。さぁ、おいで」
まだ渋っているアスカ。ミサトの後ろでもじもじしている。
「やれやれ、ご機嫌ナナメかな?」
そう言って立ち上がろうとした瞬間、チビアスカがリョウジに飛びついた。
「おっと。どうした?随分可愛くなったなぁ」
アスカを抱っこしながらリョウジが優しく言う。
「お薬を飲んだら、身体が縮んじゃったの。ろれつも回らないのぉ」
半ベソのアスカが、甘えた声でリョウジに経緯を説明する。
ミサトに視線を送るリョウジ。肩をすくめて見せるミサト。思考を巡らせているリツコ。
「よーし、じゃあしばらく俺と遊ぼう。その間に、りっちゃん、頼んだよ」
アスカを肩車しながら、リョウジがリツコにウィンクしてみせる。
「ジオフロントには地底湖もあるんだ…」
そう言いながら出て行くリョウジの上で、アスカが二人にアカンベェをしている。
ニガ笑いの表情で手を振りながら、ミサトが問う。
「で、この原因は何かしら、赤木博士?」


198 :10:03/04/15 20:55 ID:???
「アスカのトラウマが原因だと思うわ。あの子、あの年齢の時に母親が自殺しているでし
ょう?初の使徒戦での緊張が、薬物作用に影響を与え、アスカを退行させた…。一番簡単
で分かり易い説明ね、陳腐だけれど」
「そんなことが起こり得るの?」
「現実に起こっているでしょう?」
「そりゃそーだけど…」
釈然としないミサトが、もごもごと口を動かしながらドアの方に視線を向ける。
「…あるいは、彼女が無意識にそれを望んだのか…」
リツコの呟きはミサトには届かなかった…。

肩車をしたまま、ジオフロントの森を散歩するリョウジとアスカ。
「ホントにわたち、カワイイ?」
アスカがリョウジの髪の毛を引っ張ったり、ぐしゃぐしゃしたりしながら聞く。
「ああ。可愛いよ。…アスカが子供の頃を俺は知らないからな。ちょっと得をしたよ」
「ホントにホント?学校に行っても笑われない?」
「もちろんだ。おしとやかに振舞っても、生意気を言ってもその格好なら大丈夫だ。それ
にインパクトが強いし、元に戻った時の効果も抜群だろ?」
「ホントにホントにホント?」
リョウジの頭にお腹を押し付けて身体を丸め、上から覗き込むアスカ。
「ああ、保障する」
「じゃあ、指きり」
すっ、と右手を出すアスカ。
リョウジの右手の小指がそれに絡まる。
「指きりげんまん ウソついたらケッコンしてもーやう♪」
「…おいおい、アスカ」
「ゆーびきったぁ!」
パッと指を離してニィ〜と笑うアスカ。
「やれやれ、油断も隙も無いな」
ニガ笑いのリョウジ。その無精ひげをジョリジョリと弄ぶアスカ。
「小さくても女性は女性、か。日々是勉強也」
リョウジの小さな呟きもアスカには聞こえなかった。


199 :10:03/04/15 20:56 ID:???
リョウジの読みは当たり、学校でのアスカの評判は高く、結婚の約束は消滅した。
リツコは、カウンセリングと投薬量の調整により一週間でアスカの外見を復旧した。
ミサトは今後の作戦の為に、アスカとレイの、シンジとのシンクロデータなどを分析して
いる。
リョウジは、仕事らしい仕事もせず、アスカ達と遊んでいる、ように見えた。

市立第壱中学校。
「おい、見たかよ」
「見た見た!」
「何を?」
「知らねーのか?あの外人の転校生」
「?」
「2−Aに転校して来たんだよ、先週」
「かっこいいよなぁ」
「惣流・アスカ・ラングレーって言うんだってさ」
「ゲロマブ」
「帰国子女だろ?やっぱ、ススンでんのかなぁ?」
「バカ言え。あの可憐な瞳を見ろ!あの穢れ無き瞳を!まるで天使じゃないか…」
「ありがたやありがたや」
「よって我々はここに『アスカ親衛隊』を結成する!」
「おぉ!」
「おーい。アスカちゃんの新しい写真が出来たってさ。体育館裏で売ってるぞ」
「何ッ!?許せん!我らの天使を商売道具にするとは!」
だがしかし、周りに居た男子生徒は皆、走り去っていた。
「…オレも買いに行くか…」


200 :10:03/04/15 20:57 ID:???
体育館裏。
アスカの写真を売りさばいているケンスケ・トウジ。
一枚30円で飛ぶように売れている。
制服姿はもとより、体操服姿やスクール水着姿もある。あー、着替え中の写真も…。
「…猫もシャクシもアスカ、アスカ、か…」
「皆、平和なモンや。写真にあの性格はあらへんからなぁ」
「そろそろ皆も気がつく頃かと思ったが…」
「身近なアイドル、っちゅうヤツか?見てくれは確かにえぇからな」
「カンペキに猫っかぶりしてるしね」
「ワシらが何も言わん事も判っとるようやし…ホンマ、えぇ性格しとるわ」
「だからこうやって、ささやかな反抗をしているんじゃないか」
「なんや化かし合いみたいやな」
「あっちにはあっちの思惑、こっちにはこっちの思惑だよ。あ、いらっしゃーい」
「えー、見本はこっちでっせぇ。どないでっかー?」

下駄箱の前。
アスカが自分の下駄箱を開けると、雪崩のように手紙が落ちてくる。
どの手紙にもハートのシールが貼ってあり、ひと目でラブレターだとわかる。
スカートの裾を押さえて優雅にしゃがみ込み、丁寧に手紙を拾い集める。
立ち上がるとその手紙の束を見つめて、ほうっ、と溜め息をついて見せる。
「惣流さん、またラブレター?」
ヒカリが声をかける。
「ええ、そうみたい。でも…」
「どうしたの?あんまり嬉しそうじゃないみたいだけど?」
「まだ漢字が読めないから、なんて書いてあるか解らなくて…。だからお手紙をもらって
もどんな人が、どんな想いを伝えようとしているのか解らないから、お返事も書けないの」
「そう…よねぇ。相手に伝わらなければ、どんな綺麗な言葉も意味が無いものね」
「相手の人にも申し訳なくって…。直接、伝えてもらえれば良いのだけれど…」
「惣流さんに直接告白する勇気のある男子なんて、いないかも」
…ここまではアスカの思い通りの展開なのだろう。
自分を良い子に見せよう、ただそれだけの、悪意の無いものなのだが…。


201 :10:03/04/15 20:58 ID:???
翌日。市立第壱中学校。登校してくる生徒達。
シンジもケンスケ達といつものように登校している。
「ヘロォ〜、シンジ。グーテンモルゲン」
突然アスカが声をかける。
「ぐ、ぐーてんもるげん」
ギクリ、となるシンジ。こそこそと逃げるケンスケ&トウジ。シンジを睨む男子生徒達。
なんとアスカは転校初日に、自分の正体を皆にバラしてしまったのである。
シンジに駆け寄り、ぴったりと寄り添いながら、耳元で囁く。
「まぁーた朝から辛気臭い顔して。この私が声かけてんのよ。ちったァ嬉しそうな顔しな
さいよ。…で、ここにいるんでしょ、もう一人が」
歩道橋の上から辺りを見回すアスカ。
「……誰?」
「あんたバカ?ファーストチルドレンに決まってるじゃない!」
「ああ。綾波なら」
シンジの視線が滑らかに、すーっと移動する。
そのあまりのスムーズさに、少し意外そうなアスカ。
「ふーん、アンタ、ファーストの事、良く解ってるんだ」
やや不機嫌になりながら、アスカはシンジの視線を追う。
エスカレーター越しにあるベンチで一人、レイが本を読んでいる。
ベンチの横にある低い塀の上に、いつの間にかアスカが立っている。
本にその影が映るが、すい、と身体の向きを変えて読書を続けるレイ。
アスカが移動して、また本に影が映る。
視線だけを動かしその影の主を見るレイ。
「ヘロォ。あなたがアヤナミ・レイね?プロトタイプの」
それには答えず視線を本に戻すレイ。
「あたし、惣流・アスカ・ラングレー。エヴァ弐号機なの。仲良くしましょ」
「どうして?」
「その方が都合が良いからよ、イロイロとね」
「命令があればそうするわ」
「…変わった子ね」
オマエモナー


202 :10:03/04/15 20:58 ID:???
ネルフ・制御室。
一人キーボードを叩いているリツコ。近付く足音。
後ろからリツコを抱きしめる男の腕。
キーを叩く手が一瞬止まる。
「少し、痩せたかな?」
リョウジが耳元で囁く。
「そう?」
リョウジの手に、そっと触れるリツコの手。
リョウジの手がゆっくりと下がり、腰の細さを確認すると今度はゆっくりと上がってくる。
見た目以上に質感のあるその胸が、今まさにリョウジの手で確かめられようとしている。
リョウジの腕は、持ち上がると同時にじわりと狭まっている。
それはリツコの両腕が自ら、自分の乳房を寄せて押し上げる格好になる。
その持ち上がった肉塊の感触を、ゆっくりと確かめる様に這うリョウジの手…。
「…哀しい恋をしているからだ」
「どうしてそんな事が解るの?」
「それはね、涙の通り道にホクロのある女性は、一生泣き続ける運命にあるからだよ」
リツコの泣きボクロに触れ、そのまま頬を伝ったリョウジの右手がリツコのアゴにかかり
自分の方を向かせる。
見つめ合う二人。
「これから…口説くつもり?」
リツコの紅い唇が、まるで生き物の様に妖しげに動く。
「さて、そんな先の事は判らないな」
「…でもだめ。ほら」
リツコが視線を動かす。
その先にはヤモリの様にガラスにへばりついたミサトが居た。
鼻息でガラスが曇りかけている。ふんがー。
両腕を緩めリツコを自由にすると、ポリポリと頭を掻くリョウジ。
「お久しぶり、加持君」
「や、しばらく」


203 :10:03/04/15 20:59 ID:???
改めて挨拶をするリツコとリョウジ。
さっきまでの艶っぽい雰囲気を感じさせない、からりとした挨拶だ。
すごいね、役者なんだね二人とも。
「しかし加持君もウカツね」
ははは、と笑いリツコのコーヒーを飲むリョウジ。
その前をズカズカと歩くミサト。リョウジを見ないようにしている。
「コイツのバカは昔っからなのよッ!…あんた、弐号機の引渡しが済んだならサッサと
帰りなさいよ!」
「今朝、出向の辞令が届いてね。ここに居候だよ。また三人でツルめるな、昔みたいに」
ポケットから書類を出してひらひらさせながらリツコを見る。
リツコはもういつものリツコだ。ミサトに視線を戻すと、プイッとソッポを向かれる。
「だっれがアンタなんかと!」
ヴィィィィィィィィィッ!ヴィィィィィィィィィィィッ!
奥のモニターがエマージェンシーを伝える。回転する赤色灯。
「…敵襲!?」
部屋を飛び出していくミサト。リツコとリョウジも後に続く。

ネルフ本部・第壱発令所。
「警戒中の巡洋艦はるなより入電。我、紀伊半島沖にて巨大な潜航物体発見。データ送る」
「受信データ、照合。…波長、青。使徒と確認」
「総員、第一種戦闘配置」
コウゾウが指示を出す。

「ここで使徒を迎撃することは可能かね?」
駆けつけたミサトにコウゾウが尋ねる。
「前回の戦闘により、迎撃システムは多大なダメージを受け、現在の復旧率が26%です。
実戦での稼働率はゼロと同じです」
「では、討って出るか」
「はい。上陸直前の使徒を水際で一気に叩きます」
「どちらを使うかね?」
「弐号機がやる気まんまんです」


204 :10:03/04/15 21:00 ID:???
空を埋め尽くすVTOL戦闘機。
湾岸道路を進む大型移動指揮車。
空を飛ぶエヴァ専用大型輸送機。
遠巻きに布陣している戦自。
「あ〜あ。日本でのデビュー戦だってのに、どうして人のいる場所でやらないのかしら」
「危険だからだよ」
「解ってるわよ、そんなこと。…くれぐれも足手まといになるような事しないでね」
「う、うん」
通信を切るアスカ。
「なーんであんな子がパイロットに選ばれたのかしら?」
ガシャン!という音を立ててロックがはずされる。
うつ伏せになったまま、ゆっくりと後方に流れていく。
ヒュゴオッ!
空気の抵抗が突風となってアスカにぶち当たる。
輸送機が作る影から離れ、陽光を浴び、真赤な機体が鮮やかに映える。
ひゅるるるるるるるるるる
ズ…ズズ…ン。
海岸線の砂地に着地したアスカめがけて外部電源車が近寄ってくる。
手早く電源ソケットを装着するアスカ。
「来た!」
モニターを見ていたシンジが呟く。
アスカも眼前のモニターで確認している。
水平線に巨大な水柱が立っている。
ドドドドドドドドドドドドドドドドドドド。
海水が雨のように水滴となり降り注ぐ。
その中に屹立する使徒。
む。ももんがぁだな。…いや、そんなオバケがいるらしいんです。


205 :10:03/04/15 21:01 ID:???
指揮車のミサトがインカムに向かって叫ぶ。
「攻撃開始」
「アスカ、行きまーす。ほら、あんたも」
「ちぇっ。後から来たのに仕切るんだもんなぁ」
今回の弐号機の武器は、ソニックグレイブというプログナイフの長刀版だ。
使徒の動きが緩慢なことを瞬間的に察知したアスカが叫ぶ。
「いけるッ!」
「ええぇっ!?」
「たああぁぁぁああああっ!」
三段跳びのように、水没したビルを踏み台にして弐号機が使徒に向かって跳ぶ。
「でええぇぇえぃぃぃぃッ!」
ブン!という音と共に、全体重を乗せたソニックグレイブが使徒に振り下ろされる。
ズビャアアアアアッ!
ドッバアァァァァァァ…ン
勢い余って水面まで達したソニックグレイブが水柱を上げる。
真っ二つに切断された使徒が、ゆっくりと左右に倒れていく。
「お見事…」
あっさりと秒殺してのけたアスカに、思わず感心するシンジ。出番が無い。
「ふふん。戦いは常に無駄無く、美しく、よ!」
さすがにアスカも満足げだ。
だが、使徒の切断面がぴくぴくと波打っている。
次の瞬間、傷口に新しい表皮が出来て見る見る内にモコモコと身体が再生されていく。
そして2体の同じ形の使徒が誕生した。
「ああっ」
「そんな!」
「なんたるインチキ!」
「こっこうなったらあいつ等もぶった切ってやるぅ!」
「そしたらまた増えちゃうよ」
「だだ大丈夫。分裂しすぎるとへろへろになるってのは、ナントカいう女神が実験済み」
「それはマンガの話…うわああぁぁぁぁ…」


206 :10:03/04/15 21:01 ID:???
ネルフ本部内・ブリーフィングルーム。
マヤの淡々とした報告が続いている。
「本日午前10時58分15秒。2体に分離した目標の攻撃を受けた弐号機は駿河湾沖2キロ
の海上に水没」
スライドに「スケキヨ」状態の弐号機が映し出される。
「この状況に対するE計画責任者のコメント」
「ブザマね」
アスカが辛抱堪らなくなっていきり立つ。
「もーっ!あんたのせいでデビュー戦がメチャクチャになっちゃったじゃない!」
「なに言ってんだよ!アスカがマヌケなことをしただけじゃないか!」
「マ、マヌケぇ?どぉしてグズなあんたがそんな事言えるのよ。図々しいわね!」
「な、なんだよ!焦って倒そうとするから大変な事になるんだろ!?」
「…午前11時3分をもってネルフは作戦遂行を断念。国連軍第2方面軍に指揮権を譲渡」
「まったく恥をかかせおって」
コウゾウがぼそっと呟く。
「同5分、NN爆雷により目標を攻撃、構成物質の28%を焼却に成功」
綺麗な円環状に抉られた海岸線が映し出されている。
「また地図を書き換えなきゃならんな…まったく仕事ばかり増える」
「やっつけたの?」
「足止めに過ぎん。再度侵攻は時間の問題だ」
「ま、建て直しの時間が稼げただけでも儲け物ですよ、副司令」
リョウジがコウゾウの機嫌をとる。
「いいかね、君達。君達の仕事はなんだか解るか?」
「使徒と戦うこと」
アスカが気圧されながらも答える。
「違う。使徒に勝つことだ!こんな醜態を曝す為に我々ネルフは存在している訳ではない。
その為には君達が協力しあって…」
『なんでこんな奴と!』
アスカとシンジが同時に答える。
「…もういい」
呆れたコウゾウはそれ以上何も言わずに退席する。


207 :10:03/04/15 21:02 ID:???
「どうして皆すぐに怒るの?」
アスカが疑問を口にする。
「オトナは恥をかきたく無いのさ」
「あの、ミサトさんは?」
「後片付け。責任者は責任取るためにいるんだからな」

ネルフ本部・ミサトの個室。
デスクに置かれた書類の山。うんざりした表情のミサト。
「関係各省庁からの抗議文と被害報告書。でこれが国連軍からの請求書。広報部からの
苦情もあるわよ。ちゃんと目を通してね」
リツコが意地悪そうな表情を見せる。
「読まなくたって解ってるわよ。ケンカするならここでやれ、ってんでしょ?」
「御明察」
「言われなくたって準備万端ならここでやるわよ」
ぶちぶちとミサトが不平をたれる。
「使徒は私が倒すわ」
ゲンドウのポーズを真似て椅子に腰掛けるミサト。
「副司令官はカンカンよ。今度恥をかかせたら間違いなく左遷ね」
「碇司令が留守だったのは不幸中の幸いだったけどさ」
「居たら即刻クビよ、これを見る事も無く、ね」
「でェ?私のクビが繋がるアイディア持ってきてくれたんでしょ?」
「ひとつだけ、ね」
人差し指と中指でメモリーカードを挟んで、ミサトの目の前でひらひらさせる。
「さっすが赤木リツコ博士。持つべき者は心優しき旧友ね♪」
ミサト、カードを取ろうとするがリツコがひょいと手を引っ込める。
「残念ながら旧友のピンチを救うのは私じゃないわ。このアイディアは加持君よ」
カードをひっくり返してラベルを見せるリツコ。
マイハニーへ、そう書かれている。
「加持君が…」
訝しげに見つめるミサト。カードを受け取って、自然に顔がほころぶ。


208 :10:03/04/15 21:04 ID:???
真夏の太陽と空、それに蝉の声。
いつものように帰宅したシンジが玄関先で独り言を言っている。
「誰もいないと判っててもつい、ただいま、って言っちゃうよな」
「あら帰ったの、バカシンジ」
「当たり前だろ、僕の家だ…ええっ!?」
驚くシンジ。辺りの荷物にもやっと気付いたみたいだ。
部屋には風呂上りらしいアスカが、ジョギパンとキャミ姿でくつろいでいる。
うっすらとピンク色に上気した肌を惜しげもなくさらしている。
つやつやとした、弾力に富むその肢体は、まさに若さの象徴である。
やっとミサトの色気に慣れて来たシンジだが、同年代の女の子のそんな姿は刺激的だった。
胸はまだ未成熟だ。だが、その弾力性は重力に負けていない。
その手足は細い。だが、野性の動物を彷彿とさせる。
その腰は、成熟した女のようにねっとりとした脂肪で丸みを帯びていない。
だが、思わず抱きしめたいと思わせる何かがある。
…色気の性質が違うんだね。シンジ君にはまだ早いか?
「あんたはもう用済み」
麦茶を飲みながら、アスカがシンジに宣告する。
「ミサトは今日からワ・タ・シ・と暮らすの。ま、どっちが大切かを考えれば当然の選択よね」
「そ、そんな…」
「ホントは加持さんと一緒のほうがいいんだけれど、世間ってぇものがあるしねー」
「勝手なこと、言うなよ!」
「しっかし、どーして日本の部屋ってこう狭いのかしら?荷物が半分も入らないじゃない」
シンジを無視するかのようなアスカと、自分の荷物が放り出されているのに気付くシンジ。
「おまけに、どーしてこう日本人って危機感足りないのかしら。よくこんな鍵の掛からな
い部屋で暮らせるわね。信じらんない」
フスマを何度も開け閉めしながらアスカが呆れる。
「察しと思いやりが日本人の心情だからよ」
アスカの疑問に、何時の間にか帰宅したミサトが答える。
『《ミサト》さん』
二人が同時に声の方を向く。…表情は正反対だが。


209 :10:03/04/15 21:05 ID:???
「さっそくうまくやってるじゃない」
『《何が?》ですか?』
「今度の作戦準備」
『どうして?』
ふふん、と得意そうに笑うと、ミサトはテーブルの上に資料をブチまける。
冷蔵庫からジュースとビールを取り出すと、二人を座らせて説明を始める。
「彼奴の弱点はひとつ!分離中のコアに対する2点同時荷重攻撃。これしか無いわ」
キョトンとしている二人。
「つまり、エヴァ2体のタイミングをカンペキに合わせた攻撃よ。そのためには三人の
協調、カンペキなユニゾンが必要なの」
困った顔でお互いを見るアスカとシンジ。
その様子をニヤニヤみながらミサトが言う。
「そ・こ・で、あなた達にこれから一緒に暮らしてもらうわ」
『ええーーーーーっ!』
「イヤよッ!昔っから“男女七歳にして同衾せず”ってねー!」
アスカが立ち上がり、猛然と抗議する。
「使徒は現在自己修復中。再侵攻は6日後。時間が無いのよ」
「そんなムチャなぁ〜」
ヘナヘナと座り込むアスカ。
「そこでムチャを可能にする方法!三人のカンペキなユニゾンをマスターするため、この
曲に合わせた攻撃パターンを覚えこむこと。6日以内に。一秒でも早く」
その曲名は「DUB-I-DUB」
げんなりとした表情の二人、思わず顔見合わせる。
しかしアスカがすぐに、ぷいっと横を向いてしまう。
「それから、攻撃のタイミングはいつ来るか判らないわ。そのタイミングを摑む練習もね」
シンジがものすごくイヤそうな顔になる。宿題が多いのはいやだねぇ。
「この漫才特集を見て『ツッコミ』の練習よ」
ガックリとなるシンジ。
「ん?三人?」
アスカが気付く。
「もちろんレイよ。次は2体のエヴァを投入するわ。今頃は特訓開始しているはずよ」


210 :10:03/04/15 21:05 ID:???
「しっかしシンジの奴どないしたんやろ。」
「学校休んでもう3日かぁ」
ミサトのマンションのエレベーター内、ケンスケ・トウジが話している。
あ。トウジが制服を着ている!
チン!という機械音と共にドアが開くと、隣のエレベーターにも訪問客が居た。
「なんや。イインチョやないか」
「3バカトリオの二人!」
「なぁんでイインチョがここにおるんや?」
「惣流さんのお見舞い。あなたたちこそどうしてここに?」
「碇君のオミマイ」
なぜか同じ部屋の前で立ち止まる三人。
『《「なんでここで止まるの」んだよ》んや』
言う事も同じなら動作も一緒だ。三人でチャイムを鳴らす。
ピンポォン♪
『はぁい』
鍵を開けて出てきた二人は、スパッツとカットオフのTシャツ姿なのだが。
「う、裏切りモン」
「またしても今時、ペアルック…イヤ〜ンな感じ」
「ふ、不潔よ二人共ッ!」
『こ、これは日本人は形から入るものだって無理矢理ミサト《さん》が…』
三者三様のリアクションと、弁解にも力がないアスカとシンジ。
「オマエラ、学校休んでナにしよんねん!」
『ご、誤解だわ《よ》!』
「ゴカイもロッカイも無いわ!」
ヒカリ、それはオヤジギャグだぞ?
「あら、いらっしゃい」
三人の後ろから、レイを伴ったミサトが声をかける。
「これはどういう事か、説明してください!」
二人を指差しながらミサトに詰め寄るトウジ。


211 :10:03/04/15 21:06 ID:???
ミサトの説明で納得した一同、呑気に笑っている。
「そんならそうと早よ言うてくれたらええんや」
「で、ユニゾンの方は上手くいってるんですか?」
ペンペンを抱いたヒカリが尋ねる。
「…それが見ての通りなのよ」
ツイスターゲームに似た装置でトレーニングしている二人、てんでバラバラである。
あ、またズレた。
「あったり前じゃない!このシンジに合わせてレベル下げるなんて上手くいく訳無いわ!どだい無理なのよ!」
ヘッドホンを叩きつけてアスカが叫ぶ。
「じゃ、止めとく?」
「他に人、いないんでしょ」
…どこかで聞いた様な会話だ。
「…レイ、やってみて」
「ハイ」
音楽スタート。快調な二人。
シンジが思わずレイを見る。
愕然とするアスカ。
そしてノーミスで終了。
「はいお終い。次はアスカとレイ」
にやにやするシンジ。上手く行かないのはアスカのせいだと確信しているのだ。
だが、この二人も順調なのだ!
今度はシンジが驚いている。…いや、踊っているアスカも、信じられない様子だ。
おおお!となるヒカリ達。
「お解りかしら?アスカとシンジ君に足りないのは、相手に合わせようとする気持ちよ」
アスカは怒りを露わにし、シンジはがっくりと頭をたれる。


212 :10:03/04/15 21:07 ID:???
「ほんなら、ツッコミのタイミングはどうなんやろ?」
トウジがもうひとつの課題について触れる。
「鈴原君、何かボケてみて」
「…♪アスカのアの字はアホゥのア…」
「アンタバカァ!?」
「どうしてそういう事を言うの?」
  「な、なんでやねん」
キッ、とトウジを睨むアスカと、寸鉄殺人と言う諺がぴったりのレイ。
シンジだけがわずかに遅れる。…おまけにつまらないツッコミだ。
溜め息がトウジ達から上がる。
「…お笑いには向いてへんなァ…」
「碇にツッコミは無理だろ?天然ボケだし」
「作戦上はどうなんですか?」
「アスカとシンジ君のユニゾンが完璧なら、組み合わせだけが問題なんだけれど…。」
「二人共、がんばるのよ!私、応援するから!」
それでどうなるというものでもないのだが、ヒカリの熱意は伝わったようだ。

三人を送ったついでに、コンビニで買い物をするシンジとアスカ。
「…ねぇ」
「何も言わないで。判ってるわ。私にはエヴァとして戦うしかないのよ」
「…」
「やるわ私!こうなったら何としてもミサトやファーストを見返してやるのよ!」
「…やっぱりアスカは元気な方が良いね」
「なーなーナニ言ってんのよ、バカね!…足引っ張ったら承知しないんだから」
「うん」
「そうと決まれば特訓よ!」
そーしてそして、そしてだな。二人は伝説になるべく特訓を始めた。
朝の洗面から食事時はもちろんのこと、一日のあらゆる場面で、互いに相手の行動を予測
し、自分の行動を相手に合わせようと努力した。相手のわずかな表情の変化や声の抑揚、
あらゆる情報に注意して次の行動を予測するのだ。
最初はぎこちなかった二人だが、徐々に呼吸が合い、行動がシンクロして行く…。


213 :10:03/04/15 21:08 ID:???
いよいよ決戦前夜、という8月10日の夜、ミサトはネルフ本部で泊り込みであった。
風呂上りのアスカが、髪を拭きながらリビングに来る。
身体に巻いたバスタオルがやや緩めなのでズリ落ちそうだ。
「あれ?ミサトは?」
「仕事だって。今夜は徹夜だってさっき電話が」
アスカの方を見ないようにしながらシンジが答える。
「じゃあ今夜は二人っきりって訳ね」
にっこりと笑いながらアスカが言う。
「え゛?」
あ。ちょっと動揺したな?
しかし、アスカのとった行動は全然色っぽくない。
布団を抱えるとさっさと自分の部屋に運びこみ、寝る準備に取り掛かる。
フスマを閉めて着替えを済ませると、改めてシンジに宣告する。
「これは決して崩れる事の無いジェリコの壁よ。」
少し開いたフスマから、四つ這いでシンジを睨むアスカが見える。
Tシャツの襟が力なく垂れ下がり、アスカの胸を無防備にさらけ出している。
これから寝るのだ。当然、ブラはつけていない。
…アスカの貞操を守る手段は、シンジの理性以外、もはや無いに等しいのだ。
ううう。なんと言うシチュエーション!
「?」
「この壁をちょっとでも越えたら死刑よ。子供は夜更かししないで寝なさいッ!」
きっぱり言い放つとアスカは、ピシャリ!とフスマを閉める。
できるだけ布団を部屋の隅に寄せて、しばし思案するアスカ。
「…大丈夫。バカシンジにそんな度胸は無いし、イザとなったらこれで…」
枕元にスタンガンを用意して、やっと部屋の電気を消した。
託された任務への責任感とプライドが、現在のアスカを支えている。
ドイツに居る必要性も感じなかったが、慣れない異国の地での生活も少女の精神にはやや
負担が掛かっているようだ。まして今夜はよく判らない男の子と一夜を共にするのだ。
片やシンジは、非常に個人的な理由で眠れぬ夜を過ごしていた。
ミサトに手を出す勇気は無いが、同年代のアスカなら…。妄想は膨らむばかりです。


214 :10:03/04/15 21:09 ID:???
ネルフ本部・エレベーター内。
押し殺したあえぎ声と衣擦れの音。
床に散らばった書類。
もつれ合う二つの影。
「やだ、見てる…」
「構うもんか」
身をよじって抗うミサトをリョウジが押さえつける。
リョウジの手がミサトの身体を求めて蠢く。
リョウジと自分の間に両手を入れ、身体を引き離そうとしているミサト。
リョウジの唇がミサトのそれに重なり、荒々しく貪る。
「む!んむむ」
リョウジの右脚がミサトの太腿をを押し分けて侵入してくる。
何時の間にか壁際まで追いやられ、逃げ場の無くなったミサトの身体にリョウジの逞しい
腕が絡みつく。どこかに集中していると、あっという間に侵入を許してしまいそうだ。
リョウジの右手がシャツをたくし上げている。
じわり、と脇腹に懐かしい感触が触れる。
来る…。
ミサトの肉体は、この後のリョウジの指の動きを思い出していた。
そう、ここから指先で脇腹を撫でるように上がってきて、ゆっくりと乳房を包み込み…。
チーン!
エレベーターの到着音が、ミサトを瞬時に現実へと連れ戻す。
両手でリョウジを突き飛ばすと、後ろ向きのまま二、三歩後ずさる。
「もう、加持君とは何でもないんだから、こういうの、止めてくれる?」
乱れた髪を直しながらミサトが小さく訴える。
「でも君の唇は止めて、とは言わなかったよ」
落ちた書類を広い集めてミサトに差し出すリョウジ。
「…」
「君の唇と君の言葉。どちらを信用したらいいのかな?」
無言で書類をひったくるミサト。
カラになった右手を見て、その右手を胸に当てて芝居がかったお辞儀をするリョウジ。
ゆっくりと顔を挙げたリョウジは、自信に満ちた笑みを浮かべ扉を閉めた。


215 :10:03/04/15 21:09 ID:???
天井都市・ラウンジ。
空中軌道を、カートレインの灯りがゆっくりと移動している。
室内に流れるスタンダード・ジャズ。
ぐったりしているミサト。
頬杖をついているのか、頭を抱えているのか判らない程、ぐったり。
「はい」
「ありがと」
リツコがコーヒーを持ってきてくれたのだ。
「今日は珍しくシラフじゃない」
「チョッチ、ね」
力なく笑うミサト。視線を逸らすリツコ。
「仕事?それとも、オトコ?」
「…いろいろ」
「ふーーん。…まだ、好きなのかしら?」
「へへへヘンなこと言わないでよ!誰があんなヤツと!あああ、いくら若気の至りとは
言え、あんなのと付き合っていたなんて。我が人生最大の汚点だわ…」
ソファーにもたれてオーバーに嘆いてみせるミサト。
ミサトをじっくりと観察するリツコ。
「私が言ったのは加持君が、よ。…動揺させちゃった?」
「あんたねぇ…」
「怒るのは図星を突かれた証拠よ」
プー、と頬っぺたを膨らませるミサト。
「今度はもう少し素直になったら?八年前とは違うんだから」
「…変わって無いわ、ちっとも。オトナになってない…」
それはミサトの事か、リョウジのことか…?
物憂げな表情を垣間見せ、やがてミサトが立ち上がる。
「さーて仕事仕事。明日は決戦だもんね!」
明るく振舞うミサトにリツコが尋ねる。
「シンジ君達は大丈夫なの?青い性に暴走はツキモノよ?」
「シンジ君にそんな度胸は無いわよォ。何かあっても合意の上ならそれはそれで…」
「シンクロ率もハネ上がる?」


216 :10:03/04/15 21:10 ID:???
悶々として眠れないシンジは音楽を聴いている。
突然フスマが開き、アスカがトイレに行く。…これもけっこう抵抗があるはずなんだが…・
慌てて寝たフリをするシンジ。
ドアの閉まる音。衣擦れの音。水を流す音。ペーパーホルダーの回る音…。
何の変哲も無い音だが、その音を作り出しているのがアスカだと思っただけでシンジは
興奮した。そして想像してしまうわけだコレが!
やがてドアが開き、足音が近付いてくる。
ぺたぺたぺたぺた…。
どさっ。
シンジの横で何かが落ちた。
そっと目を開いてみる。
薄明かりの中、アスカがシンジの布団に寝転んでいる!
ブカブカのシャツからは、胸がほとんどむき出しになっている。
いや、それよりもアスカの顔が目の前にあるのだ。
そして穏やかな寝息を立てている。
普段のアスカからは容易には想像できない、あどけない表情。
無防備な姿で一方的に、シンジにその運命を委ねている。
据え膳喰わぬはオトコの恥だが、調子に乗ると食中毒を起こすんだよ、シンジ君?
アスカの胸の膨らみと寝顔を交互に眺め、意を決したシンジ。


217 :10:03/04/15 21:11 ID:???
右手を、そ〜っと胸の膨らみに伸ばしながらおでこでアスカのおでこを押し上げる。
アスカのアゴが持ち上がり、うっすらと開く唇。
吐息がシンジの顔にかかる。
心臓、バクバクしているはず。
右手の指が、シャツ越しにアスカの胸に触れる。
そっと、掌全体で包み込んでみる。
手に吸い付く様な、弾かれる様な不思議な感触。
人差し指の付け根辺りに、突起物が触れる。
自分の鼓動とアスカの鼓動が、掌で揺らいでいる。
そっと唇を近付けようとしたその時。
「…ま…」
アスカの唇がかすかに動き、その手がシンジの右手に合わさってくる。
「…ママ」
もう一度、アスカが呟く。
目を開けたシンジの前には、うっすらと涙を浮かべたアスカがいた。
寝言で母を呼ぶアスカ。普段の彼女からは想像できない、弱々しい姿。
急激に萎えていくシンジの分身。
そして自己嫌悪。
シンジはできるだけそっとアスカを抱きかかえ、アスカの布団に運んだ。
まるで壊れ物を扱うようにそっと降ろし、布団をかけて溜め息をひとつ。
そして自分の布団に戻るとさっそく七転八倒するのだった。
天使と悪魔が囁き合うアレだね。
シンジがアスカを抱きかかえた時に、アスカが目覚めたかどうかはアスカにしか判らない。
ただひとつはっきりしているのは、翌朝のアスカは「いつものアスカ」だったと言うこと
だけである。


218 :10:03/04/15 21:11 ID:???
ヴォォォォォォォォ
山間を後退していく2機のVTOL。
その前方には使徒がいる。
バシャァァァァァ!
水田を歩み寄る使徒。泥交じりの水柱が立つ。
「目標は強羅絶対防衛線を突破」
「来たわね。今度は抜かりないわよぉ!音楽スタートと同時にATフィールド展開。後は
作戦通りに。いいわね、三人共?」
『了解』
今回の出撃はシンジが弐号機に乗り、レイはテストプラグで起動している。
起動時間延長試験も不完全な現状では、活動時間は最大70秒というところだ。
「目標は山間部に侵入」
「いいわね。最初からフル稼働・最大戦速で行くわよ」
「判ってるよ。70秒以内でケリをつける」
「了解」
「目標0地点に到達します」
「外部電源パージ」
ド・ドウッ!
バシュウッ!
カウンターが動き出す。
「発進!」
ロックボルトがはずれ火花が飛び散る。
バシュシュッ!
射出ルートをすさまじい速度で通過して行く2体のエヴァ。
ヒュゴォッ!
射出口から空高く舞い上がる2体のエヴァ。
腕からビームグレイブを取り出すと、空中回転で勢いをつけて使徒に向かって投擲する。
なぎ払う使徒。
しかし、2本のビームグレイブ間に張られたスクリーンが使徒を分断する。
光球が一閃して2体になる使徒。
着地するエヴァ。兵装ビルから吐き出されるパレットガンを取る。


219 :10:03/04/15 21:12 ID:???
ミラー・シャドー・ユニゾン。
私は貴方の鏡。私は貴方の影。私達は調和する…。
左右に別れ、パレットガンを連射しながら使徒に向かう。
と、使徒から光線が発射される。
バック転で後退しながら避ける初・弐号機。
マーキングされた地点に脚を踏み入れると、装甲板がせり上がる。
その装甲板に命中する使徒の光線。溶解する装甲板。
「援護射撃」
ミサトの命令で、山腹のミサイルサイロやランチャーから発射されるミサイルの雨あられ。
使徒を包み込む爆発の渦。
しばしの静寂。一瞬、エヴァの姿を見失った使徒。
突然、上方からの射撃を受ける使徒。太陽を背に急降下してくる初号機。
2体の使徒の注意が初号機に向いた途端、装甲板の陰から援護射撃する弐号機。
懐に飛び込んだ初号機が、パレットガンのストックで使徒の腹部を殴打する。
振り向きざま、もう一体にも!そして、倒れこんだ使徒にパレットガンの掃射!
駆け寄る弐号機。初号機とタイミングを合わせて使徒にケリを見舞う。
吹っ飛ぶ使徒。
よろよろと立ち上がると、じわり、と合体していく。
『!!!』
身をかがめ、同時にジャンプ!
そして クアドラブル!!…わは わはは… わはははは。やっちまったい。
2体のエヴァが、4回転ジャンプをしながら上空高く舞い上がる。
そして急降下。
使徒の光球に、同時に炸裂するユンカース・キック。
吹っ飛ぶ使徒。
土煙を上げながら山肌を突き進む、エヴァと使徒。
その使徒の光球にヒビが入り、やがてパアッと光る。
ドドドドオオオオォォォォォォオオ…。
ゴゴゴゴゴゴゴォォォ。
ゆっくりと光のドームが膨らみ、大爆発が起きる。
コウゾウが満足げに笑う。


220 :10:03/04/15 21:13 ID:???
まずミサトが異変に気付いた。
クレーターの中で、絡み合うようにして倒れているエヴァ、2体。
「エヴァ両機、確認」
「…あちゃあー」
「ブザマね」
やがて無線が回復して、三人の会話が第壱発令所に流れる。
「ちょっと!アンタ最後にタイミングハズしたでしょ!まったく、普段からボケボケッと
してるからよ!昨日の夜だって寝ないでナニしてたのよ!?」
「き、今日の戦いのためのイメージトレーニングだよ!」
「…どいてくれる?」
「ウソばっかし!寝てる隙に私の唇奪おうとしたクセに!」
「ズ、ズルイよ起きてたなんて!」
「…どいてくれる?」
「ひっどぉぉぉい!冗談で言っただけなのに、ホントだったの?キス、したのね!?」
「しっしてないよ!…途中で止めたんだよ」
「どいてくれる?」
「エッチ!チカン!ヘンタイ!信じらんない!」
「そっちこそ、寝言と寝相が悪いのが原因じゃないか!」
「どいてくれる?」
発令所に起こる笑いの渦。
作戦中、あれほど息の合っていた三人だったのに…。
「また恥をかかせおって…」
頭を抱えるコウゾウ。
伝説はまたの機会となった…。


221 :10:03/04/15 21:14 ID:???
次回予想。
羽化直前の使徒が眠る火山口。ネルフは初の使徒捕獲を試みる。
極地仕様のエヴァ弐号機が灼熱の地獄に挑む。
次回「マグマ・お台場―」
修学旅行に行けるかな?

>>191
まぁそう言わずに。
>>192
ありがとうございます。本当にこの言葉しかありません。
>>193
さて、>>1はこの状況をどう思っているのでしょうか?
…スレを乗っ取ってしまった格好ですからなぁ。
>>194
えーと。第参話の>>122でレイが活動停止している描写はありますが、まだ秘密です。
シンジの自家発電、というネタもアリです。
>>195
予告篇の>>16で「イく寸前」のレイが腰を抜かしています。
…イったらどうなるのか?後半に続く(W
>>196
保守ありがとうございます。

ヘンな風邪をひいてしまい、ずいぶん遅れました。
仕事も順調にハードになっております。
心配なのは「この話はおもしろいのか?」この一点です。
…時間が欲しいですなぁ。


222 :10:03/04/16 00:16 ID:???
>>201
24行目。プロトタイプ→テストタイプです。
原稿ではちゃんとしていたから、書き込む時に勘違いして慌てて訂正したみたいです。
こういうミスは、正直イタイ。
ついでに二つ程。
「NEON GENESIS ERONGELION」という作品がweb上に実在しています。
そういうわけで、近日中にこの作品の名前を改名します。
「アスカンゲリオン」と言う作品も実在します。あ〜びっくり。
やっぱり皆すごいなぁ。

223 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:03/04/16 03:29 ID:???
>>第六話
・・・・・・え〜と。
テンポはいい。
だけど、オリジナルシナリオの海賊版を読まされたような気がした。
原作に忠実であることの面白さはあるけど、それなら原作を見たほうがいい。

レイとアスカがエヴァであることの面白さが無くなってるんです。
一話、二話で見せた発想力は?

224 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:03/04/16 10:03 ID:???
つまり潮時

225 :山崎渉:03/04/17 11:55 ID:???
(^^)

226 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:03/04/17 15:00 ID:???
保全

227 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:03/04/18 05:18 ID:L+nLv5nD
うまくスレが動いて>>1はほくそえんでる様なきがする

ところでだれかイラスト描いてくれませんか?
たたかう巨大プラグスーツ萌え
個人的にはスケキヨアスカキボンw

228 :山崎渉:03/04/20 00:13 ID:???
   ∧_∧
  (  ^^ )< ぬるぽ(^^)

229 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:03/04/27 21:14 ID:???
念のため保守。

230 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:03/04/29 17:41 ID:???
10さん乙
今回も面白かったです。


231 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:03/04/30 07:19 ID:???
そうでもないけどね

232 :S14:03/04/30 22:56 ID:???
迷わず乗る!

233 :10:03/05/12 20:29 ID:???
第七話「マグマ・お台場―」

「ふふんふんふ〜ん♪ラッキ〜!加持さんにショッピングを付き合って貰えるなんて」
第3新東京市の歩行者天国を、アスカとリョウジが歩いている。
ズボンのポケットに左手を突っ込んだリョウジと、その左腕に抱きついているアスカ。
アスカのはしゃぎ様もさる事ながら、周囲を気にする素振りをみせないリョウジにも驚か
される。余裕なのかアスカに対する優しさなのか、テレたりしないのはオトナの証拠か。
だが水着コーナーに連れて行かれると、さすがに居心地が悪そうだ。
「ねぇ、これなんかどう?」
赤と白の横縞のハイレグ水着を持ったアスカがリョウジに聞く。
「…いやはや、中学生にはチト早過ぎるんじゃ無いかなぁ?」
「加持さん、遅れてるゥ。今時こんくらい当ったり前よぉ」
「ほぉ、そうなんだ」

買い物を終えた二人は、屋上で一息入れる。
子供達のための遊園地と、大人達のためのビアガーデン。
フェンス近くの小さなテーブルに座り、クリームソーダとビールを注文する。
飲み物が届くと小さく乾杯をして、アスカは楽しそうにおしゃべりを続ける。
学校での出来事や修学旅行の事など、年相応の他愛も無い話題。
リョウジとの会話が楽しいのか、「少女らしい体験」が楽しいのか…?
ふんふんと相槌を打ちながら聞いているリョウジの表情も優しげだ。
トウジなどがこの場面を見たなら「ブリっ子しぃが、ホンマに!」などと言うだろう。
だが、それはアスカの一面だけを見た感想なのだ。
人間は、そんなに単純なモノではない…。


234 :10:03/05/12 20:30 ID:???
「せっかくの修学旅行だもん、パーッと気分を開放しなきゃ」
「修学旅行、どこ?」
「オ・キ・ナ・ワ♪メニューにはね、スキューバ・ダイビングも入ってんの」
「スキューバねぇ。…そう言やもう3年も潜ってないな」
「…ねぇ、加持さんは修学旅行ドコ行ったの?」
「ああ、オレ達そんなの無かったんだ」
「どうして?」
「セカンド・インパクトがあったからな」
あ、と言う表情のアスカ。一気に年齢差を実感する言葉である。
アスカが生まれた時には、リョウジは既に「そんな年齢」だったのだ。
ふと、アスカの脳裏に好奇心が芽生えた。
「加持さんの少年時代って、どんな男の子だった?」
「普通の悪ガキさ。…シンジ君達と同じようなモンさ」
「ウソ!あんなのと同じなんて考えられない!」
「…そうだな、シンジ君達よりも能天気だったから、一緒にしちゃかわいそうだな」
「…」
「オレ達はセカンド・インパクトを体験しているとはいえ、それまでは本当にのほほんと
暮らしてたんだ。だが今の子供達は、生まれた時から色々な生存競争を強いられている。
今生きている、という事は大変な事だよな。だからアスカやシンジ君達が活き活きと生活
して成長していく所を見たいん…」
「…」
「おっと、つまらん話を聞かせちまったな。ま、アスカの力でシンジ君をまっとうに成長
させてみないか?って事さ」
「どーして私があんなバカの手助けをしなくちゃいけないの!?」
「オトコを成長させるのも、良いオンナの条件だろ?」
「加持さんのイジワルッ!私は今までも!これからも!加持さん一筋なんだからッ!」
「そりゃどーも」
そう言うと加持は苦笑いしながら、ビールを一気に飲み干した。


235 :10:03/05/12 20:31 ID:???
「えぇ〜っ!?修学旅行に行っちゃダメぇ〜!?」
「そ」
ミサトのマンション。アスカが素っ頓狂な声を上げている。
対するミサトは、アスカの反応を充分に予想していたのだろう、淡々としている。
「どーして!?」
「戦闘待機だもの」
「そんなの聞いてないわよ!」
「今言ったわ」
「誰が決めたのよっ!」
「作戦担当の私が決めたの」
表情こそすまなさそうにしているが、その態度には譲歩の余地は無さそうだ。
「正式な命令」にアスカの理性と欲求が戦っている。
その横で、達観した様子でお茶を飲んでいるシンジがアスカの目に映る。
ぷち。
「アンタ!お茶なんかすすってないで、ちょっとなんか言ってやったらどうなの!?
オトコでしょ!」
アスカ八つ当たりの図。
「…いや、僕はたぶんこういう事になるんじゃないかなぁと思って…」
「あきらめていた、ってワケ?」
「うん」
覇気の無いシンジと、それを見てますます憤りが増すアスカ。
「はん!なッさけ無い。飼い馴らされた男なんて最ッ低―!」
「…そう言う言い方はないと思うなぁ」
「気持ちは判るけどこればっかりは仕方無いわ。貴方達が修学旅行に行ってる間に使徒の
攻撃があるかも知れないでしょ?」
「いつもいつも待機!待機!待機!待機!いつ来るか解んない敵を相手に守る事ばっかし!たまには敵の居場所を突き止めて攻めに行ったらどうなの!!」
「それが出来ればやってるわよ」
苦笑いしつつミサトがビールを一気に飲み干す。
「作戦担当責任者がそんな弱気でどーすんのよッ!」
その時、テレビからニュース速報を告げるチャイムが鳴った。


236 :10:03/05/12 20:31 ID:???
「まァ!臨時ニュースだわ♪ナニがあったのかしら♪♪」
あからさまに話題を変えようとするミサト。
『本日午後七時四十二分頃、犬吠崎東北東約二百kmの日本海溝にて海底火山の噴火による
と思われる地震発生。各地の震度。銚子・震度2。水戸・震度2。成田・震度1。いわき・
震度1。千葉・震度1。つくば・震度1…引き続き地震・津波警報にご注意ください』
「あんまり大きな地震じゃありませんね」
シンジがごく平凡な感想を口にする。
ミサトも話の展開に窮している。
しかし、意外にもアスカが興味を持ったようだ。
「変ね、これ」
「なにが?」
「火山フロントから離れている」
「かざんふろんと?」
「そう。日本は確かに火山大国だけど、火山が密集している場所ってあるでしょ?例えば
こう、こう、こう、と」
アスカがテレビの下から地図帳を取り出して日本列島を指でなぞる。
千島列島から北海道・本州・九州と沖縄列島・小笠原諸島。
「で、こーいう緩やかな弧を描くカーブの中央に火山が集中しているワケ。その火山配列
の海側の限界が火山フロント」
「…つまり、この線より海側には火山は出来ないの?」
「日本近海に限れば、そうなんじゃない?何事にも例外は有るとは思うけど」


237 :10:03/05/12 20:32 ID:???
話を聞いていたミサトがおもむろに電話を取る。
「作戦局第一課の葛城一尉です。先程の日本海溝における火山活動について、気象庁から
何か報告は?…そう、引き続き情報収集と分析、お願いね」
ネルフはその任務上、あらゆる異常現象について関係省庁へ情報提供を義務付けている。
必要とあれば、世界中の組織・機関に対しても同様の権限を有している。
電話を置いたミサトはしばし腕組みをして思案に耽っていたが、素に戻ると二人に告げる。
「アスカ。せっかくの教養、無駄にしてはだめよぉ。シンジ君に勉強を教えてあげてネ♪
その代わりシンジ君はアスカに漢字を教えてあげて」
?という表情の二人。
ミサトは二枚のディスクを取り出して見せる。
「私が知らないとでも思っているの?見せなきゃバレないと思ったら大間違いよ」
ウッとなるアスカとシンジ。
「貴方達が学校のテストで何点取ったかなんて情報くらい筒抜けなんだから」
そりゃあそうでしょうよ。
「HA!バッカみたい!学校の成績が何よ。旧態依然とした減点式のテストなんか何の興味もないわ!」
腰に手を当てて虚勢を張るアスカ。動作が外国人風だぞ。
「郷に入れば郷に従え。日本式にも馴れて頂戴」
「イイイィィ〜〜〜だッ!!」
ビールを持って自分の部屋に戻るミサトにアスカが子供っぽい抗議をする。
「…宿題、やろっか?」
「まァたアンタはそうやってすぐにミサトの思い通りに行動する!」
「仕方ないだろ、学校の宿題なんだし」
鼻息荒く椅子に腰掛けるアスカ。渋々とテキストを開く…。


238 :10:03/05/12 20:33 ID:???
日曜日のネルフ本部・トレーニングセンター。
戦闘待機の交換条件としてアスカがこの施設の使用を申し出たのだ。
訓練としてではなく「遊び」としての使用は、自習を条件に許可された。
レイが水中をなめらかに漂っている。
泳ぐのではなく、水に全てを委ね、ただゆるやかに漂っている。
ぱしゃん
水面にレイの脚が持ち上がり、ゆっくりと回転しながら沈んでいく。
その動きに見とれているシンジ。
ばしゃばしゃばしゃ!
シンジの視界に、豪快に水しぶきを上げながらバタフライで泳ぐアスカが入ってくる。
「なんでこう違うんだろ…?」
対照的な二人を見てシンジが呟く。
やがてアスカがプールから出てシンジの所にやってくる。
アスカは自慢のロングヘアをお団子にしているのでいつもと雰囲気が違う。
「泳がないの?」
「…理科の宿題中」
「…ったく,おリコウさんなんだから」
「そんな事言ったってやらなきゃいけないんだから…う!」
「ジャ〜〜ン!どう、似合う?」
そう言うとアスカはポーズをとってゆっくりとターンする。
先日買った水着のお披露目なのだ。


239 :10:03/05/12 20:33 ID:???
腰の辺りまで切れ込むハイレグは鼠径部を露わにし、殿裂にその布地を食い込ませて
女体の凹凸を強調する。そして水着の食い込みを直す動作さえセクシーに見せる。
魅力50%UP!女性の見せ場のひとつだね。
か〜〜〜ッ!海、行きてぇーッ!
「う、うん。…オトナっぽく見える…」
パッと視線をそらせてシンジが答える。
「当ったり前でしょー!もぉシンジったら正直なんだから♪宿題手伝ったげる♪♪」
そう言うと、腰の後ろで手を組んだまま上体を屈めてディスプレイを覗き込む。
視界の左からアスカの胸が近付いてくる。
身体には水滴が残っており、今も束ねた髪から首筋へ、そして胸元へと流れている。
この娘は、いや思春期の少女達はこの様な自然の愛撫に、どんな感触を得ているのだろう?
いつかはその素肌に誰かの指が、唇が、そして舌が触れた時、どんな反応を示すのか…?
「ねぇシンジ、これ何て書いてるの?」
「ね、熱膨張、だよ」
アスカがチロリとシンジを見て小さく首を傾げる。
そして、ほうっ、と小さい溜め息をつく。
「幼稚な事やってんのね」
「…自分中心で考えないでよね」
「とどのつまり、物ってのは暖めれば膨らんで大きくなるし、冷やせば縮んで小さくなる
ってことじゃない」
「…判り易い説明、ありがとう」
バカにされたと感じたか、言葉に少しトゲのあるシンジ。


240 :10:03/05/12 20:34 ID:???
アスカは何かを思いついたらしく、ちょっと悪戯っぽい笑みを口元に浮かべる。
「私の場合、胸だけ暖めれば、少しはオッパイが大きくなるのかな?」
「そ、そんなこと聞かれたって解んないよ!」
下を向いてなんだかムキになって答えるシンジ。
アスカはアスカでシンジの答えにがっかりしている。
「…つまんないオトコ」
リョウジに言われたからかは不明だが、アスカがシンジに対してちょっとドキドキする
ネタを振ってくれたのだから、がんばって応えて欲しかったんだがなぁ。
遠ざかる足音。アスカがプールサイドの向こうに歩いて行く。
少し早足に、キビキビとした足取りで歩く。
内面からにじみ出る、己への自信の表れのようだ。
向こうに着くと屈み込んで何かを始めた。
たぶん、スキューバの準備なのだろう。
ざばっ
近くで水音がする。
レイがプールから上がってきたのだ。
髪の毛を無造作に拭き、そのままタオルを羽織るようにしてビーチチェアに腰掛ける。
テーブルの上のぶ厚い本を取り熱心に読み始める。
なんだかこの場所に居辛いシンジ。
…うらやましい話だがなぁ。
そんなシンジにアスカが声をかける。
「見て見てシンジ!バックロール・エントリー」
ボンベを背負ったアスカが、後ろ向きにプールに飛び込む。
機嫌は直ったようだ。
その子供らしい行動と、ドキドキさせる行動。
その落差にぐったりとなるシンジ。
はぁぁぁ、と大きな溜め息をついてパソコンに向かった。


241 :10:03/05/12 20:35 ID:???
東京湾・お台場と呼ばれていた水域。
セカンド・インパクトにより引き起こされた津波と水位の上昇で放置区域となった場所。
そこに新たな異変が生じていた。
有感・無感の群発地震が続き、関東大震災の発生かと思われた矢先、突然このお台場で
50m程の水柱が観測され、続いて海底が隆起して小さな火山島を形成した。
高さ約50m、直径約1km、火口の直径50mの、なだらかなモノだ。
時折噴煙を噴出しているが、火山弾や溶岩の噴出はあまりない。
何らかの原因で海底火山が噴火し、マグマが東京湾海底に噴出され、海水と接触し水蒸気
爆発を起こしたのであろう、との見解が識者から提出された。
この様な例は1989年7月の伊東沖群発地震でも発生しているが、今回何故、東京湾で発生
したかについてはまだ解明できていない。

ネルフ・第一発令所。
「お台場火山の観測データは、可及的速やかにバルタザールからメルキオールへペースト
してください」
オペレーターの声が流れる中、スタッフはテキパキと仕事をこなして…いません。
マヤは恋愛小説に涙を流し、マコトは笑いを堪えながら雑誌を読んでいる。
茂るに至ってはオロカモノには見えないギターで自作の曲を演奏中だ。
対使徒戦には緊張感を持って望む彼らも、火山の観測と情報分析には興味は薄いようだ。
おまけにMAGIがどんどん仕事を片付けてくれる…。

「修学旅行?こんなご時世に呑気なものね」
リツコは報告書を読みながらコーヒーを飲んでいる。
ミサトの話にもあまり興味が無いようだ。
「こんなご時世だからこそ、遊べる時に遊びたいのよ、あの子達…」
「もし行かせるなら、緊急時の移送体制を立案しておいてよ。使徒が来ました、パイロッ
トはいません、じゃ大変よ?」
「移送体制はUN空軍を使えば3時間以内で戻れるはず。後は監督者ねぇ〜♪」
「それが本当の目的なの?呆れたわね。…アレ、近いウチにやるそうよ」
「げげ」


242 :10:03/05/12 20:35 ID:???
「お台場火山」の上をUN空軍のヘリが飛んでいる。
胴体下に設置されたカメラが火口の様子を観察している。
火山活動は沈静化しており、島には仮設観測所と観測機器が設置されている。
これにはUN陸軍の工兵隊が駆り出され、架橋工事までさせられた。
万一の脱出手段としてヘリとLCACが用意されているが、島への上陸は必要最低人数に
限られている。

ネルフ作戦会議室。
コウゾウを中心に、現地観測所からの情報を分析している。
「これでは良く解らんな」
「しかし現地からの報告通り、この影は気になります」
「もちろん無視はできん」
「MAGIの判断は?」
「フィフティ・フィフティです」
「現地へは誰が?」
「既に葛城一尉と日向二尉が到着しています」

14式大型架橋自走車が火口に停車している。
観測機「ケルマテック3」の降下準備をしているのだ。
「準備完了しました」
「降下開始」
ミサトが指示を出すと、観測機がゆっくりと降下していく。
モニターには真赤な世界が広がっていく。
200…300…400…500…。
深度が増すにつれ、観測機が悲鳴を上げるかの様に警報音を発する。
「もう限界です!」
観測機の所有者である研究所の技師が悲鳴を上げる。
「いえ、後500お願いします」
視線も動かさずミサトが答える。


243 :10:03/05/12 20:36 ID:???
1000…1100…1200…。
ピーッピーッピーッ
「耐圧隔壁に亀裂発生!」
「葛城さん!もう持ちませんよ!」
「壊れたらウチで弁償します。あと200お願いします」
ピッピッピッピッ
「モニターに反応!」
「解析開始!」
「はいっ!」
マコトがキーボードを操作する。
キュキュキュキュキュキュキュキュキュ…。
モニターを流れていく解析データ。
「耐圧隔壁、限界です!」
その声とほぼ同時にピーーーーという警報音が流れる。
「ケルマテック3、圧壊・爆発した模様です…」
「解析は!?」
「ぎりぎりで間に合いましたね。パターン青、…使徒です」
モニター画像には、人間の胎児に似たモノが映し出されている。
ミサトはゆっくりと振り向くと静かに宣言した。
「これより『お台場火山観測所』お呼び観測データは全てネルフの管理下となります。
一切の入・退室を禁じた上、過去の事象は全て部外秘とします」
現場をマコトに任せて、ミサトは14式大型移動指揮車に駆け込みネルフ本部と連絡を取る。
「碇司令にA―17発令を要請して!大至急ッ!」
「!気をつけてください、これは通常回線ですよッ!」
「判っているわ!さっさと守秘回線に切り替えてっ!」
リツコやマヤはもちろんだが、コウゾウまでがにわかに緊張した。


244 :10:03/05/12 20:37 ID:???
ネルフ本部・小会議室。
薄暗い部屋の中、テーブルからの灯りが出席者の顔を照らしている。
7人の男達が会議を開いている。
「A―17!?こちらから討って出るのか?」
「そうです」
「だめだ、危険すぎる。15年前を忘れたとは言わせんぞ」
「これはチャンスなのです。これまで防戦一方だった我々が始めて攻勢に出る為の」
「リスクが大き過ぎるな」
「しかし生きた使徒のサンプル、その重要性は既にご承知の事でしょう」
「…失敗は許されん」
キールの声が総意なのだろう、会議は終了した。
無論、許可は下りたのだ。
「失敗、か。その時は人類そのものが消えてしまうよ。…本当に良いんだな?」
残されたコウゾウがゲンドウに尋ねる。
しかしゲンドウはそれには答えず、ただ口元を歪めて笑うのだった。


245 :10:03/05/12 20:37 ID:???
ネルフに緊張感が戻ってきた。
未体験の作戦、しかも初の対使徒先制攻撃。
全職員が作戦準備に余念がなかった。
もちろん、エヴァとその操縦者も例外ではない。
なにしろ作戦成功の際には修学旅行に行けるのだ。
早速ミーティングが開かれた。
「これが、使徒、ですか?」
「そうよ。まだ成体になっていないサナギの状態みたいなモノね。今回の作戦は使徒の
捕獲を最優先とします。出来得る限り原型を留め、生きたまま回収する事」
「出来なかった時は?」
「即時殲滅。良いわね」
『ハイ』
「作戦担当者は…」
「ハイハ〜イ、私が潜る!」
アスカが挙手しながら陽気な声を出す。
「アスカ、お願いね」
「こんなの楽勝じゃん♪」
意外そうなシンジとレイ。
「…私は」
「特殊装備は初号機には規格外なのよ」
マヤがレイに説明するのだが、何故か説明不足の感がある。
それはもしや体型に合わせた特注品という意味なのか?
だったらレイには胸がキツイとか、ウェストがぶかぶかだとか…。
微妙な問題なので明言は出来ない…全てはただ闇の中に。
「レイは地上でバックアップしてもらうわ」
「ハイ」
「シンジ君は…」
「当然、私をエスコートする役目よね」
シンジ、がんばれ!オトコを磨けよ!
「A―17が発令された以上、すぐに出るわよ、準備して」
『ハイ!』


246 :10:03/05/12 20:38 ID:???
「耐熱耐圧仕様のプラグスーツといってもいつものと変わらないみたいですけど…」
シンジが着替えを終えてあちこちを比べている。
「右のスイッチを押してみて」
リツコがリストを見ながら答える。
スイッチを押すと、プシュッ!という音と共にスーツがどんどん膨らんでいく。
どうやらスーツ内部に液体が注入されているようだ。
「わわわ、ナンですかコレ?」
「プププ。笑っちゃう格好ね、バカシンジ♪マゲとフンドシを着けたら相撲取りね」
「アスカの方も準備できているわよ」
リツコが淡々と言う。
「…何よ、コレぇ?」
「耐熱耐圧核防護服。局地戦用のD型装備よ」
それはまるでクマのぬいぐるみである。
「へぇ、さすがアスカの装備品だ。クマの着ぐるみかぁ。子供らしいや」
シンジが先程のお返しとばかりにからかう。
「うっさいわねェ!」
「さっさと用意して!実験…作戦開始が遅れるわよ」
それが本心ですか、赤木博士。

エヴァ専用輸送機が東京上空にさし掛かる。
初号機は通常降下が可能だが、弐号機は防護服の損傷を恐れてパラシュート降下だ。
しかも、先に降下した初号機が弐号機を地上でキャッチするという念の入れ様である。
「エヴァ初号機・弐号機、到着しました」
カール子がミサトに報告する。
「両機はその場にて待機。レーザーの打ち込みとクレーンの準備を急いで」
「了解」
「ねぇミサト。加持さんは?」
「あのヴァカならいないわよ。仕事無いもの」
「ちぇっ、せっかく加持さんにもいいトコ見せようと思ったのに」
…加持さん「にも」?他の人は誰だい?もしやシンジなのか?うひょひょひょ。


247 :10:03/05/12 20:39 ID:???
箱根ロープウェイ。
リョウジが物見遊山をしている…ように見える。
ロープウェイの乗客は二人。リョウジと犬を抱えたご婦人だ。
二人共視線を合わさない。だが会話は行われている。
「A―17の発令ね。それには現資産の凍結も含まれているわ」
「お困りの方も、さぞ多いでしょうなぁ。明後日にはアレの公式発表がありますからね」
「なぜ止めなかったの?」
「理由がありませんよ。発令は正式なものです」
「でも、ネルフの失敗は世界の破滅を意味するのよ」
「彼らはそんなに傲慢ではありませんよ」
人類の存亡をかけた戦いの直前に、ネルフに対する不満を持つ勢力がいる…しかもリョウ
ジはそれらと接触をしているのはなぜだろうか…?。

モニター越しに上空の光点を見つけたのはシンジだった。
「何ですか、アレ」
「UN空軍が空中待機してるのよ。この作戦が終わるまでね」
マヤが答える。
「手伝ってくれるの?」
アスカが、嬉しそうに聞く。しかし、リツコの答えは冷淡な現実を伝えるものだった。
「いえ、後始末よ。私達が失敗したときのね」
「…どういうこと?」
「使徒をNN爆雷で熱処理するのよ、私達ごとね」
「ひっどーい!」
「…そんな命令、誰が出すんですか?」
「碇司令よ」
既に馴れたと思っていたシンジだが、現実はまだシンジの想像を超えている。


248 :10:03/05/12 20:40 ID:???
「レーザー作業終了。進路確保」
レーザーが引っ込み、捕獲装置を手にした弐号機がせり出してくる。
「D型装備異常無し」
「弐号機、発進位置につきました」
「了解。アスカ、シンジ君、準備はどう?」
「いつでもいいわ」
「…発進」
クレーンの滑車がガラガラと回転を始める。
レーザーにより穿たれたマグマの穴に近付く弐号機。
「うっわぁ、熱そう…」
「煮えちゃだめだ!煮えちゃだめだ!煮えちゃだめだ!煮えちゃだめだ!」
「弐号機、マグマ内に入ります」
「シンジ、お先にどうぞ♪」
「え?」
「ジャイアント・ストライド・エントリー♪」
アスカがマグマに入る直前、脚を前後に開く。
アスカの意図に気付いたシンジが溜め息をつく。
「ねぇ、こんな事して楽しいの?」
「アンタのその情けない顔を見るのは楽しいわ」
モニターを見ながらミサトが呆れる。
「…死と隣り合わせだってのにまぁ…。仲が良いわねぇ」
「青春、ってヤツですかね」
「鬱々とやられるよりはマシだわ」
そりゃそーだ。


249 :10:03/05/12 20:41 ID:???
マグマの中をゆっくりと沈降する弐号機。
「現在深度170沈降速度20各部異常無し。視界はゼロ、何も解りません。CTモニターに
切り替えます」
シンジがいつにもまして真面目に作業している。
「…これでも透明度120か…。アスカ、そっちのモニター、ちゃんと見えてる?」
「見えてるけど何も見えないわよ」
「接触予想地点はまだ先だよ」
「深度、400、500、600…」
深度700を過ぎた辺りから、防護服に軋み音が発生し始めた。
「…900、1000、安全深度オーバー。1100…」
「二人共、かなり緊張していますね。さっきまであんなに賑やかだったのに」
「…もしもの場合は骨さえ残らないでしょうからね」
「ATフィールドを上手く展開できれば救出は可能よ」
「深度1300。接触予測地点です」
「アスカ、何か見える?」
「反応無し、居ないわ」
「思ったより対流が速いようね」
「目標の移動速度に誤差が生じています」
「再計算急いで。作戦続行。再度沈降よろしく」
「え?」
ミサトの、あまりにも素っ気無い指示にマコトが思わず振り返る。
「再計算を待って行動した方が良いんじゃあ…」
「時間との戦いよ。危険な場所に長く居て良い事なんて無いわ。再度沈降急いで」
「…了解」


250 :10:03/05/12 20:42 ID:???
「沈降再開。深度1300、1400…」
バシィン!!
「第2循環パイプに亀裂発生!」
「深度1500。限界深度オーバー!」
「目標とまだ接触していないわ。続けて。…アスカ、どう?」
「さっさと終わらせてシャワー浴びたい」
「僕もです。スーツがべっとりして気持ち悪いです。プラグスーツと言うよりサウナスー
ツみたいです…」
「今夜は温泉に連れてってあげる。もう少しがんばって」
『ホント《ですか》!?』
バシィン!
一瞬緩んだ表情も、循環パイプの破裂音で凍り付いてしまう。
「限界深度+120」
バキン!
「エヴァ弐号機、プログナイフ喪失」
防護服の左足に装着されたナイフの止め金にヒビが入り、はじけ飛んでしまったのだ。
「限界深度+200」
「葛城さん!もうこれ以上は…。今度は人が乗っているんですよ!」
「この作戦の責任者は私です。続けてください」
マコトが堪え切れずに具申するが、ミサトの意志は覆らない。
「ミサトの言う通りよ。大丈夫、まだイケるわ。シンジはビビッてるみたいだけど」
「そっちだって、心臓バクバクさせてるじゃないか!」
「アンタがヘマしないか心配なだけよ」


251 :10:03/05/12 20:43 ID:???
突然、ソナー音がカン高くなって行く。
「深度1780。目標予測修正地点です」
場の緊張感が一気に高まる。
「居た…居ました、ミサトさん!」
「使徒を映像で確認ッ!」
「捕獲準備!」
弐号機の手にしている捕獲装置からアームが伸びて発光し始める。
「お互い対流に流されているから、接触のチャンスは一度しかないわよ」
『了解』
「目標と接触まで後30」
「相対速度2.2、軸線に乗りました」
使徒とすれ違いざまに、弐号機が捕獲装置を覆い被せる。
光に包まれる使徒。
ピーッという音と共にモニターに「捕獲完了」の文字が浮かぶ。
「電磁柵展開、問題なしです。目標捕獲しました、ミサトさん」
シンジの声に、張り詰めていた空気が弛緩していく。
「二人共ご苦労様。早く上がってらっしゃい。収容、急いで」
「了解。捕獲作戦終了し、これより浮上。バラスト切り離します」
あちこちに取り付けられていた重りが次々に外され、弐号機がゆっくりと浮上していく。
雑然とした感のある仮設指揮所で、リツコがミサトにコーヒーを差し出す。
「緊張がいっぺんに解けたみたいね」
「そう?」
「あなたも今日の作戦、怖かったんでしょ」
「ま、ね。ヘタに手を出せばアレの二の舞だものね」
「そうね。セカンド・インパクト…、二度とごめんだわ」
「さ、もう一頑張りするわよ。地上作業班は準備にかかって」
やや弛緩しすぎた雰囲気をミサトが締める。


252 :10:03/05/12 20:46 ID:???
「ねぇ、どうして使徒が火山の中なんかにいたのかな?」
「アンタバカぁ?そんなの解る訳ないじゃない」
「アスカでも解らない事、あるんだね」
「当ッたり前じゃない!使徒が何か、ってのも解んないのよ?」
「…」
「第一、そーいうコトを考えるのは赤木博士の仕事なんじゃないの?」
「MAGIによれば、13%の確率で日本海溝の海底火山爆発と関係しているみたいよ。海底
火山とネルフ本部を結んだ線上の近くに現れたんですものね」
無線からリツコの声が聞こえて驚く二人。
「私達、いえ地球上の生命誕生については諸説あるけれど、海底の熱水環境下での生命発
生というのが今回のケースに当てはまるかも知れないわ。高温、高圧、還元ガスと金属イ
オン濃度が高く活動的な環境…。擬似環境下での実験も行われていて、それなりのデータ
もあるの。まだ可能性にしか過ぎないけれど」
ふんふんと聞き入っているアスカ。
シンジにはさっぱり解らない。
「つまり化学的進化、ってコトね。それにしちゃあ時間がムチャクチャじゃない?」
「そうね。十数億年がほんの二週間ですものね。でも、使徒の非常識さは知っているでし
ょう?」
「納得できない!」
「私もよ。それにあくまでも可能性よ。でも今までの使徒は全て海から来ているわね」
「そんなの、日本が島国だからじゃないの」
「そうかもしれないし、違うかも知れないわ。使徒が生まれてくるのか、活動停止状態か
ら覚醒するのかも解っていないんですものね」
リツコは少し考えてみる。
「多様な可能性が様々な場面で出現するとしたら?科学者が実験するように、何者かが
地球を舞台に実験している…?なら、その存在を何と呼べばよいのかしら…?」
アスカとシンジは、既に別の話題でケンカを始めていた…。


253 :10:03/05/12 20:47 ID:???
地上に帰還した弐号機が速やかにD型装備を除装している。
「く〜ッ!この開放感!日本の空気がこんなに美味しいなんて知らなかったわー!」
ん〜、と身体を伸ばして深呼吸するアスカ。
「アスカ、レイと一緒に使徒の収容作業を手伝って頂戴」
「は〜い。…人使いが荒いんだから」
ぷつぷつ文句を言いながら捕獲装置に近付くアスカ。外部電源を接続している。
「ファースト、どう?何か異常はある?」
「今の所、何も無いわ」
「ふふん、使徒もこんな格好じゃ、脅威にもならな…」
その時、急に使徒が活動を始め、形態が変化していく。
「何よコレぇ〜ッ!?」
「まずいわ!孵化を始めたのよ!…計算より早すぎるわ!」
「捕獲装置は?」
「とても持ちません!」
電磁網を突き破ろうとする使徒の腕が蠢いている。
バチィッ!バチバチッ!
「捕獲装置を破棄!使徒の殲滅を最優先!可能な限りサンプルも収集せよ。作業員は撤収
急げ!」
ミサトの命令が飛ぶ。
「またムチャな注文をするわねッ!」
プログナイフを取り出そうとするアスカが気付く。
「しまった、ナイフは落としちゃったんだわ。ファースト!ナイフの予備は?」
レイが持っていたナイフをアスカに投げ、腰につけた予備を手にする。
身構えるアスカ。
「いつでもかかってらっしゃい」


254 :10:03/05/12 20:48 ID:???
捕獲装置を突き破った使徒は、四つ這いのままアスカを見据えている。
先程まで胎児の形をしていた使徒だが、現在は細長い手足を持った人型をしている。
なにより驚くのは、重力に抗っていることだ。人間の新生児はまだ重力に勝てない。
正常な発達を経験しながら四肢や頚部・体幹を重力下で動かせるようになる。
じわり、と使徒が蠢き、アスカの方ににじり寄る。
「くッ!」
ここまで人型に近いとアスカもやり辛そうだ。思わず後ずさってしまう。
それを追う様にして使徒が続く。
使徒の後ろからレイが近付き、後足にナイフを突き立ててサンプルの回収を図る。
ギイィィィィッ!
使徒が振り向きざま左手を振り回し、レイを横薙ぎにしようとするが一瞬早く逃れるレイ。
すかさず間合いを詰めるアスカ。
だがナイフを振りかざそうとしたとき、使徒が振り返る。そして同じポーズを取る。
「…まさか、刷り込み現象なの?」
「刷り込み、って、あのヒヨコとかの?」
リツコの言葉にミサトが愕然とする。
「じゃ、ナニ?あの使徒は初めて見た動くアスカを親だと思って追従行動をしてるの!?」
「そうだと思うわ。レイには攻撃をするけれど、アスカには無防備で、ただ模倣している
だけだもの」
突然、使徒がアスカに飛び掛り、胸の辺りに噛み付く。わずかに出血が見られる。
「痛ッ」
「攻撃してるわよ?」
「良く見て。あれは甘噛みよ。もしくは授乳キボンヌ?」
「…どーすりゃいいのよ?」
その時、またも使徒の形態に変化が現れ始めた。
ゆっくりと手足が太くなり、頭部が形成され、やがて製作途中の彫刻のように変わる。
…シルエットがどことなくアスカに似ている。
「!レイ!使徒のサンプルを採取して!急いで!」
「どしたの、慌てて?」
「アスカの遺伝子を取り込んで、形態を変化させているのかもしれないわ!」
「なんですって!?そんなコトが出来るの?」


255 :10:03/05/12 20:49 ID:???
レイが後ろから使徒の背中をめがけてナイフを振るい、肉片を引きちぎると一旦距離を置
いてケースにソレを収める。
使徒はアスカから一定距離以上、離れようとしない。
「使徒の殲滅、急いで!」
「この私に姿形を似せたってッ!」
アスカがナイフを構え直す。
「アンタは私に倒されるのよッ!」
横薙ぎにナイフを振るう弐号機。
同じ動作を真似る使徒。
胸の辺りが切り裂かれるが見る間に修復されていく。
後ろからまたレイのナイフが使徒の首筋を狙う。
ざっくりと切断される髪の毛に似た部分。
使徒のその姿を見て、アスカの古い記憶がよみがえる。
「アスカ!しっかりしなさい!使徒を殲滅する事だけに集中しなさい!」
ミサトの声が聞こえる。
いや、他の人達の声も響いていた。

《殲滅しろ》
《使徒に勝つのだ》
《使徒を倒すのよ》
《使徒を倒さなければ私達に未来は無いわ》
《使徒の殲滅を優先してください》
《使徒を殺さなければ》
《使徒を滅ぼさなけりゃオレ達が死ぬ》
《使徒を殺すことが与えられた命令》
《殺さなくちゃ殺さなくちゃ殺さなくちゃ殺さなくちゃ》
《まま ワタシヲコロサナイデ》
「ひッ!!!!」
アスカの精神が乱れていく。


256 :10:03/05/12 20:50 ID:???
廊下を駆けていく少女。
《ママ、私を見て!》
ショートヘアの金髪の少女。
《髪型は変えたわ!》
パステルピンクのワンピースを着た少女。
《お洋服も変えたわ!》
泣き出しそうな少女。
《お願いだから、私を見て!》
勢い良くドアを開けて叫ぶ少女。
《ママ、私がアスカよ!》
自慢だった金髪のロングヘアは、不揃いのショートヘアになっている。
おそらく鏡を見ながら自分で切ったのだろう。
いつもおしゃれに着飾っていた服も、ごく普通のパステルピンクのワンピースだ。
ギャッジアップされたベッドで人形と戯れていた女性がゆっくりと振り返る。
《まぁ驚いた。アスカちゃんにそっくり…。ね、アスカちゃん》
女性がにっこりと微笑み、人形を少女に向ける。少女はこの人形の真似をしたのだ。
《違うわママ!私がアスカよ!》
少女がベッドに駆け寄り、女性の手を握る。
《本当にびっくり。アスカちゃんが二人いるわ》
女性の手が少女の頭を優しく撫でる。
《ママ…》
束の間の幸福に浸る少女。
《ね、お顔を良く見せて頂戴》
頬をなでる暖かい女性の手。
《うん》
にっこり笑って応える少女。
《本当にアスカとそっくり…でもね》
少女の首に手を回す女性。
《ママ!?》
訝しむ少女。
《アスカちゃんは一人で良いの。貴方はいらないの。だからお願い、シンデチョウダイ》


257 :10:03/05/12 20:51 ID:???
「嫌ァアぁああぁあああぁぁぁぁぁッ!」
「アスカ!?どうし、うッ、何だこれ、うぁあッ!」
「弐号機の心理グラフ、乱れています!パルス逆流!パイロットへの干渉、急激に増加!
…パイロット、失神しました!」
「神経接続切断急いで!」
「だめです、信号を受け付けません!」
「エントリープラグ強制排出!」
ガコン  プシュッ!    ガン!ガランガン!
地上に叩きつけられるエントリープラグ。
ゆっくりと崩れ落ちる弐号機。
「レイ、後は任せたわ!何とかして頂戴!」
しばらく考えていたミサトが顔を挙げる。
「UN空軍にNN爆雷をスタンばらせて。それから…碇司令に連絡して核の使用許可を
もらっておいて」
「!」
「サンプルは直ちにネルフ本部に搬送。最低限の任務はやっとくわよ」

アスカは朦朧とする意識の中で状況を傍観するしかなかった。
自分を覗き込んでいる使徒と、その背後から忍び寄る初号機。
使徒の右肩越しに振り下ろされる初号機のプログナイフ。
振り返りざまバックハンドブローを叩き込む使徒と、それをものともせずに逆手に持った
ナイフを胸の光球に突き刺す初号機。
仰向けに倒れる使徒。その使徒に馬乗りになり、光球にナイフを何度も突き立てる初号機。
使徒の胸元から火花が散った。
使徒から飛び降り、自分を抱きかかえて走る初号機。
視界の端で爆発が起こり、天空に伸びる光の十字架。
使徒は殲滅された。
それを見届けて、アスカの意識は途切れた。


258 :10:03/05/12 20:52 ID:???
アスカの意識はすぐに回復した。
一時的な情緒不安定との事で、問題はなさそうだった。
シンジについては落下の衝撃も心配されたのでネルフ本部の医療センターに搬送され
温泉はお預けだ。
その代わり、クール宅急便でペンペンがやってきた。差出人はリョウジ。
これを知って激怒したミサトが電話をかける。
「アンタ、人ン家を何だと思ってんの!?」
「ドアの外でウロウロしていたんで、可哀想だから届けたんだ」
グゥの音も出ないミサト。

夕暮れの中、ミサトとアスカが露天風呂に入っている。
ミサトの胸の傷痕をちらりと見るアスカ。
それに気付きあっさりと、しかし具体的には話さないミサト。
「セカンドインパクトの時に、チョッチね」
「…私のことも知っているんでしょ、全部」
ん〜、と少し考えてから
「―――ま、仕事だからねぇ。お互いもう昔の事だもの…気にする事無いわ」
「…シンジ、解っちゃったかな?」
「…すぐに気絶したから、大丈夫よ」
しばらくの間、二人は海に落ちる夕陽を眺めていた。

次回予想。
めでたく修学旅行に行くことが出来た、レイ・シンジ・アスカ。
旅先での様々な出来事は、青春時代の貴重な思い出となるのか?
一方、オトナの世界ではそれぞれの思惑が交錯し、現実が悲鳴を上げる。
次回「夢と希望と現実と」
ま、アテにせず待っててくれ。俺が言えるのはそれだけだ。
…葛城の代わりも大変だよ。じゃあな。


259 :10:03/05/12 20:53 ID:???
>>223
基本設定の一部が原作を離れていますが…。それでも原作に忠実なのには理由があります。
エヴァFF作家でも「本編は見ていない」という発言がある今日、未見の人も見据えて、原
作に忠実と見せて裏切る、或いは逸脱していると見せて本編に戻るという作風で騙したい。
例えば、エヴァを未見の人にエヴァらしさを提示しつつ、実際に見た時に「あれ?」と思
わせたり、見た事がある人に「そんなセリフあったか?」と思わせたり…。ま、エヴァ見
て騒ごうよ、というのが大きいのですが…。DVDを買ってセリフチェックでも良し!
個人的には、少しのズレがだんだん大袈裟になって行くとか、ズレが振幅しながらどっか
に行っちゃうなどが好きなのですが、さて、上手くいきますか?WOWOWがこの時期に放
映するとは、知らなかったなぁ。レイ・アスカがエヴァであることの面白さは、エッチ要
素を抜きにして考えれば「今の所は」こんなものかも知れません。1・2話は設定の説明
が沢山入ったからでしょうか?ま、今は伏線を張っている時期です。
>>224
そういう訳でまだまだやる気です。ごめんなさいね。
>>225>>226.>>228>>229
保守ご苦労様です。感謝いたします。
>>227
希望の絵は手に入りましたか?そっちの方は全然ダメですのでご勘弁を。
>>230
この文体はいつもの貴方!…ですよね?それにしては時間が経過しすぎているような…。
は!まさか、新手の皮肉攻撃?いやいやそんな…。いやしかし。うきー。
>>231
というわけですから、額面通りに受け取らなくても良いかも〜?
>>232
がんばって乗ってくだちぃ。

さて。やっと7話まで来ました。最後までやるつもりならまだ1/4ですね。
おまけに4月は1本だけしか書けませんでした。どうなる事やら〜。


260 :10:03/05/12 20:54 ID:???
「刷り込み=Imprinting」を誰が提唱したかを調べてみたら何と!K・Lorenzという
ドイツの学者さんでした。もしや、キール?と思ってよく調べたらKonrad・Zacharias・
Lorenzさんでした。そうそう都合良くはいきませんね。
だれかのFFで「マグマ・ダイバー」において霧島マナが自分に変身した使徒を倒す、とい
う作品があるとか?つくづく奥が深い世界ですが、この程度で凹んでいては話になりません。
前進あるのみ。

関東で地震がありました。みなさん、大丈夫でしたか?


261 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:03/05/13 07:39 ID:???
読みにくい

地震で落下したブツが足に当たって怪我
今入院してる。親だけど。

262 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:03/05/17 15:48 ID:???
10さん乙



263 :山崎渉:03/05/28 13:40 ID:???
     ∧_∧
ピュ.ー (  ^^ ) <これからも僕を応援して下さいね(^^)。
  =〔~∪ ̄ ̄〕
  = ◎――◎                      山崎渉

264 :10:03/06/09 01:01 ID:???
第八話「夢と希望と現実と」

どこかの会議室で、誰かが会合を開いている。
「…で、どうかね?」
「国民は落ち着いています。株価も安定を取り戻しています」
「セカンド・インパクトで地獄を見たのだ。今更あの程度では驚くまい」
「ふむ。当座の使徒撃退はネルフに任せるとして、その資料は入手できたのか?」
「全て、特別法をタテに独占しています」
「あれだけの事実の集大成をか!?」
「エヴァンゲリオンだけでは飽き足りんとみえる」
「情報公開法をタテに資料提出を認めさせましたが、出てきたのはこれです」
文章のほとんどが黒く塗りつぶされた書類がテーブルに叩きつけられる。
「ナメられたものだな。…我々に有利な法整備も進めてはいるが、これでは…」
「ネルフには不透明な部分が多すぎるからね」
「エヴァンゲリオンひとつにしても、テクノロジーのレベルが違い過ぎる」
「…独占は、いかんな…」
「資金も、ですね?」
「そうだ。金は必要だよ、生きて行く限りね」
「人を動かすのは、経済、ですか」
「その為には『話し合い』が必要なんだが…あちらはどうも、興味が無いようだ」
「我々の『使徒迎撃計画』はどうなっている?」
「テストは順調です。発表会も予定通りに行います。皆さんのご期待にお応えできますよ」
「頼むぞ。アレは我々の希望だからな」
「わかっています。私にとっても夢ですから」


265 :10:03/06/09 01:02 ID:???
ネルフ本部・執務室
ゲンドウが電話をかけている。
『…また君に借りが出来たな』
『返すつもりも無いんでしょ?彼らが情報公開法をタテに迫っていた資料ですが、ダミー
も混ぜて適当にあしらっておきました。政府は裏で法的整備を進めていますが、近日中に
頓挫の予定です。…で、どうです?例の計画の方もこちらで手を打ちましょうか?』
『いや、君の資料を見る限り問題はあるまい』
『では、シナリオ通りに』
『現実を直視して戴こう』


266 :10:03/06/09 01:03 ID:???
早朝の第3新東京市空港。
既に生徒のほとんどが集まっている。
今日はシンジ達が修学旅行に行く日なのだ。
二泊三日の沖縄旅行…過酷なスケジュールなのにまだ姿を見せない者がいる。
引率の根府川先生が、チラチラと時計を気にしている。
ズキャキャキャキキキョッ!
空港の駐車場に、タイヤを鳴かせながら青いルノー・アルピーヌが飛び込んでくる。
どよめく一同。
「来た!来たでェ!ミサトさんや!」
トウジがうれしそうに叫び、ケンスケがすかさずカメラを回す。
「ま、間に合った…」
シンジがバッグを抱えて泣きそうな顔で降りる。
運転席からは、ばっちりキメたミサトが颯爽と降りてくる。
「遅い、ミサト!どーせ衣装選びでモタついたんでしょ!」
こうなる事を予測して、一足先に出ていたアスカが声をかける。
「当然!なんたって沖縄よ、オ・キ・ナ・ワ。しかも憧れの修学旅行♪」
今のミサトにはイヤミも通じない。
「葛城さん、登場手続きを急ぎたいのですが…」
根府川先生がおずおずと申し出る。
「は!申し訳ありません。ではよろしくお願いします」
表情を引き締めミサトが答える。
ミサトはネルフ職員としてシンジ達に同行し、万一の場合に対応できるようにしている。
明日はリョウジと交代するのだが…。


267 :10:03/06/09 01:04 ID:???
飛行機内・雑談をしている生徒達。
ミサトをチラチラ見ながらヒソヒソ話をしているグループがある。
「あれ、誰?」
「碇の保護者だって」
「ナニ?碇ってあんな美人に保護されてんの?」
「くゥ〜ッ、俺も保護されてぇ…」
「アスカちゃんに加えて、あんな綺麗なお姉さんと同居とは…」
「許せんなぁ」
「今夜の生贄は決まったな」
「締め上げてドロを吐かせてやろう」
「…気になる事がもうひとつ」
「ナニ?」
「トウジやケンスケ、あのお姉さんと知り合いみたいだぞ?」
「…ほぅ、あいつらも裏切り者か?今夜が楽しみだな」
「異議なし」

「いゃぁ〜こうしてミサトさんと旅行が出来るとは、まるで夢を見ているみたいですわ」
「ありがと。でも一泊だけなのよねェ〜」
「…仕事でもあるんですか?」
「ちょっち、ね。代わりに加持君が来る事になってるからヨロシク」
「本当!?本当に加持さんが来るの?」
アスカが少し離れた席から大きな声で割り込む。
「これは運命ね!…南の楽園で束の間のバカンス…やがて二人は一線を越えて…」
「アスカ、妄想は程ほどにしといた方が…」
シンジが呆れ顔でたしなめる。
「うッさい、バカシンジ!私のささやかな希望にケチつけないでよッ!」
「…ねぇアスカ。加持さんって、そんなにカッコいいの?」
アスカの横に居たヒカリが気を利かして聞いてあげる。
「当然!加持さんの前に良い男なく、加持さんの後に良い男なし、よ」
そしてリョウジについて事細かく説明を始めた…。


268 :10:03/06/09 01:05 ID:???
皆が想い想いのことをおしゃべりしている中で、ぽつんと独りで居るレイ。
窓際の席に座り、その小さな窓から外を眺めている。
「レイ、何を見ているの?」
ミサトが隣に座り声をかける。
「空…雲…その下に見える街…空を飛ぶのは始めてじゃないのに、違うモノに見える」
「そうね。任務ではない、楽しい旅行ですもの」
「解らない…任務でないと、何故楽しいの?」
「…作戦目標を自分で決定できる。戦術を自分で決定できる。計画ももちろん自分で決定
できる。つまり、自由って事なのよ、何をするのも」
ミサトは、レイに解り易い様に説明してみた。
過去のデータを全て抹消されている少女…。
その事実は、レイそのものがネルフの最高機密であることを示す。
そして目の前の少女は明らかに「普通に育てられた人間」ではない。
アスカやシンジのように、過去に何らかのアクシデントがあった、というレベルではない。
エヴァである事以外に、レイにどんな秘密があるのか?
自分の持っている知識の質と量に疑問を持ちながら、ミサトは任務を遂行している。
リツコはどこまで知っているのだろう?ふと、そんな疑問が脳裏をかすめる。
「自由…」
「そう。レイ、あなたのしたいことって何?」
「したいこと…解らない…」
「…ま、いいわ。この旅行が、その『何か』を見つけるキッカケになれば良いわね。任務
の時と景色が違うと感じられるなら、大丈夫よ」
「…」
「それから、これ。沖縄のガイドブックよ。これから貴方達が行く所のデータが入ってい
るわ。目を通しておくと良いわ」
ガイドブックをレイに手渡すと、ミサトは席に戻って行った。
ぱらぱらとガイドブックをめくるレイ。
青い空、紺碧の海、赤い建物、そしてあちこちの観光スポット…。
それらの写真を眺めていたレイは、まず地図のページを開いて位置関係を記憶し始めた。


269 :10:03/06/09 01:06 ID:???
「来た来た来た来たーーーッ!ついにワシは沖縄に来たんじゃあ!」
「青い海、青い空、白い砂浜、夜のビーチで見る南十字星…ロマンチックぅ」
「泡盛だよ泡盛」
「ハブとマングースショーは見られるのだろうか?」
「スキューバだ!早くスキューバに行かせてくれぇぇぇぇぇッ!」
「黒砂糖を買って来いといわれているのだが」
どこまで本気なのかわからないことを口走りながら、飛行機から降りる一同。
ロビーでは、旅行代理店の添乗員が待っていた。
「皆様、長旅お疲れ様です。私、今回の旅のご案内をさせて頂きます新東京ツーリストの
具志堅と申します。三日間ですが、よろしくお願いいたします」
「よろしくお願いしまーす」
皆、すでに浮かれているので非常に愛想が良い。
「お元気そうでなによりです。では早速観光に参りましょう。バスを用意しております」
空港前のターミナルに止めていたバスに乗り込み、観光が始まる…。
と、その前に!
「え〜皆さん。楽しい旅行ではありますが、皆さんは学生である、という事を忘れないで
ください。特にこの沖縄は先の大戦により戦場となった場所です。観光といえどそれらを
見て、歴史を学び歴史の教訓を活かさねばなりません。旅先で浮かれて、それらの人々の
悲しみに気がつかないのでは、真に残念です。いわゆる琉球という場所は古くから…」
根府川先生、大爆発しています。
これはこれで浮かれているのではなかろうか?
「…シンジ君、この先生、いつもこの調子なの?」
「はい…数学の授業の時にもこの調子でセカンド・インパクトについて延々と」
うわぁああぁぁあ、という表情になってミサトが周りを見渡す。
皆、一気にテンションが下がっている。
見かねた具志堅氏が助け舟を出す。
「先生、歴史の授業は道中ゆっくり致しましょう。まずは自己紹介をさせてください」
「…ああ、申し訳ありませんなぁ。つい、夢中になってしまいました」
「いえ、とんでもありません。では改めて」
具志堅氏が皆に向かってウィンクすると、やんやの喝采が生徒から起こる。
ツカミはオッケー。楽しい修学旅行の予感が広がっていく。


270 :10:03/06/09 01:08 ID:???
首里城を手始めに、旧海軍司令部壕、ひめゆりの塔、平和祈念資料館と巡って行く…。
夕方、海の近くにあるホテルに到着し、食事の時間まで自由行動になった。
全客室から海が見渡せるように設計されたこのホテルは生徒達に好評だった。
おまけに一帯の海岸はホテルの所有地なのだ。
一部で、何かに対して急激に盛り上がっている雰囲気がある。
ま、無理も無いわな
既に公認カップル(笑)の田中&石川の二人が手をつないで海岸を散歩している。
周囲には、アツアツのオトナのカップルがいるのだが、これは初々しくてよろしい。
「あの二人は、今夜のパーティには参加しないよなぁ?」
「当然、一部屋用意しとかなきゃ、な」
「他にそんな雰囲気の奴らはいる?」
「どうかな?とりあえず、俺達とトウジ達が宴会をするから二つは空きができるぞ」
「じゃあさっそく皆に伝えとくか…」
「覗き禁止も伝えとけよ」
…修学旅行の夜、それは青春の一大イベント。
親元を離れ、監視の目を逃れ、友達とやる「イケナイ遊び」の数々。
何故、普通のビールがあんなに上手かったのだろう?
何故、タバコひとつでドキドキできたのだろう?
何故、あの夜のエッチが今でも思い出されるのだろう?
新東京市立第一中学校2年A組の生徒達も、このイベントの準備に余念が無いのであった。
邪魔はしないから、邪魔もするな。
参加しなくてもよいから、黙認すること。
彼女の裸を覗かれたくなければ、早めに申告するか、特別室に隔離しておくこと。
男女問題でトラブルが起きないように、申告はお早めに。
監視約、万一の時の逃走ルートの確保、隠れ場所の確認、時間稼ぎの方法…。
さまざまなルールが事前に決められ、実行されていく。
洒落で済むなら貴重な思い出だ…。
ムチャは仕方ないが、事件なんか起こすなよ。
以前、窓の外に逃げたら落下して死亡したという事件があったような…。
「これを見て真似しました」つーのも無しで。


271 :10:03/06/09 01:09 ID:???
このホテルでは食事は自室でも食べられるのだが、小さな宴会場を使った。
沖縄民謡のショーもサービスとして披露された。
そして沖縄料理が出た。
ゴーヤチャンプルの苦さに、皆、悪戦苦闘している。
ふと見ると、ミサトが根府川先生に泡盛をやたらと薦めている。
ナイス!
生徒達が様々なサインで感謝の意を伝えている。
これで先生は、最低でも夜中の1時か2時までは眠っているはずだ。
運がよければ朝まで監視が無い…。
酔いつぶれた根府川先生を部屋に連れて行ったミサトが、戻ってくるなり爆弾発言をする。
「先生は大変お疲れのご様子で、お休みになられました」
一同大歓声。
「今夜起こることは何もご存知無いと思います」
「ミサトさん、ありがとうございます!」
口々に感謝の言葉を発する生徒達。
「ですが、このホテルには他のお客様も宿泊されています。くれぐれもご迷惑の無い様に」
「はーい、判りましたぁ♪」
「以上、解散」
歓声が起こり、飛び出していく生徒達。
海岸に散歩に行く者、売店でお土産を探すもの、ゲームセンターで遊ぶ者…それらを尻目
に、幼い愛を確かめ合う恋人達…。
ドアノブに「おこさないでください」の札が掛かっている部屋の前をシンジたちが通る。
ここと隣の部屋が「指定部屋」であり、この札が掛かっていれば「使用中」というサイン
なのだ。三時間を限度として一旦退室すること、混雑しない限りは再使用も可…。
「…仲がえぇのは良いことですがな。ワシらは男同士仲良ぉしましょ」
札をうらやましそうに眺めながらも強がりを続けるトウジ。
「ミサトさん、来てくれるかな?」
「さすがにそれは無理やろ?相手の立場も考えんとナ…」
いくら話の解るミサトと言えど、未成年者と酒盛りはまずい、と判断したトウジであった。
「男は男同士、今夜は盛り上がろうや」


272 :10:03/06/09 01:10 ID:???
「今日も一日お疲れ様っした。乾杯!」
トウジの声に皆がグラスを差し出す。
グラスの中身はそれぞれ違う。
ビールだったりジュースだったり泡盛だったりウイスキーだったり…。
自分の飲める範囲で楽しむことになっている。
泥酔するまで飲酒したことの無い者がほとんどなので、狩猟は控えめにしてある。
酔うことが目的ではなく、雰囲気を重視したのだ。
「しかしアレだな。頼りになるなぁ、ミサトさんは」
「まさかあんな手で僕達を助けてくれるとは」
「で?普段もあんなにセクシィな格好なのかよ、碇?」
一人がシンジに振る。
「そ、そんなこと言えないよ」
「そんなこと言うなよ。絶対黙ってるから、な?」
「だめだったら」
「…ちッ。使えねぇな」
「ネタ振りされてんだ。敢えてノれよ、話題によ」
「そんなの、トウジやケンスケに聞けば良いじゃないか…しょっちゅう出入りしてるんだ
から」
ピクリと反応する男子達。予定変更してトウジから攻めよう。
「ほほぅ、それは初耳ですなぁ」
「んだ。そういう報告は一度もされていないなぁ、トウジ君?」
「何のことやら〜?」
トボけるトウジ。
「キミも今夜の生贄なんだよ。さ、白状したまい」
「ななな何を喋れ、言うんや?」
「ミサトさんの秘密か、もしくは洞木のこと」
「いっイインチョ?なんでワシがイインチョについて話さなアカンねん?」
「ネタは上がっているんだがなぁ。女子の間では有名だぞ?」
「なっ何が?」
「洞木な、お前のことが好きらしいぞ?」


273 :10:03/06/09 01:11 ID:???
「…何やて?アイツ、いっつもワシに突っ掛かってくるやんか!それがなんで…」
「こいつもニブいな…」
「ああ、天然記念物並みだ」
「好きな子ほどいじめてしまう…子供に良くあるパターンじゃないか」
「…ほんなら何か?惣流とワシはよぉケンカするが、あれも愛情表現なんか?」
「お。意外な展開」
「面白くなってきやがった。もっと飲ませろ」
トウジのグラスに泡盛が注がれる。
「大体、ケンカするほど仲がいい、っつーならケンスケもアスカが好きなはずやろ?
…違うねん。コイツ、アメリカ人のメル友が好きなんや」
「トウジ!」
ケンスケがトウジを制止しようとするが、他の男子が邪魔をする。
「ほほほほぉ。…もっと飲め。ケンスケ、お前も生贄だぞぉ?」
「俺達にミサトさんの事を内緒にしていた罰だ。諦めてもらおうか?」
「しまった。謀られたか…」
「さ、そうと解ったら飲んで飲んで」
「気持ちよく喋ってもらいましょうかねぇ」
「…お前達こそ、後でしゃべれよ」
「よし、まかせろ。…つーか喋りたくてウズウズしてるんだが」
「いやぁ俺も。でも誰かの恥ずかしい話を聞いてからじゃないとな」
「キッカケがいるよなぁ」
「…そのキッカケがワシらかい」
「そそ。悪く思うなよ。これも通過儀式つー事で」
「ほんならもっと面白いことしたる」
「何かな何かな?」
「一番、鈴原トウジ!女湯を覗きます!」
ぶーーッ!
酒やらジュースやらを噴出す一同。


274 :10:03/06/09 01:12 ID:???
女子達の場合、スケジュールは男子達と若干異なっていた。
夕食の後、お土産を選んだり家に電話をしたりする子が多かった。
お楽しみは消灯時間の後と決まっているのだ。
こちらは健全に、お菓子やジュースを持ち寄って恋愛について熱く語る予定なのだ。
そのために用事をさっさと済ませなければならない。
ついでに男子の隙をついて入浴するはずであったのだが…。
このホテルの屋上には海を見渡せる露天風呂がある。
入浴時間はほぼ24時間。
朝の10時から12時までの2時間だけ、清掃のために使用不可となる。
その露天風呂に、アスカを先頭に5〜6人の女子が向かっている。
レイやヒカリの姿もある。
「お天気もいいから星も眺められるわねー」
「露天風呂って、覗かれたりしないかしら?」
「この高さなら問題ないんじゃあないの」
「ちょっとドキドキするわね」
ま、旅先ですので少しだけ警戒心が弱まっているみたいです。
「…石川さん、どこ行ったのかしら?」
「それは今夜のお楽しみ♪」
「え!じゃああの話、本当なんだ」
「全ては今夜…場合によっては明日解明されるわね」
「きゃー!ナマナマシイ♪」
「ミキも予定があるなら、綺麗に磨いておきなさいよ」
「無い無い!あったらここにはいないわよ」
「もう『ご休憩』してる?」
「…妙にエロい響きね」
「こんな良い女たちを放って置くとは、ウチの男共は何してんだか」
「まったく、ガキンチョばっか」
そのガキンチョがとんでもないことを狙ってますが…。


275 :10:03/06/09 01:13 ID:???
酔って風呂に入ると危険なので、急いで水を飲みまくるトウジ達。
30分ほどで準備が出来たようで、ぞろぞろと屋上の露天風呂にやってきた。
「…コラ、シンジ!ソレは何のつもりや」
シンジが海パン着用で入ろうとしているのを見つけるトウジ。
「え、いや、その」
「風呂っちゅうモンは裸の付き合いをする場所やんか?ソレをお前…無粋なやっちゃ」
同意を得ようと振り向くと、意外に海パン着用者が多い。
「…情けない。ワシは今、日本の文化が失われて行くんを目撃しとる訳やね…脱げ!」
あ、まだ酒が残ってやがる。
「ここで裸の付き合いが出来ん、言うならお前等、当分ワシに偉そうなこと言えへんなぁ」
「解った、解りましたよ。脱ぎます脱ぎます」
皆、渋々とパンツを脱ぐ。
「ほんなら行こか。タオルは肩に引っ掛けて、胸を張って…」
「トウジ。前を隠すのはマナーだぞ?」
「じゃっしゃ!男が細かい事、言うな」
最後まで躊躇しているシンジ、置いて行かれる。
「む!女子の話し声がする…アスカちゃんがいるな」
「どーする鈴原。タダでは済まねぇぞ?」
「男が一度口にしたことや。…やったるワ」
トウジはそう言うと岩によじ登り、男湯と女湯を隔てている仕切りに手を掛ける。
ギシ、という音がする。
動きを止めて女湯の気配を探るトウジ…大丈夫、気付かれていないようだ。
もう一度仕切りを固定している岩場を見て、静かに宣言する。
「行くでェ」
両腕に力を込めて、身体を一気に引き上げる。
この時トウジがもう少し熟考していたなら、彼の人生は異なったモノとなっていただろう。


276 :10:03/06/09 01:13 ID:???
湯煙の中、知り合いの女の子達が無防備なままその肢体をさらしている。
アスカがいる、レイがいる…イインチョはいない。
ホッとしつつも、何故か残念なトウジであった。
「鈴原センセ、一発頼みますよ」
「判ってるて…よしッ!…おぉーッ、えぇ眺めやのぉ。皆さんお元気でっかぁ?」
一瞬、女湯の空気が凝固したかに思えた……そして爆発。
湯船のアスカが胸を押さえて素早く沈み込み、声のした方を睨む。
洗髪していた女の子は、ただ身体を丸めるしかできなかった。
レイは…無防備なままトウジを見つめている。
…そして静かに問いかける。
「どうしてそんな事をするの?」
「いや、そのなんちゅうか」
「何がおもしろいの?」
「いやその、面白い、っちゅーか、男なら…」
「それが貴方の望むモノ?」
「いいいや、これはただの遊びで」
しどろもどろになって弁解するトウジだが、視線はレイの身体から離れない。
レイにすれば、トウジの行動は疑問だらけなのだ。
ただ、無表情で抑揚の無い問い方をされれば、罪悪感からトウジで無くとも萎えるだろう。
「ファースト!アンタバカぁ!?早く、早く前を隠しなさい!丸見えよっ!」
アスカがじれったそうに怒鳴るが、これが騒動に拍車を掛ける。
「聞いたか?」
「おお。綾波が無防備なまま!…急がねば」
言うが早いか仕切りに飛びつく男共。
「何やってんのアンタ達ッ!…す・ず・は・ら・ッ!!くぉの女の敵ッ!!」
急いで服を着たヒカリが、仕切りの上に雁首を並べた男共めがけて洗面器を投げつける。
「皆も!何でもいいから投げるのよッ!」
洗面器、シャンプー、リンス、イス、軽石…様々なものが浴びせられる。
「あ痛ッ」
トウジの顔面に洗面器がヒットし、トウジが身体をのけぞらせる。
それと同時に仕切り板が軋み始め、男湯に向かって倒れていった。


277 :10:03/06/09 01:14 ID:???
「トウジ!これでいいんだろ!?海パン脱いでタオルは肩、胸を張って男の付き合い!」
シンジが意を決してフルチンで露天風呂に入ってくる。
「あれ…?」
でっかいフタがしてある湯船を見て、訝しげにきょろきょろと辺りを見渡すシンジ。
「やっぱりアンタもグルなのね…」
突然アスカの声がする。
湯煙の向こうで、洗面器を構えたアスカが睨んでいる。
「…なに、かな?」
「バカーーーッ!」
洗面器が飛んできて、シンジは全てを悟った。

「まったく申し訳ありませんです、ハイ。えぇもう当然修理代金はこちらできちんと…」
ミサトがホテルのマネージャーにぺこぺこと頭を下げている。
幸い、けが人も出なかった事なので、仕切り板の修理代を支払う、という事で解決した。
だが、当然ながらトウジ達にはキツイオシオキが待っていた。
ホテルの廊下で正座3時間。
「そこで死ぬほど反省してなさい!」
ミサトのお説教が終わり苦行が始まった。
遠くから女子生徒がクスクスと笑いながら眺めている。
いや、笑われるならまだ救われる。
ケンスケはミサトに手厳しく叱られてすっかりしょげている。
トウジは…なにやら物思いに浸っているようだ。
シンジは、恐ろしくてアスカの顔を見ることが出来ない。
無論、シンジは直接覗きをしていないが、止めなかったのも事実なのだから…。
ケンスケだって、メガネの無い風呂場では以下同文。
ペタペタというスリッパの音と共にアスカが近付いてくる。
脚を持ち上げてスリッパを持つと、いきなりシンジたちの頭をシバキ倒す。
スパパパパパパーーーーン!
「ノゾキなんてつまんないこと、やってんじゃないわよ!乙女の怒り、思い知ったか」
ぼそぼそと謝罪の言葉を発する男子達をもう一度睨みつけ、よぉし、と呟いて戻っていく。
トウジは…まだ呆けている…。


278 :10:03/06/09 01:15 ID:???
修学旅行二日目の朝。
ミサトはネルフの公務のため朝一番の飛行機で第3新東京市へ帰っていった。
代わりに予定通りリョウジがやってきた。
経緯はミサトから聞かされているが、現場で事実を確認すると思わずニガ笑いを浮かべた。
「…変わらないな。何も変わらない…。あの頃の俺達そのものだ」
何も知らない根府川先生と何事も無かったかのような女子生徒達に比べて、男子生徒の大
部分が陰気な顔で朝食のバイキングを食べている。
この旅行中…いや、ヘタをすればしばらくの間、彼らに安らぎは訪れない。
朝食を済ませると一行は渡嘉敷島へと移動した。
今日はスキューバダイビングが予定されている。
海岸近くの民宿に荷物を預け、海に出る準備を始める。
…ここでも「彼ら」は虐げられた。
「半径10m以内に近付かないでね!」
「きゃあ、視線が粘っこいぃ〜」
「あーカメラ持ってるぅ。また盗撮するつもりよぉ」
…いや、盗撮はしていないんだが…。

シンジは仕方なく土産物を物色していた。
「よぉ。浮かない顔をしてるじゃないか、シンジ君」
「加持さん…」
「やってくれたな。葛城が嘆いてたぞ」
「…すみません」
「誤る事は無いさ、君達の年齢ならよくある事さ。…俺にも覚えがあるよ」
「加持さんが?…どうして?」
「さて、何故かな?そうしたかった、としか覚えていない」
「…」
「もちろん後が大変だったが…こうしてへらへらと生きている。気にするな」
「僕は、加持さんとは違います」
「そうだ。だがその違いは、俺を超える男になる可能性も含んでいる。…違うかい?」
リョウジの言葉が、潮風と共にシンジの五感を刺激する。


279 :10:03/06/09 01:16 ID:???
沖縄の海は美しかった。
初心者のクラスメート達が簡単な講習を受けているのを尻目に、アスカは指定ポイントに
潜っていた。近くにはレイもいるはずなのだが、今は姿が見えない。
透明度の高い海中、水面から差し込む陽光、海底の珊瑚礁、群れ成す熱帯魚…。
アスカは、ぽっかりと穿たれた岩穴をくぐってみた。
白砂が敷き詰められた中庭を抜け、切立った壁に挟まれた通路を進むと少し視界が広がる。
10m四方の、白砂が敷かれた部屋。天井には三つの穴があり、光を取り込んでいる。
自然の力が生み出した、海底の王宮。
その玉座に就いているのは、あの無数の熱帯魚なのだろうか…?
ヒトの存在しない世界。
自分が人間でありながらアスカは、その静かで穏やかな世界にしばし心を奪われた。
そして、人間同士の様々な軋轢を思い出していた。
…不意に昨夜のことが脳裏をよぎる。
シンジはアスカ達の裸を覗いてはいない。
だが「覗いた」かも知れない。
誰の裸を?
誰でも?…シンジは誰の裸でも良いのだろうか?
それは単なる性欲の発露であり、対象に人格を求めていない。
アスカにはそう思われた。
そしてそれはアスカに怒りと切なさをもたらした。

しばらく海底宮殿で人間についてテツガクしていたが、腰につけたタイマーが刻を告げる。
左手のダイバーズウォッチに目をやると潜水開始から40分が経過していた。
アスカは海底宮殿を名残惜しそうに見渡すと、ゆっくりと天井の窓から海面を目指した。

海底散歩というロマンチックな時間は終わり、アスカは現実に引き戻される。。
洋上のボートにはリョウジが待っていた。
バカンスの終わりがあっさりと告げられる。
「東京でトラブル発生、エヴァ出撃だとさ」


280 :10:03/06/09 01:16 ID:???
時間を少し戻そう。
第3新東京市に戻ったミサトは、急いでネルフの略礼服に着替えた。
今日は旧東京で、とある民間企業の開発したロボットの御披露目があるのだ。
工業・土木用ロボットなら、わざわざネルフに招待状をよこすはずがない。
使用目的は間違いなく兵器、しかも対使徒戦用である可能性が高いとミサトは考えている。
問題は三つ。
1.その能力が実用レベルなのか?
2.バックに戦自・政府が絡んでいるのか?
3.ネルフがその情報をどこまでつかんでいるのか?
1については、エヴァ以上の存在をミサトは知らないし、認めない。万一、実用レベルなら
徴発すればいいと考えている。そのためには
2の戦自・政府の関与がわずらわしい。対使徒戦におけるネルフの権限は、ほぼ絶対的であ
るが、無駄な衝突は避けたい。この非常時に脚の引っ張り合いなど愚の骨頂だ。
3が一番厄介かも知れない。仮にも作戦部長のミサトが、この件に関して知らされている情
報が少なすぎるのだ。保安諜報課が単なるネルフの1セクションではないのは理解できる。
しかし、それにしても機密の壁が厚すぎる…。

ネルフ専用のVTOLに乗り込み、会場となる第28放置区域へと向かう。
同行はリツコのみ。
ミサトはリツコに聞いてみる。
「どう?アレって戦自が絡んでんの?次期特殊戦用汎用兵器の開発、やってるっしょ?」
「いいえ。介入は認められず、よ」
「…ふーん、相変わらず耳が早いのね」
「昨日報告書が届いたの。誰かさんは南の島でバカンス中だから知らせなかっただけよ」
「へーへー、悪ぅござんした。…しかし、よりによってこんな所でやるとはねぇ」
先日の使徒戦があった「お台場火山」は目と鼻の先である。
活動は沈静化したとはいえ、危険地帯には違いない。
「急を要するんでしょうね、彼らは…」
「?」
「タイムスケジュールの遅延は、取り返しのつかない事態なのよ、インサイダー取引には」


281 :10:03/06/09 01:26 ID:???
「本日はご多忙の所、我が日本重化学工業共同体の実演会にお越し頂き誠に有難うござい
ます。思い起こせば少年時代に『鉄腕アトム』を見て以来、いつかあんなロボットを造っ
てみたい、と考えていた夢がこうしてやっと実現致しました。これもひとえに皆様方の…」
ステージではこのプロジェクトの責任者・時田シロウが説明を続けている。
出席者は、政・官・財界の他にマスコミも多数詰め掛けている。ミサト達の扱いは…華や
かな周囲と比べて、あからさまに悪かった。テーブルの上には栓の開けられたビール瓶が
2本のみ。酒好きのミサトでさえ手を出そうとしていない。(飲めたモノじゃない)
「…後程管制室の方にて公試運転を御覧頂きますが、ご質問のある方はこの場にてどうぞ」
「ハイ。ネルフ本部技術局1課、赤木リツコです。いくつかよろしいですか?」
リツコがすかさず挙手する。
「これはご高名な赤木リツコ博士。お越し頂き光栄の至りです。なんなりとどうぞ」
「内燃機関を内臓との事ですが、格闘戦を前提とした陸戦兵器にリアクターを内臓するこ
とは安全性の天から見てもリスクが大きすぎると思われますが?」
「5分も動かない決戦兵器よりは役に立つと思いますよ」
「遠隔操作では緊急対処に問題を残します」
「パイロットに負担をかけ、精神汚染を起こすよのはより人道的と考えます」
「人的制御の問題もあります」


282 :10:03/06/09 01:27 ID:???
「制御不能に陥り、暴走を許す危険極まりない兵器よりは安全だと思いますがね」
時田が『極秘』と書かれた資料を高くかざす。来賓に配られた資料の一部なのだが、一連
のエヴァの暴走時の写真などが収められている。
「…制御できない兵器など全くのナンセンスです。ヒステリーを起こした女性と同じです。
手に負えません…おっと失礼。アレも女性でしたなぁ」
一同から哄笑とも取れる笑いが起こる。
「…その為のパイロットとテクノロジーです」
「まさか『科学』と『人の心』があの化け物を抑えるとでも?…本気ですか?」
「ええ、もちろんですわ」
「人の心などという曖昧な物に頼っているから、ネルフは先の様な暴走を許すのですよ!
その結果はどうです?良かったですね、ネルフが超法規的に守られていて。貴方方はその
責任を取らずに済みますから」
「なんと仰られようとネルフの主力兵器以外、あの敵性体は倒せません」
「ATフィールドですか?それも時間の問題です。いつまでもネルフの時代ではありません」


283 :10:03/06/09 01:27 ID:???
ネルフご一行様・控え室。
腹立ち紛れにロッカーにケリを入れているミサト。
リツコは配布された資料にライターで火をつけて燃やしている。
その表情はいつも以上に冷たく、恐ろしい。
「…あンの俗物共っ!どうせウチの利権にアブれた連中の腹いせでしょッ!ハ・ラ・タ・
ツ・ノ・リ〜ッ!」
古すぎるギャグをトバしているミサト。
「およしなさいよ、大人げない。自分を自慢し褒めて貰いたがっている。…たいした男じ
ゃないわ」
「…でもなんでアイツラがATフィールドまで知ってるのよッ!?」
「極秘情報がダダ漏れね」
「諜報部はナニやってるのかしら」
不意にミサトはリツコに目をやる。
先程の、シロウとのやり取りの時と比べると冷静である。…いや、冷徹、か?。

ガガァァァァーーーーーッ  ゴォオオオオオォン!
巨大ビル格納庫が開き、ロボット=ジェット・アローン(J.A)が姿を現す。
手足は細長く、内燃機関のある胸部だけがぶ厚い。手足はジャバラ状になっており、関節
は存在しない。おそらく、ムチのようにしなった動きをするのだろう。
「これよりJ.Aの起動テストを始めます。なんら金は伴いません。そちらの窓から安心して御覧ください。…ああ、テレビ局の方は良い絵を頼みますよ」
「起動準備よろし」
「起動テスト、開始」
「全動力開放」
シロウの号令に合わせて、管制官達がテキパキと起動手順を進めていく。
「歩行開始」
緊張の一瞬!
J.Aは見事に歩を進めていく。
「へ〜え、ちゃんと歩いている。自慢するだけのことはあるようね…」
ミサトは単純に感心している。
…と、その時、管制室に警告音が鳴り響く。


284 :10:03/06/09 01:28 ID:???
「どうした?」
「変です、リアクター内圧が上昇していきます!」
「1次冷却水の温度も上昇中!」
「バルブ開放、減速材を注入!」
「ダメです、ポンプの出力が上がりません!」
ズン…ズン…とゆっくり近付いてくるJ.A。
「いかん!動力閉鎖!緊急停止!」
「停止信号、発信を確認…受信されず!」
「無線回路も不通です!制御不能!」
「…そんな…バカな…」
「うワァーーーーーっ!」
管制室のモニターに大写しになるJ.A。
逃げ惑う来賓客。
メキッ!メキメキバキッ!ゴキンッ!ドドドグワシャーーーン!
天井を踏み抜き、なおも前進するJ.A。
「ごほっ…ごほっ。造った人に似て礼儀知らずなロボットねぇ…」
粉塵舞う管制室に、新たな警告音が鳴り響く。
「加圧器に異常発生!」
「制御棒、作動しません!このままでは炉心融解の危険もあります!」
「信じられん。J.Aにはあらゆるミスを想定し全てに対処すべくプログラムが組まれている
…この様な事態は、ありえないはずだ…」
「だけど現実に炉心融解の危機が迫ってんのよっ!」
誰に言うでもなく呟くシロウにミサトが詰め寄る。
「こうなっては自然に停止するのを待つしか…」
「自動停止の確率はっ!?」
「0.00002%!…まさに奇蹟です…」
「奇蹟を待つより捨て身の努力よっ!…停止手段を教えなさい…」
「ほ、方法は全て試した」
「いいえ!最後の手段が残っているはずよ…パスワードを教えなさい!」
「全プログラムのデリートは最高機密…私の管轄外だ…口外の権限は無い」
「だったら命令をもらいなさい!今すぐ!」


285 :10:03/06/09 01:29 ID:???
シロウがあちこちに電話をかけているのを冷たく観察しているリツコとミサト。
「タライ回し、か…」
「このプロジェクトの本当の責任者は、やはりこの男ではないようね」
やがてシロウが受話器を置き安堵した表情で伝える。
「今から命令書が届く。作業は正式なものだ」
「そんな!間に合わないわ。爆発してからじゃ遅いのよっ!…時間が無いわ。これからは
私の独断で行動します、悪しからず」
「…『核技術に関する21世紀条約』はご存知かしら?火遊びの代償、高くついてよ?」
リツコの言葉に、ハッとなるシロウ。顔面が見る間に蒼白になっていく。

「あ、日向君?嘉手納と厚木に話つけというからシンジ達をF装備で寄越して、大至急!」
「無駄よ、おやめなさい桂木一尉。…第一、どうやって止めるつもり?」
「人の手で、直接」

「本気ですか?」
「ええ。上手くいけば皆助かります」
ミサトの提案にシロウが呆れている。
ガチャン! パリン
音のする方に振り向くと管制官達が手斧でコンソールを壊している。
「ここからの指揮信号が切れるとハッチが手動で開きますから」
「バックパックから内部に侵入が可能になります」
そう言いながらコードを引きちぎっている。
「…夢と希望の実現」
壊れたモニターを見つめ、ミサトに背を向けているシロウが呟く。
「?」
「プログラム消去のパスワードだ」
「ありがとう」
防護服に身を包んだミサトが走り去る。
後ろを向いたまま、右手を上げて応えるシロウ。


286 :10:03/06/09 01:30 ID:???
嘉手納基地からF-15トムキャットに分乗したシンジ達が到着すると作戦が開始された。
機中で簡単なミーティングが行われ、Bモルモンの服用も終了している。
問題は、アスカがシンジの搭乗を拒否したことだ。…ま、多感な思春期だしぃ。
「アスカはJ.A前方に降下、私が乗り移るまでできるだけ停止させておいて。レイは降下
後、速やかに私を収容してJ.Aの後部から接近、内部侵入を補助。後、アスカのサポート」
無線による、ミサトの作戦伝達が続いている。
「万一の場合に備えて日向君は安全高度まで上昇。アスカ達はATフィールドを展開すれば
安全だから。…シンジ君、シャキッとしなさいよっ!」
「ふ、ふぁい…」
「行くわよッ!」
『了解』
「…目標を肉眼で確認ッ!エヴァ初号機・弐号機、降下準備開始」
ガコンッ!
エヴァ背面のコンセントが除去され、降下準備が始まる。
「ドッキング・アウト!」
『アスカ、行きまーす。…さっきまでスキューバダイビングしてたのに、今度はスカイダ
イビングかぁ…』
風切り音と共にアスカが、次いでレイが大空を舞う。
ドドドオォォオォォォォォン!
地響きを立ててアスカがJ.Aの前方に着地する。
衝撃に耐えつつゆっくりと立ち上がる弐号機。下半身に相当なダメージがあるはずだが?
「さぁて。そこの彼氏、私とチークでも踊らない?」
近付くJ.Aの進路を、両手を開いてふさいでみせる。
意に介さず突き進むJ.A。弐号機をぐいぐいと押し捲る。
「ちィィィッ!」
そう叫ぶと両腕をJ.Aの脇の下に差し込み、背中でグリップする。
次の瞬間、弐号機は大きく反り返り、J.Aを地面に叩きつけていた。
フロントスープレックスである。


287 :10:03/06/09 01:31 ID:???
「どう?ヨーロッパスタイルのお味は?…お次は…」
そう言うとJ.Aをひっくり返し、うつ伏せにすると両膝の後ろを踏んづけて脚を絡める。
そしてJ.Aの両腕を摑み、ぐいッ!と自ら後方に倒れこむ。
このまま持ち上げれば、ロメロスペシャル…吊り天井固めなのだが、ミサトの作業を考え
ると、この姿勢の方が良いだろう。
「J.Aの捕獲完了。ファースト、急いで!」
ミサトを掌中に乗せた初号機がゆっくりと近付き、背中のバックパックのバーをつかむ。
無事、J.Aに取り付いたミサトは、シンジ達にVサインを示しハッチの中に消えた。
初号機は、作戦通りアスカのアシストのため、J.Aの前方から上体を押さえ込む。。
バンッ!プシューッ!
突然J.Aの左肩口から蒸気が噴き出す!
すばやく掌で押さえる初号機。
「ヒイィイィィイァッ!ミミミミサトサン、イッイイイイソイデイソイデ
コワッココココワイイィィィィィッ!
…アヒャヒャヒョオオオオ…イヒッ」
また、シンジが壊れかけている。


288 :10:03/06/09 01:32 ID:???
J.A内部は、熱と蒸気と赤い非常灯の世界だった。
あっと言う間に蒸気で曇るミサトのバイザー。
身体から立ち上る熱気。
「…すごい熱、こりゃマズイわね…」
非常用手動制御室というプレートが見えた。
プラスチックカバーに覆われた非常ドアのスイッチが見える。
右拳でそれを叩き割るとドアが開く。
磁気カードを取り出し、スリットを走らせるとカバーが開きキーボードが現れた。
同時にコンソールに光が点りデータが流れていく。
やがて『PASSWORD』の文字が点滅する。
指の曲げ伸ばしを数回繰り返してからミサトは、教えられたパスワードを入力する。
『夢と希望の実現』そしてリターンキーを叩く。
が、しかし!
『ERROR』と表示された…。
「エラー?ナニこれ?」


289 :10:03/06/09 01:33 ID:???
もう一度入力を試みるミサト。しかし、結果は同じだった。
「…間違いない。プログラムが変えてあるんだわ」
呆然とするミサト。
ガクン!バン!
衝撃と破裂音が響く中、ミサトは立ち上がり室内に突出している制御棒に歩み寄る。
「…こうなったら、一か八か…」
そう言うと制御棒に身体ごとぶつかり、そのまま押し続ける。
「ふンヌッ!くッ、くゥーーーッ!」
ぴクリともしない制御棒。だがミサトは押し続ける。
「動けッ!こんのオォオッ!」

数人になった管制室。
「り、臨海まで後0.1!」
「だめです!爆発します!!」
「―――だめ、か」

その時、J.Aのモニターに異変が起こった。
『ERROR』の表示がパスワード入力画面に戻り、勝手にパスワードを入力している。
『夢と希望と現実と』
そして起動画面に変わり、自律運転モードに切り替わる。
ライトがグリーンに変わった室内でへたり込みながら、ミサトはそのパスワードを見た。
「…厳しい現実だわね」
オープンになった無線から、シンジが、アスカが、そしてシロウが次々と声をかけてくる。
それらにナマ返事を返しながらミサトは考える。
「…でもすごいや!僕、見直しちゃいました。本当に奇蹟は起きたんですね!」
「奇蹟は用意されていた、誰かに」
そう呟くとミサトはゆっくりと立ち上がり、のろのろとハッチへと歩き始めた。
対使徒戦という戦いだけではなく、権力争いや経済戦争にまで巻き込まれている我が身を
嘆いているヒマは無さそうだった。この非常時にさえ人間の業は絶えないのだ…。


290 :10:03/06/09 01:35 ID:???
ネルフ本部・執務室。
「初・弐号機の回収は無事終了しました。汚染の心配は有りません。葛城一尉の行動以外
は全てシナリオ通りです。J.A計画に関わった者達は近日中に排斥されます。そのための
資料は、諜報一課が然るべき関係省庁に送付済みです。日本政府内外の反ネルフ勢力、
しばらくはおとなしくなると思われます」
碇司令への報告をしながらリツコは、ミサトがどこまで気付いたかが気がかりであった。

次回予想。
修学旅行から帰っても、相変わらず元気が無い鈴原。ある日、屋上で仲良く話す
鈴原と綾波さんを見ちゃった。おまけに鈴原と相田君が口ゲンカしてる所まで
聞いちゃった私、どうしたら良いの?ねぇ、アスカ!?
次回「LOVE PASSION」
私、負けない!絶対、負けない!!

>>261
随分と遅くなりましたが、親御さんのケガは良くなったでしょうか?
>>262
ども。ありがとうございます。
>>263
本当の『山崎努氏』について先日やっと知りました。

さて、やっと…です。
今月こそもう一本仕上げねば。他の予定が狂いまくる。
では!


291 :10:03/06/09 02:31 ID:???
>>290
>本当の『山崎努氏』
誰だよそりゃあ。
山崎渉だろう…。疲れているなぁ、仕事でもするか。
反省しているので、ツッコミは無しでおながいします。

292 :261:03/06/10 08:23 ID:???
>>290
入院する前より元気になって帰ってきますた

293 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:03/06/16 00:05 ID:2VfrQXD3
>>292
無事退院なさって一安心です。お大事に。

さて。原稿も出来ていないのに現れたのには理由があります。
実は書き込む寸前まで迷った文章があったのですが、それを手直しせずに書き込んだ
様な気がしていたのです。あまりに初歩的な間違いなので確認するのが怖くて怖くて。
…しっかりミスってました。
>>286
「F-15トムキャット」は「F-14トムキャット」です。
ただF-15Eストライクイーグルという選択も捨てがたく、いっそSR-71を使おうか?などと
考えていたら、これです。お恥ずかしい限りです。失礼しました。

294 :10:03/06/16 00:09 ID:???
しかもageてるし…。恥の上塗りとはこのことだ。
回線切って逝ってきます。




295 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:03/06/20 20:47 ID:???
10さんいつも楽しく読ませていただいてます。

ところで三号機の回はどうなるんですか?
まさかトウジにかまほ(ry

296 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:03/07/08 20:19 ID:???
念の為、保守。

297 :山崎 渉:03/07/15 11:45 ID:???

 __∧_∧_
 |(  ^^ )| <寝るぽ(^^)
 |\⌒⌒⌒\
 \ |⌒⌒⌒~|         山崎渉
   ~ ̄ ̄ ̄ ̄

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